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4 この国の滅びのはじまり(アーサー国王視点)・そしてその後(三人称視点)
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「お前達は報いをうける。この娘を殺したのはお前達だろう?」
その緑の髪と瞳の男性は怒気をはらんだ口調で尋ねてきた。
「少しだけ殴って森に棄てただけだ。おおかた、オオカミや熊にやられたのだろう? それより見慣れない顔だな?どこの民だ?」
私はその背の高い男に尋ねたがかえってきた答えに思わず笑ってしまった。
「お前が私の民であろう? だが私はお前の国とこの娘に酷い仕打ちをした民を追放する。これ以降、私の恵みをお前達がうけることはない」
「あっははは! 頭をどこかにぶつけたようだな? 衛兵! こいつを殴って正気に戻せ!」
私はこの尊大な態度の男を捕らえさせたが、縄で縛り上げているうちに小枝になってしまった。さきほどまであったアータムの亡骸も小枝に変わっていた。
「まさか・・・あいつは木の精霊王だったのか? だから植物が枯れ始めたのか・・・・・・なんてことだ! 早くこの国に緑を戻せ! 緑がなければ人間は死んでしまう。木も枯れて花も実も育たない。緑を奪うなんて酷すぎるだろう・・・・・・緑を戻せ!」
私がガクンと膝を地面に落としうな垂れていると、その膝から根が生えて身体はどんどん木に変化していく。
「そんなに緑がほしいなら、お前が木になればよい。だが、人間の浅ましい欲の心はそのままに残してやろう」
くっそ! なんの冗談だよ! こんなのは嘘だ!・・・・・・ここで木になるなんておかしいだろう?
アスペンも足から根が生えだしており、身もだえしながら叫んでいた。
「私は聖女なのよ! 間違いなく聖女なのよ! なんでこんなことが起こるの? くっそ! ちきしょーー! 根が生えたら綺麗なドレスも宝石もつけられないだろーーがっ! なにが木の精霊王だ! 木なら燃えるだろう? 森に火をつけて全部燃やせばいいんだ!」
アスペンは、まだ自由になる手で火をおこそうとして誤って自分の足下に落としてしまい、みるみるその火がアスペンを焼いていく。
「あたしは、アータムが憎らしかっただけなんだ! あいつは、なんでも上手にできて皆から好かれていたから、あたしがこっそりみんなに嘘をふきこんだ。お母様にもお父様にも皆に嘘をついたけれど、簡単に信じた人間も悪いよね? あたしのせいじゃないだろ! そうさ、そこのバカ王が一番悪い! 王様のくせにあたしの色香にそそのかされて本物の聖女を迫害したんだ! この国王こそがクズでバカで一番悪い!」
狂って笑いながらも焼かれていくその身体は、ただの木になり炭になる。兵士達もどんどん木になっていき・・・・・・王宮じゅうが木に覆われて、この国は緑豊かな素晴らしい国になった。けれど・・・・・・人間の姿はどこにも見当たらないのだった。
☆彡★彡☆彡
その後(三人称視点)
数年後にここはキャンプ場として有名になり、多くの観光客が訪れた。
(その唐揚げ、うまそうだな)
「ねぇ、今この唐揚げが食べたいって言った? いいよ、食べても。こっちのオムレツも食べなよ」
「え? なにも言ってないよ。 でも、もらうよ。ありがとう」
(かっこいい男だねぇ。ついでにあたしも、もらってほしいよぉ)
「えっと。僕でよければ、結婚しないか?」
「・・・・・・本当に? ありがとう! その言葉をずっと待っていたわ」
ここには優しい妖精がいて恋人達の仲を応援しているという噂まで広がり、ますます仲睦まじいカップルが訪れるのだった。
夜になると木々はひそひそとおしゃべりをしだす。
「いくらなんでもこれは拷問さ。木にはなったけれど心は人間のままだ。おまけにどういうわけか話せる」
「移動はできないし、手足も木だから風に揺れるだけだが、欲は消えない。食欲・性欲・物欲が思いっきり残ったままで木になるって・・・・・・木の精霊王様はあと何年したら許してくれるんだ?」
「ふっ。しかも最近じゃぁ、カップルだらけだしね。あんたが唐揚げ食べたいなんて言うからさ!」
「お前こそ、『あたしも、もらってほしいよぉ』なんて冗談言うからだ。お前みたいな婆さんを誰がもらうかい!」
「なんだってぇーー! あ、鳥が糞をひっかけていきやがったわ! もぉーー、頭に巣をいっぱい作られてこっちはいい迷惑だよ」
ざわざわ。クスクス。森がおしゃべりをしだすと、カップル達はとても嬉しそうにささやきあった。
「ねぇ、森の妖精が私達のために大合奏しているわね。きっとお祝いのお歌をうたっているのね?」
☆彡★彡☆彡
一方、あの森で置き去りにされたアータムは熊にそっと抱きかかえられ、オオカミ達に守られながら大きな木の下まで運ばれた。
大きな木はたちまち緑の髪と瞳の精霊王となり、アータムを優しく抱きかかえるとその傷を精霊の力で癒やすのだった。
「私の愛した人間の女性の子供だが、今日から精霊王の王女として迎える」
アータムはその言葉と同時に目覚め、その髪と瞳は淡い緑に変わっていた。
「この方が聖女様で精霊王様の娘なのですね? 聖女様ならば人間界に戻さなければ魔物が蘇って人間界を闇で染めるでしょう」
精霊王の使い魔のオオカミが尋ねた言葉に精霊王は答えた。
「もう人間界に聖女様は、いらないだろう? 自分の身は己で守ることをさせればいい」
完
その緑の髪と瞳の男性は怒気をはらんだ口調で尋ねてきた。
「少しだけ殴って森に棄てただけだ。おおかた、オオカミや熊にやられたのだろう? それより見慣れない顔だな?どこの民だ?」
私はその背の高い男に尋ねたがかえってきた答えに思わず笑ってしまった。
「お前が私の民であろう? だが私はお前の国とこの娘に酷い仕打ちをした民を追放する。これ以降、私の恵みをお前達がうけることはない」
「あっははは! 頭をどこかにぶつけたようだな? 衛兵! こいつを殴って正気に戻せ!」
私はこの尊大な態度の男を捕らえさせたが、縄で縛り上げているうちに小枝になってしまった。さきほどまであったアータムの亡骸も小枝に変わっていた。
「まさか・・・あいつは木の精霊王だったのか? だから植物が枯れ始めたのか・・・・・・なんてことだ! 早くこの国に緑を戻せ! 緑がなければ人間は死んでしまう。木も枯れて花も実も育たない。緑を奪うなんて酷すぎるだろう・・・・・・緑を戻せ!」
私がガクンと膝を地面に落としうな垂れていると、その膝から根が生えて身体はどんどん木に変化していく。
「そんなに緑がほしいなら、お前が木になればよい。だが、人間の浅ましい欲の心はそのままに残してやろう」
くっそ! なんの冗談だよ! こんなのは嘘だ!・・・・・・ここで木になるなんておかしいだろう?
アスペンも足から根が生えだしており、身もだえしながら叫んでいた。
「私は聖女なのよ! 間違いなく聖女なのよ! なんでこんなことが起こるの? くっそ! ちきしょーー! 根が生えたら綺麗なドレスも宝石もつけられないだろーーがっ! なにが木の精霊王だ! 木なら燃えるだろう? 森に火をつけて全部燃やせばいいんだ!」
アスペンは、まだ自由になる手で火をおこそうとして誤って自分の足下に落としてしまい、みるみるその火がアスペンを焼いていく。
「あたしは、アータムが憎らしかっただけなんだ! あいつは、なんでも上手にできて皆から好かれていたから、あたしがこっそりみんなに嘘をふきこんだ。お母様にもお父様にも皆に嘘をついたけれど、簡単に信じた人間も悪いよね? あたしのせいじゃないだろ! そうさ、そこのバカ王が一番悪い! 王様のくせにあたしの色香にそそのかされて本物の聖女を迫害したんだ! この国王こそがクズでバカで一番悪い!」
狂って笑いながらも焼かれていくその身体は、ただの木になり炭になる。兵士達もどんどん木になっていき・・・・・・王宮じゅうが木に覆われて、この国は緑豊かな素晴らしい国になった。けれど・・・・・・人間の姿はどこにも見当たらないのだった。
☆彡★彡☆彡
その後(三人称視点)
数年後にここはキャンプ場として有名になり、多くの観光客が訪れた。
(その唐揚げ、うまそうだな)
「ねぇ、今この唐揚げが食べたいって言った? いいよ、食べても。こっちのオムレツも食べなよ」
「え? なにも言ってないよ。 でも、もらうよ。ありがとう」
(かっこいい男だねぇ。ついでにあたしも、もらってほしいよぉ)
「えっと。僕でよければ、結婚しないか?」
「・・・・・・本当に? ありがとう! その言葉をずっと待っていたわ」
ここには優しい妖精がいて恋人達の仲を応援しているという噂まで広がり、ますます仲睦まじいカップルが訪れるのだった。
夜になると木々はひそひそとおしゃべりをしだす。
「いくらなんでもこれは拷問さ。木にはなったけれど心は人間のままだ。おまけにどういうわけか話せる」
「移動はできないし、手足も木だから風に揺れるだけだが、欲は消えない。食欲・性欲・物欲が思いっきり残ったままで木になるって・・・・・・木の精霊王様はあと何年したら許してくれるんだ?」
「ふっ。しかも最近じゃぁ、カップルだらけだしね。あんたが唐揚げ食べたいなんて言うからさ!」
「お前こそ、『あたしも、もらってほしいよぉ』なんて冗談言うからだ。お前みたいな婆さんを誰がもらうかい!」
「なんだってぇーー! あ、鳥が糞をひっかけていきやがったわ! もぉーー、頭に巣をいっぱい作られてこっちはいい迷惑だよ」
ざわざわ。クスクス。森がおしゃべりをしだすと、カップル達はとても嬉しそうにささやきあった。
「ねぇ、森の妖精が私達のために大合奏しているわね。きっとお祝いのお歌をうたっているのね?」
☆彡★彡☆彡
一方、あの森で置き去りにされたアータムは熊にそっと抱きかかえられ、オオカミ達に守られながら大きな木の下まで運ばれた。
大きな木はたちまち緑の髪と瞳の精霊王となり、アータムを優しく抱きかかえるとその傷を精霊の力で癒やすのだった。
「私の愛した人間の女性の子供だが、今日から精霊王の王女として迎える」
アータムはその言葉と同時に目覚め、その髪と瞳は淡い緑に変わっていた。
「この方が聖女様で精霊王様の娘なのですね? 聖女様ならば人間界に戻さなければ魔物が蘇って人間界を闇で染めるでしょう」
精霊王の使い魔のオオカミが尋ねた言葉に精霊王は答えた。
「もう人間界に聖女様は、いらないだろう? 自分の身は己で守ることをさせればいい」
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コメントをお寄せくださり感謝💐です🎶☺️