3 / 5
2 神殿のなかでの出来事ー2
しおりを挟む
「おぉーー! やはりアスペン様が聖女様かぁーー。やっぱりそうだと思っていたよぉーー」
「うん、うん。そうよねぇーー。可愛らしい方を女神様はお選びになったのねぇーー」
口ぐちにアスペンは褒めたたえられて、本人は女王様のように鷹揚に手を振っています。
「そこのあなた! 足が動かないのですね? こちらにいらっしゃい! 私が治してさしあげましょう!」
アスペンは車椅子の男性に労わるようなに優しく声をかけました。
その男性が車椅子のままアスペンのもとに移動しますとアスペンが持っていた水晶の玉が、ひときわまばゆく光りました。
「さぁ、歩いてごらんなさい! 貴方はもうどこも痛くないはずです」
「え?……うわぁーー!こんなことってあるのかい! 歩けるよ! 歩けるぅーー♪ すごいぞ! 全然、痛くないぞ」
その男性はいきなり歩き出し、跳ねたり跳んだりしてみせます。
「さぁ、そこの目の見えないおばぁさんもこちらにいらっしゃい!」
アスペンはまた自ら呼び掛けてそのおばぁさんの目に手をかざすのです。
するとやはり水晶がまばゆく光って……おばぁさんは喜びの声をあげたのでした。
「見えるよぉーー!! あぁ、神様。これは奇跡だわ! やはり、アスペン様は聖女様です!」
「そうさ。アスペンこそは聖女様だ。だが、もう一人嘘つき聖女がここにいる。さぁ、力を証明してもらおうか?」
大きな歓声があがり人々が大興奮しているなか、アーサー国王殿下が私におっしゃいました。
一人の若者が腕に包帯をしており、骨が折れたから直してくれと言ってきました。私はひとつ、うなづくとその男性の手を握りながら目を閉じました。私のなかからエネルギーが確かにその若者にいったはずなのに、その若者は治ったどころか腕を抱えて痛がったのです。
「痛いよ、痛いよ! 治るどころか、痛さが倍増してるじゃねーーか! こいつは嘘つきだ! 噓つき聖女だ!」
私を指さして罵倒し、すぐさまアスペンのもとに行きその足元にすがりつきます。
「俺を治してくれよぉーー。聖女様ぁーー」
すがられたアスペンはその男の手をそっと包み天を仰ぎ、女神様に呼びかけました。
「この男の腕を治したまえ!」
その言葉とともに男は包帯をとり、ブンブンと腕を振り回しました。
「見ろよーー! 治ったぜ! さっきまでの痛みが嘘のようだ! こっちが本物の聖女だぁーー!」
私には罵倒する声が投げつけられて、人々はアスペンを尊敬の眼差しで見つめるのでした。
「こんな嘘つきは追い出そう! この国から出ていけ!」
私は『嘘つき聖女』と呼ばれてカムリン国を追われます。
「殺されなかっただけマシと思えよ! 本来なら聖女の名を騙ったおまえなど死刑だが、慈悲深いアスペンが命は助けてほしいと言うから殺しはしない。しかしアスペンを殴り、蹴ったお前は同じことをされる必要があるだろう?
こいつを殴って蹴りあげろ! 死なない程度に」
私は町の人々から散々殴られ蹴られ、多分このまま死ぬのでしょうか?
逃げようとした私をつかんでさらに殴ったのはさきほど私が癒しを与えた若者でした。
「へへへ! 悪く思うなよ! 金のためなんだ!」
ぼろぼろになった私を王家の兵士達が担ぎあげ、森の前に捨てました。
森には狼も熊もいますから、こんな場合に置き去りにする場所の定番ですよね。
私は薄れゆく意識でさきほど若者が言った言葉を考えます。金のため……そう言った若者は金をもらったということでしょうか?
私の前には熊がおり横から狼が群れをなしてこちらにやってくるところでした。
彼らの夕食はきっとこの私でしょうね。
「うん、うん。そうよねぇーー。可愛らしい方を女神様はお選びになったのねぇーー」
口ぐちにアスペンは褒めたたえられて、本人は女王様のように鷹揚に手を振っています。
「そこのあなた! 足が動かないのですね? こちらにいらっしゃい! 私が治してさしあげましょう!」
アスペンは車椅子の男性に労わるようなに優しく声をかけました。
その男性が車椅子のままアスペンのもとに移動しますとアスペンが持っていた水晶の玉が、ひときわまばゆく光りました。
「さぁ、歩いてごらんなさい! 貴方はもうどこも痛くないはずです」
「え?……うわぁーー!こんなことってあるのかい! 歩けるよ! 歩けるぅーー♪ すごいぞ! 全然、痛くないぞ」
その男性はいきなり歩き出し、跳ねたり跳んだりしてみせます。
「さぁ、そこの目の見えないおばぁさんもこちらにいらっしゃい!」
アスペンはまた自ら呼び掛けてそのおばぁさんの目に手をかざすのです。
するとやはり水晶がまばゆく光って……おばぁさんは喜びの声をあげたのでした。
「見えるよぉーー!! あぁ、神様。これは奇跡だわ! やはり、アスペン様は聖女様です!」
「そうさ。アスペンこそは聖女様だ。だが、もう一人嘘つき聖女がここにいる。さぁ、力を証明してもらおうか?」
大きな歓声があがり人々が大興奮しているなか、アーサー国王殿下が私におっしゃいました。
一人の若者が腕に包帯をしており、骨が折れたから直してくれと言ってきました。私はひとつ、うなづくとその男性の手を握りながら目を閉じました。私のなかからエネルギーが確かにその若者にいったはずなのに、その若者は治ったどころか腕を抱えて痛がったのです。
「痛いよ、痛いよ! 治るどころか、痛さが倍増してるじゃねーーか! こいつは嘘つきだ! 噓つき聖女だ!」
私を指さして罵倒し、すぐさまアスペンのもとに行きその足元にすがりつきます。
「俺を治してくれよぉーー。聖女様ぁーー」
すがられたアスペンはその男の手をそっと包み天を仰ぎ、女神様に呼びかけました。
「この男の腕を治したまえ!」
その言葉とともに男は包帯をとり、ブンブンと腕を振り回しました。
「見ろよーー! 治ったぜ! さっきまでの痛みが嘘のようだ! こっちが本物の聖女だぁーー!」
私には罵倒する声が投げつけられて、人々はアスペンを尊敬の眼差しで見つめるのでした。
「こんな嘘つきは追い出そう! この国から出ていけ!」
私は『嘘つき聖女』と呼ばれてカムリン国を追われます。
「殺されなかっただけマシと思えよ! 本来なら聖女の名を騙ったおまえなど死刑だが、慈悲深いアスペンが命は助けてほしいと言うから殺しはしない。しかしアスペンを殴り、蹴ったお前は同じことをされる必要があるだろう?
こいつを殴って蹴りあげろ! 死なない程度に」
私は町の人々から散々殴られ蹴られ、多分このまま死ぬのでしょうか?
逃げようとした私をつかんでさらに殴ったのはさきほど私が癒しを与えた若者でした。
「へへへ! 悪く思うなよ! 金のためなんだ!」
ぼろぼろになった私を王家の兵士達が担ぎあげ、森の前に捨てました。
森には狼も熊もいますから、こんな場合に置き去りにする場所の定番ですよね。
私は薄れゆく意識でさきほど若者が言った言葉を考えます。金のため……そう言った若者は金をもらったということでしょうか?
私の前には熊がおり横から狼が群れをなしてこちらにやってくるところでした。
彼らの夕食はきっとこの私でしょうね。
202
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女ディアの処刑
三月
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
婚約破棄の場に相手がいなかった件について
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。
断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。
カクヨムにも公開しています。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
姉から全て奪う妹
明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」
可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。
だから私はこう言うのよ。
「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」
*カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
押し付けられた仕事は致しません。
章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。
書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。
『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる