【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ

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22.噛み合わない話

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 ノイマン公爵夫人であるライヒラは、目の前の二人にどう対応したものかと、内心では困っていた。
 
 というのも、一応敵対派閥であり帝位継承権を剥奪されているとはいえ、帝室から追い出されたわけでもない、皇子とこの家で預かっているアメルの従姉が突然やってきたのだ。

 さて、どういう対応をするべきか悩むのも当然。
 
 ただし、顔には出さず、とりあえずは好意的に家に招き入れた。

 しかし、話を聞いていると、門前払いするべきだったかと後悔し始めていた。

 アメルは従姉の事をあまり話さないが、デリックは夫であるノイマン公爵とルングレム王国に行くたびに彼女の愚痴を言っていた。

 それに対し、夫も否定することもなく、苦笑いしているところを見ると、デリックの愚痴が真実なのだと分かる。

 内容は主に、従妹であるアメルへの扱いが、まるで使用人みたいだということ。
 それから、頭が悪い権力主義者だと言う事。

 アーバント帝国は王政ではあるが、貴族が幅をきかせていた時代は終わりを迎えつつあり、貴族とはいえ罪を犯せば罰せられることになっている。

 そして、能力があれば貴族よりも政治や経済を牛耳ることが可能だった。

 身分制度の垣ねなく自由と言えば聞こえはいいが、完全な実力主義社会。

 アーバント帝国で生まれ育ったデリックと、ルングレム王国で権力というなのぬるま湯につかっているリディアとでは、根本的に合うことはない。

 むしろ、デリックからしてみれば生まれが良かっただけで努力もしない相手は、嫌悪する存在だ。

 その相手が今、なぜかノイマン家にやって来ている。

 確か留学という名目でアーバント帝国にやってくるということは聞いていたが、大陸共通語も満足に話せないとは思ってもみなかった。

 ルングレム王国と取引のあるノイマン家の家政を預かる者として、ルングレム語は話せるが、これでは学校でも不自由する事だろう。

 そして、それは事実だと判明した。

『――ですから、アメルと一緒に暮らす方がいいと思うのです』

 話半分だったが、要はアメルを便利な通訳兼使用人として自分の手元に置きたい、ということだ。

 しかも、なぜかデリックがアメルに誘惑されて、頭がおかしい扱いをされている。

 これは一体どういうことなのか、ぜひ説明を求めたいところだった。
 むしろ、思い余ったデリックがアメルに襲い掛かる未来しか見えないが……。

 そこまで考えて、とりあえず急いで帰ってくるようにデリックに伝達するように、使用人に伝える。

 なせに、話がまったく噛み合わない上に、第一皇子のディリスも自分たちの要求しか押し付けてこない。

 断片から、デリックが学校でディリスやリディアに無礼を働いた、という事は分かったが、それは問題にならないだろう。

 学校でのことだし、公的場所でもないのなら、特別不利益になることもない。

『少し、いいですか? 結局あなたはアメルとどうなりたいのかしら?』
『もちろん、アメルはわたしの世話をするのが当然の立場ですし、そうしてもらわないといけません。それに、あなたの嫡男であるデリック様はアメルと一緒にいると、道を踏み外す恐れがあるのです! あの子は本当にどうしようもない子ですから』
『そうかしら? わたくしにはいい子だと思いますけど?』
『きっと猫をかぶっているんです! 騙されないでください! わたしが一緒に暮らせば、きっと分かってもらえると思います。あの子がどんな子か!!』

 ライヒラが目を静かに閉じた。
 言っていることが支離滅裂で、どうみても彼女の言っていることが正しいとは思えない。

 デリックの主観では、あまりにもひどいいものだが、まさかそこまでじゃないだろうと踏んでいたのに。
 
『リディアさん、とおっしゃったかしら? ディリス殿下と親しい方をノイマン家で預かることはできませんよ。我が家は、ディリス殿下とは政敵の関係。ディリス殿下もそれはご理解いただけているはずですよね?』
 
 なぜこんな事を説明しなければならないのか。
 本来なら、ディリスがリディアを止めるべきことだったのに。

『ふん、リディアの望みなのだから仕方がない。私とて、大事なリディアを預けたくはないが、アメル・リンデルスはリディアの従妹。ともに暮らすのも当然だ。しかも、今ノイマン家の嫡男がアメル・リンデルスのせいで道を踏み外そうとしているのだ。むしろ感謝されたいくらいだ』

 確かに、アメルのせいで色々と息子は変わっているが、歓迎できる変化だと思っている。

 それに、道を踏み外す……、まあいろんな意味で道を踏み外しそうな感じはするが、そこはきっと理性をもって対処するだろう。

 もういい加減、この二人の話聞いているのが馬鹿らしくなってきたライヒラであったが、その時、アメルとデリックが帰宅したと知らせを受けて、ここぞとばかりに席を立った。

『少し、席を外しますわ。すぐに戻りますから』

 とりあえず、この二人の事は息子に押し付けようと、ライヒラは心に決めた。



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