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3 本物の聖女様を追い出したなら(アスペン視点)
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「うふふ、とてもうまくいったわね? 聖女なんてこの世にはもう必要ないわよね?」
「くくくっ。そうだな。もう魔物も絶滅しているだろう?」
水晶の玉には仕掛けがあって丸い球でも目立たないところに小さな突起があり、そこを押すと光るようになっていた。
「この仕組みはどうなっているんですか? すごいわぁーー!」
「私たち王族は仕組みを知る必要はないから、専門家が作ったものを使うだけさ。アスペンだって仕組みを知らないで使っているだろう?」
アーサー国王陛下のおっしゃる通りよね。確かにこの玉が光ることが重要で、なぜ光るかなんてどうでもいいわ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私がアーサー国王陛下と婚約したその日に、あのアータムに腕を治してくれるように頼んだ若者が、いきなり神殿にやってきた。
「腕が動かねーーんだよぉ。どーーしてだかわかんねぇ! なんとかしてくれよ」
泣きわめいて私にすがってくるが、ドレスが汚れるような汚い手でさわらないでよ、と思う。
「この汚い男はどうせ金の無心に来たのに決まっているわ。つまみだしてよ!」
私は神殿を守る兵士達に、ドレスが汚れていないかどうかを確かめながら命令した。このドレスはお気に入りだから下々の男なんかに触れられたくないわ。平民なんて死のうと生きようと虫けらのような命なのだから、どうでもいいのよ。
「おい、お前とアーサー国王陛下の言うことをきいて、お芝居をしてやったのに俺を見捨てるのか?」
「うるさいわねぇーー。あの無礼者は聖女の私に、生意気な口をきいたのだから黙らせてよ!」
ただの使い捨ての駒のくせに文句を言うなんて生意気なのよ? 黙って聖女であるこの私に、従っていればいいのよ。
ところが、やって来たのはその男だけじゃなかった。
あの神殿で車椅子に乗っていた男は、両足が本当に動かなくなったと文句を言いに来たし、目の見えないふりをしていたおばぁさんは、ほんとうに見えなくなったと杖をもって現れたのだ。
そんなばかなことってないわよね? みんな、お金をもっと欲しいだけなのだと思う。
*:゚+。.☆.
しかし、異常事態はそんなものでは済まなかった。雨も降って日照時間も適度な天候が続いたのにもかかわらず、作物がどんどん枯れていく。木・野菜・果物・花も全てが枯れ出し、カムリン王国に緑がなくなっていく。
「聖女様! なんとかしてください。あなたの力があれば、このようなことがおこるはずがない!」
「どうなってるんだ! 聖女め! ちゃんと仕事をしやがれ!」
民衆が神殿と王宮に毎日のように押し寄せて私を散々悪く言うけれど、これは天災だから私がどうこうできるわけがないじゃない!
「聖女にだってできることと、できないことがあるのです! なんでもできるわけがないでしょう?」
「じゃぁ、俺のこの脚を治してくれよ? 前にやった方法でさ。あんたはあれ以来、聖女の力を使ってないよな。今、すぐ治せよ。」
「そうだ、そうだ! あたいの手のやけども治しておくれよ! 聖女ってその為にいるんだろ?」
「はぁ? こちらにも準備っていうものがあるんですから・・・・・・いきなりは無理よ」
私はその場しのぎの嘘で誤魔化そうとしたが民衆は納得しない。
「うるさい平民達だな! 全員、棒で滅多打ちにして外に放り出せ! これ以降、神殿の門は閉めてしまえ」
王宮の手前に神殿があり、いつも神殿の門は民衆の為に開け放たれていたのだ。私がいる神殿に入り浸っていたアーサー国王陛下が命じたその時!
緑の髪と瞳のアータムにそっくりの男性が恐ろしい怒りのオーラを放ちながら、やってくるのが見えた。
腕には血まみれのアータムの亡骸を抱き抱えていたのだった。
「くくくっ。そうだな。もう魔物も絶滅しているだろう?」
水晶の玉には仕掛けがあって丸い球でも目立たないところに小さな突起があり、そこを押すと光るようになっていた。
「この仕組みはどうなっているんですか? すごいわぁーー!」
「私たち王族は仕組みを知る必要はないから、専門家が作ったものを使うだけさ。アスペンだって仕組みを知らないで使っているだろう?」
アーサー国王陛下のおっしゃる通りよね。確かにこの玉が光ることが重要で、なぜ光るかなんてどうでもいいわ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私がアーサー国王陛下と婚約したその日に、あのアータムに腕を治してくれるように頼んだ若者が、いきなり神殿にやってきた。
「腕が動かねーーんだよぉ。どーーしてだかわかんねぇ! なんとかしてくれよ」
泣きわめいて私にすがってくるが、ドレスが汚れるような汚い手でさわらないでよ、と思う。
「この汚い男はどうせ金の無心に来たのに決まっているわ。つまみだしてよ!」
私は神殿を守る兵士達に、ドレスが汚れていないかどうかを確かめながら命令した。このドレスはお気に入りだから下々の男なんかに触れられたくないわ。平民なんて死のうと生きようと虫けらのような命なのだから、どうでもいいのよ。
「おい、お前とアーサー国王陛下の言うことをきいて、お芝居をしてやったのに俺を見捨てるのか?」
「うるさいわねぇーー。あの無礼者は聖女の私に、生意気な口をきいたのだから黙らせてよ!」
ただの使い捨ての駒のくせに文句を言うなんて生意気なのよ? 黙って聖女であるこの私に、従っていればいいのよ。
ところが、やって来たのはその男だけじゃなかった。
あの神殿で車椅子に乗っていた男は、両足が本当に動かなくなったと文句を言いに来たし、目の見えないふりをしていたおばぁさんは、ほんとうに見えなくなったと杖をもって現れたのだ。
そんなばかなことってないわよね? みんな、お金をもっと欲しいだけなのだと思う。
*:゚+。.☆.
しかし、異常事態はそんなものでは済まなかった。雨も降って日照時間も適度な天候が続いたのにもかかわらず、作物がどんどん枯れていく。木・野菜・果物・花も全てが枯れ出し、カムリン王国に緑がなくなっていく。
「聖女様! なんとかしてください。あなたの力があれば、このようなことがおこるはずがない!」
「どうなってるんだ! 聖女め! ちゃんと仕事をしやがれ!」
民衆が神殿と王宮に毎日のように押し寄せて私を散々悪く言うけれど、これは天災だから私がどうこうできるわけがないじゃない!
「聖女にだってできることと、できないことがあるのです! なんでもできるわけがないでしょう?」
「じゃぁ、俺のこの脚を治してくれよ? 前にやった方法でさ。あんたはあれ以来、聖女の力を使ってないよな。今、すぐ治せよ。」
「そうだ、そうだ! あたいの手のやけども治しておくれよ! 聖女ってその為にいるんだろ?」
「はぁ? こちらにも準備っていうものがあるんですから・・・・・・いきなりは無理よ」
私はその場しのぎの嘘で誤魔化そうとしたが民衆は納得しない。
「うるさい平民達だな! 全員、棒で滅多打ちにして外に放り出せ! これ以降、神殿の門は閉めてしまえ」
王宮の手前に神殿があり、いつも神殿の門は民衆の為に開け放たれていたのだ。私がいる神殿に入り浸っていたアーサー国王陛下が命じたその時!
緑の髪と瞳のアータムにそっくりの男性が恐ろしい怒りのオーラを放ちながら、やってくるのが見えた。
腕には血まみれのアータムの亡骸を抱き抱えていたのだった。
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