(完結)嘘つき聖女と呼ばれて

青空一夏

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2 神殿のなかでの出来事ー2

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「おぉーー! やはりアスペン様が聖女様かぁーー。やっぱりそうだと思っていたよぉーー」

「うん、うん。そうよねぇーー。可愛らしい方を女神様はお選びになったのねぇーー」

 口ぐちにアスペンは褒めたたえられて、本人は女王様のように鷹揚に手を振っています。

「そこのあなた! 足が動かないのですね? こちらにいらっしゃい! 私が治してさしあげましょう!」

 アスペンは車椅子の男性に労わるようなに優しく声をかけました。

 その男性が車椅子のままアスペンのもとに移動しますとアスペンが持っていた水晶の玉が、ひときわまばゆく光りました。

「さぁ、歩いてごらんなさい! 貴方はもうどこも痛くないはずです」

「え?……うわぁーー!こんなことってあるのかい! 歩けるよ! 歩けるぅーー♪ すごいぞ! 全然、痛くないぞ」

 その男性はいきなり歩き出し、跳ねたり跳んだりしてみせます。

「さぁ、そこの目の見えないおばぁさんもこちらにいらっしゃい!」

 アスペンはまた自ら呼び掛けてそのおばぁさんの目に手をかざすのです。

 するとやはり水晶がまばゆく光って……おばぁさんは喜びの声をあげたのでした。

「見えるよぉーー!! あぁ、神様。これは奇跡だわ! やはり、アスペン様は聖女様です!」

「そうさ。アスペンこそは聖女様だ。だが、もう一人嘘つき聖女がここにいる。さぁ、力を証明してもらおうか?」

 大きな歓声があがり人々が大興奮しているなか、アーサー国王殿下が私におっしゃいました。

 一人の若者が腕に包帯をしており、骨が折れたから直してくれと言ってきました。私はひとつ、うなづくとその男性の手を握りながら目を閉じました。私のなかからエネルギーが確かにその若者にいったはずなのに、その若者は治ったどころか腕を抱えて痛がったのです。

「痛いよ、痛いよ! 治るどころか、痛さが倍増してるじゃねーーか! こいつは嘘つきだ! 噓つき聖女だ!」

 私を指さして罵倒し、すぐさまアスペンのもとに行きその足元にすがりつきます。

「俺を治してくれよぉーー。聖女様ぁーー」

 すがられたアスペンはその男の手をそっと包み天を仰ぎ、女神様に呼びかけました。

「この男の腕を治したまえ!」

 その言葉とともに男は包帯をとり、ブンブンと腕を振り回しました。

「見ろよーー! 治ったぜ! さっきまでの痛みが嘘のようだ! こっちが本物の聖女だぁーー!」

 私には罵倒する声が投げつけられて、人々はアスペンを尊敬の眼差しで見つめるのでした。

「こんな嘘つきは追い出そう! この国から出ていけ!」

 私は『嘘つき聖女』と呼ばれてカムリン国を追われます。

「殺されなかっただけマシと思えよ! 本来なら聖女の名を騙ったおまえなど死刑だが、慈悲深いアスペンが命は助けてほしいと言うから殺しはしない。しかしアスペンを殴り、蹴ったお前は同じことをされる必要があるだろう?
こいつを殴って蹴りあげろ! 死なない程度に」

 私は町の人々から散々殴られ蹴られ、多分このまま死ぬのでしょうか?

 逃げようとした私をつかんでさらに殴ったのはさきほど私が癒しを与えた若者でした。

「へへへ! 悪く思うなよ! 金のためなんだ!」

 ぼろぼろになった私を王家の兵士達が担ぎあげ、森の前に捨てました。

 森には狼も熊もいますから、こんな場合に置き去りにする場所の定番ですよね。

 私は薄れゆく意識でさきほど若者が言った言葉を考えます。金のため……そう言った若者は金をもらったということでしょうか?

 私の前には熊がおり横から狼が群れをなしてこちらにやってくるところでした。

 彼らの夕食はきっとこの私でしょうね。
 
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