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1 妹のフローレンスは可愛いものよ
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「聞いてくれ、エリーゼ! 実はな、我がポピンズ候爵家は借金がたくさんある!」
お父様は私をサロンに呼びつけなぜか胸を張った。
「はい、存じ上げておりますわ」
お母様と妹が次々と散財するのでいつもポピンズ候爵家は赤字だった。
「それでだ、エリーゼにはリッチ候爵家の嫡男に嫁いでもらいたい!」
「あの全く社交界に顔を出さないフェルゼン様ですね? なにやらよからぬ噂がありますけれど、怪物だとか・・・・・・面白そうですわねぇ~~」
少しも嫌がらない私に両親は目を剥いて驚きの顔を向けてきた。
「いいのか? 恐ろしく醜いかもしれないのだぞ?」
とお父様は念を押し、
「途中で嫌だと帰ってきてもこの屋敷には入れませんよ!」
と脅すように私に言い放つお母様。
「あら、大丈夫ですわぁ。醜いなんて嘘かもしれませんしね。だってよくおとぎ話でも醜い振りをして、実はとても美しかった令嬢や王子様のお話がたくさんありますものね!」
にこにこと答える私に妹のフローレンスが顔色を変えた。
「お姉様! ずるい! だったらそのフェルゼン様と婚約するのは私です! だって、リッチ家は大金持ちですもの! お父様、私をフェルゼン様の婚約者にしてください。お姉様、いいでしょう?」
フローレンスは蜂蜜色のふわふわ毛を揺らせながら叫んだ。
「もちろん、いいですわよ。面白そうだと思ったけれどフローレンスにフェルゼン様を譲るわ」
私は軽く微笑んで庭園から漂う薔薇の香りに酔いしれた。
「今日もなんて綺麗に薔薇が咲いているのかしらぁ。香りも素敵だし良いお天気だし、最高にいい日ねぇ」
私がのんびりと伸びをするとフローレンスと両親は、びっくりしたような顔でこちらを見てきた。
「そんな当たり前のことで幸せを感じるなんてお姉様って本当に不幸な方ねぇ。バカみたいですわ」
「そうよ、薔薇はいい香りがするのは当然ですし、天気が良いのもこの時期は当たり前! 雨なんてめったに降らないじゃないの?」
お母様はフンと鼻を鳴らした。
「まぁ、こんなに気持ちの良い日に感謝をしないなんてもったいない。人生の半分は損をしていましてよ?」
私はコロコロと笑いながらその場を後にした。
自分がこの世界ではない場所で生きていたという記憶は幼い頃に蘇ったものだ。きっかけはフローレンスに思いっきり突き飛ばされて噴水の角に頭をぶつけて気絶したこと。
大怪我をしたけれどこれもフローレンスには感謝している。だって、それがなければ思い出さなかったから。
そう、私は久我陽葵。日本という国で妹弟が多い家庭で育った長女。母親は末っ子を産んですぐに他界しており、私は妹弟の面倒を見ながら家事をこなし高校に通っていた苦労人だったのよ。父は仕事で大抵いなかったからその大変さはすさまじかった。
それを思えばこの異世界の優雅な貴族の暮らしは天国よ。妹のフローレンスはお人形さんみたいに可愛いし、ねだり魔なのは前の世界での末っ子にそっくりで憎めない。
それに私の前世は冴えない女子高校生だったけれど、今は金髪碧眼の美人で身体もボンキュボンなのが嬉しい。もう、生きているだけで幸せ感じちゃう。
お父様は私をサロンに呼びつけなぜか胸を張った。
「はい、存じ上げておりますわ」
お母様と妹が次々と散財するのでいつもポピンズ候爵家は赤字だった。
「それでだ、エリーゼにはリッチ候爵家の嫡男に嫁いでもらいたい!」
「あの全く社交界に顔を出さないフェルゼン様ですね? なにやらよからぬ噂がありますけれど、怪物だとか・・・・・・面白そうですわねぇ~~」
少しも嫌がらない私に両親は目を剥いて驚きの顔を向けてきた。
「いいのか? 恐ろしく醜いかもしれないのだぞ?」
とお父様は念を押し、
「途中で嫌だと帰ってきてもこの屋敷には入れませんよ!」
と脅すように私に言い放つお母様。
「あら、大丈夫ですわぁ。醜いなんて嘘かもしれませんしね。だってよくおとぎ話でも醜い振りをして、実はとても美しかった令嬢や王子様のお話がたくさんありますものね!」
にこにこと答える私に妹のフローレンスが顔色を変えた。
「お姉様! ずるい! だったらそのフェルゼン様と婚約するのは私です! だって、リッチ家は大金持ちですもの! お父様、私をフェルゼン様の婚約者にしてください。お姉様、いいでしょう?」
フローレンスは蜂蜜色のふわふわ毛を揺らせながら叫んだ。
「もちろん、いいですわよ。面白そうだと思ったけれどフローレンスにフェルゼン様を譲るわ」
私は軽く微笑んで庭園から漂う薔薇の香りに酔いしれた。
「今日もなんて綺麗に薔薇が咲いているのかしらぁ。香りも素敵だし良いお天気だし、最高にいい日ねぇ」
私がのんびりと伸びをするとフローレンスと両親は、びっくりしたような顔でこちらを見てきた。
「そんな当たり前のことで幸せを感じるなんてお姉様って本当に不幸な方ねぇ。バカみたいですわ」
「そうよ、薔薇はいい香りがするのは当然ですし、天気が良いのもこの時期は当たり前! 雨なんてめったに降らないじゃないの?」
お母様はフンと鼻を鳴らした。
「まぁ、こんなに気持ちの良い日に感謝をしないなんてもったいない。人生の半分は損をしていましてよ?」
私はコロコロと笑いながらその場を後にした。
自分がこの世界ではない場所で生きていたという記憶は幼い頃に蘇ったものだ。きっかけはフローレンスに思いっきり突き飛ばされて噴水の角に頭をぶつけて気絶したこと。
大怪我をしたけれどこれもフローレンスには感謝している。だって、それがなければ思い出さなかったから。
そう、私は久我陽葵。日本という国で妹弟が多い家庭で育った長女。母親は末っ子を産んですぐに他界しており、私は妹弟の面倒を見ながら家事をこなし高校に通っていた苦労人だったのよ。父は仕事で大抵いなかったからその大変さはすさまじかった。
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