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23.いざという時の保険
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「おかえりなさい、ずいぶんと遅かったわね」
腕を組んで立ちふさがるように待っていたのは、デリックの母親である、ノイマン公爵夫人ライヒラだ。
「母上が帰って来いと言わなけらば、もっと遅くなったかもしれませんね」
「お客様がきているから、知らせただけよ。あなたに会いたいらしいわよ?」
「別に客じゃないから、追い出してくれてよかったんですけど」
「そうねぇ、そうしたいのはやまやまだですけど、そうできない事情はあるのよ。なにせ、相手は一応帝室の皇子様と、一応ルングレム王国の公爵令嬢ですものね」
“一応”というところに含みがあったが、聞かずとも想像ができる。
アメルは申し訳なくなり、ライヒラに頭を下げた。
「申し訳ありません。従姉がご迷惑を……」
「こんなこと、迷惑でもなんでもないわ。アメルさんは気にしないで頂戴。全部デリックに任せてわたくしとお茶でも飲みましょうね」
さっそうとアメルを連れ出そうとするライヒラに、デリックが待ったをかけた。
「もしかして、俺一人で向かえって? 母上が招き入れたのですから、母上も対応するべきでは?」
「あらまぁ。わたくしのお客様じゃないのよ? わたくしは館の女主人として、とりあえずご挨拶しに行っただけです。あとの事は自分でなんとかなさい」
「あの、ライヒラ様。それならわたしにも責任があるので、デリックと共にリディアに会います。もともと、そうする予定だったので。わたし、リディアと話をするのは面倒だからと避けていましたが、もうそうは言っていられません」
ルングレム王国では、アメルだけが被害を被ればよかったが、アーバント帝国ではデリックや友人がアメルと共に被害を被っている。
はっきりさせなければいけない事は、はっきりさせておきたい。
たとえ、リディアが理解しなくても。
「……そういえば、あいつらが来る前にリンデルス伯爵から手紙が届いていたが、ルングレム王国で何かあったのか?」
「うん。ちょっと、リディアに関係する事かな。この機会に教えてあげようかと思うの」
アメルが笑みを浮かべると、デリックが訝しがった。
「ルングレム王国で何かあったってことか?」
「それに近いかもしれないわ。もう少し話が進んだらみんなに話す予定だったのだけど、このままリディアを無視していたら、わたしたちだけじゃなくて、ルングレム王国の権威に関わるもの」
初日なのに、すでにリディアは大多数の女子からの怒りを買っている。
それに、ルングレム王国では許されたことでも、アーバント帝国では許されない事さえ学んでいない。
そんな状態でアーバント帝国に居続ければ、最終的にアーバント帝国民のルングレム王国への見方が変わってもおかしくない。
その結果、ルングレム王国を侮られれば目も当てられない。
ルングレム王国はアーバント帝国からの輸入品が数多くあり、国民の生活を助けているのだから。
頭が痛い。
もう少し大人しくしていてくれればよかったのに、いきなりこんな事態になるのなら、もっと対策を考えておくべきだったと今更後悔してしまった。
「あら、じゃあわたくしとのお茶はお話が終わってからにしましょうね。お昼の件も含めて、どんなお話合いになったのか、教えて頂戴」
ライヒラは完全にこの件から離れるように、背を向けた。
そして、何か言い忘れように一度立ち止まり、デリックに笑みを向けた。
「デリック、いざとなったら武力で追い出してもいいわよ。その時の責任はわたくしがとります」
やっちゃいなさい、と堂々と言っているその笑みに、デリックの方も答えるように力強く頷いた。
「善処はしますが、話の聞かない相手ですからね」
できれば、穏便に済ませたいところだが、お昼の様子を見る限り、穏便に話が進むとは思えず、アメルはため息をこっそりと吐き出した。
腕を組んで立ちふさがるように待っていたのは、デリックの母親である、ノイマン公爵夫人ライヒラだ。
「母上が帰って来いと言わなけらば、もっと遅くなったかもしれませんね」
「お客様がきているから、知らせただけよ。あなたに会いたいらしいわよ?」
「別に客じゃないから、追い出してくれてよかったんですけど」
「そうねぇ、そうしたいのはやまやまだですけど、そうできない事情はあるのよ。なにせ、相手は一応帝室の皇子様と、一応ルングレム王国の公爵令嬢ですものね」
“一応”というところに含みがあったが、聞かずとも想像ができる。
アメルは申し訳なくなり、ライヒラに頭を下げた。
「申し訳ありません。従姉がご迷惑を……」
「こんなこと、迷惑でもなんでもないわ。アメルさんは気にしないで頂戴。全部デリックに任せてわたくしとお茶でも飲みましょうね」
さっそうとアメルを連れ出そうとするライヒラに、デリックが待ったをかけた。
「もしかして、俺一人で向かえって? 母上が招き入れたのですから、母上も対応するべきでは?」
「あらまぁ。わたくしのお客様じゃないのよ? わたくしは館の女主人として、とりあえずご挨拶しに行っただけです。あとの事は自分でなんとかなさい」
「あの、ライヒラ様。それならわたしにも責任があるので、デリックと共にリディアに会います。もともと、そうする予定だったので。わたし、リディアと話をするのは面倒だからと避けていましたが、もうそうは言っていられません」
ルングレム王国では、アメルだけが被害を被ればよかったが、アーバント帝国ではデリックや友人がアメルと共に被害を被っている。
はっきりさせなければいけない事は、はっきりさせておきたい。
たとえ、リディアが理解しなくても。
「……そういえば、あいつらが来る前にリンデルス伯爵から手紙が届いていたが、ルングレム王国で何かあったのか?」
「うん。ちょっと、リディアに関係する事かな。この機会に教えてあげようかと思うの」
アメルが笑みを浮かべると、デリックが訝しがった。
「ルングレム王国で何かあったってことか?」
「それに近いかもしれないわ。もう少し話が進んだらみんなに話す予定だったのだけど、このままリディアを無視していたら、わたしたちだけじゃなくて、ルングレム王国の権威に関わるもの」
初日なのに、すでにリディアは大多数の女子からの怒りを買っている。
それに、ルングレム王国では許されたことでも、アーバント帝国では許されない事さえ学んでいない。
そんな状態でアーバント帝国に居続ければ、最終的にアーバント帝国民のルングレム王国への見方が変わってもおかしくない。
その結果、ルングレム王国を侮られれば目も当てられない。
ルングレム王国はアーバント帝国からの輸入品が数多くあり、国民の生活を助けているのだから。
頭が痛い。
もう少し大人しくしていてくれればよかったのに、いきなりこんな事態になるのなら、もっと対策を考えておくべきだったと今更後悔してしまった。
「あら、じゃあわたくしとのお茶はお話が終わってからにしましょうね。お昼の件も含めて、どんなお話合いになったのか、教えて頂戴」
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そして、何か言い忘れように一度立ち止まり、デリックに笑みを向けた。
「デリック、いざとなったら武力で追い出してもいいわよ。その時の責任はわたくしがとります」
やっちゃいなさい、と堂々と言っているその笑みに、デリックの方も答えるように力強く頷いた。
「善処はしますが、話の聞かない相手ですからね」
できれば、穏便に済ませたいところだが、お昼の様子を見る限り、穏便に話が進むとは思えず、アメルはため息をこっそりと吐き出した。
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