【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ

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18.リディアの苛立ち

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 リディアにとってアーバント帝国は、大国だという意識はあっても、野蛮な国という意識だった。

 そのため、リディアに傾倒して留学という手段をもって、ルングレム王国に来ていたディリスがルングレム王国を田舎と称した時、初めて興味を持った。

 確かにディリスの持ち物は、どれも一級品で、リディアに贈られる品物も、アイザックがくれるより質が上。
 ただし、それはリディア自身に振り向いてほしいため、無理してアイザックよりも良いものを贈ってくれているのだと思っていた。

 しかし、それはアーバント帝国に来て意識が変わった。

 そして、留学が決まり、ディリスの邸宅でお世話になることになった。
 しかし、今は苛立ちしかない。

 こんな屈辱生まれて初めてだった。

 それは登校初日。
 言葉も分からないのに、従妹のアメルが自分に気を使って通訳を買って出なかったことから始まり、ディリスがあまりにも情けなく見え、最後はアイザックとその側近が女子に言い寄られてデレデレしている姿を見たことだ。

 だから、アイザックを正気に戻すために、娼婦のような女を排除しようとしただけなのに。

 悪いことは何もしていない、リディアはただ王太子であるアイザックの品位を守ろうとしただけなのに。

 しかし、アイザックはリディアに謝罪するように言った。
 なぜ?
 身分もわきまえずに王太子に無礼なふるまいをしていたのはそこの女なのに!

 そう訴えても、教師から注意も受けた。
 なぜ平民の分際で自分を注意して、無礼を働いた女を庇うのか理解できない。

 リディアはいずれアイザックと結婚して、王族の一員となる予定だったが、これでは考えなおさなければならない。

 いらいらした苛立ちは、帰宅時間になっても収まらなかった。
 アイザックが迎えに来れば、許してあげたのに、彼は姿さえ見せなかった。

 迎えに来てくれたディリスに、事細かにどれだけ自分が正しい行いをしたのか訴え、ディリスはそれを肯定してくれたのだけは、良かったと思う。
 アイザックもディリスの邸宅で世話になっているので、リディアはアイザックの顔を見ると気分が悪くなると言えば、きっとなんとかしてくれる。

「リディアは何も悪くないのだから、堂々としていればいいさ。アイザックたちに出て行ってもらおう。何、このアーバント帝国には一流のホテルがいくつもあるし、留学生には学校寮もある。多少不便でもそれくらい我慢してもらおう」
「ディリス様、お願いします。今はあなただけが頼りなんです」
「ああもちろんだ。そうだ、気分を変えて買い物でもしないか? アーバント帝国に来たばかりで色々必要なものもそろっていないだろう? 宝石でもドレスでもなんでも買ってあげよう」
「本当ですか? うれしいです、ディリス様」

 やはり、こうでなければ。
 
 リディアは機嫌を少し浮上させ、ディリスの案内の元アーバント帝国の帝都を馬車の中から眺める。
 
 やはり悔しいがルングレム王国よりも、豊に感じた。
 平民の着ているものも、貴族並みの質の良さだったりする。

 平民が貴族以上のものを身に着けるなど、身分制度で厳しいルングレム王国では考えられない。

 しかし、これが現実だ。

「ねぇディリス様。もしかして平民は貴族の事を敬っていないんですか? だから今日の女みたいな身をわきまえない女がいるのかしら?」
「悲しいことに、身分をわきまえない平民が多い事は事実さ。だからこそ私は皇帝になり、国を統率しあるべき姿にしようと試みていたんだ」
「ええ、ディリス様のおっしゃっていることは正しいと思います。ルングレム王国は、きちんと王族や貴族が平民を統率しておりますもの。思いあがった平民が多くなれば、内乱が起こるとわたしはきちんと歴史で知っています」

 それなのに、歴史を繰り返そうとするような輩が多すぎる。
 貴族が平民を統率できなくなれば、また戦争が起こると歴史に学んでいないのか、不思議だった。

「やはりリディアは頭がいいな! 私の考えをよく理解してくれている……、私にはリディアしか将来を考えられる女性はいないよ」
「ふふふ、でもわたしはアイザック様の婚約者候補ですよ。でも、それも少し考えなければならないかもしれませんが。浮気症のある男性と結婚しても、幸せになれないかもしれませんから。ただ、わたしも貴族の娘。家のために結婚するのは覚悟しています」
「リディア、今はそう考えるな。アーバント帝国にいるときくらい、楽しいことを考えてほしい。そして、アーバント帝国がルングレム王国よりも暮らしやすい国であると、証明させてくれ」

 リディアの機嫌がだいぶ戻ってきた。

 しかし、それも少しの間だけだった。


 
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