【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ

文字の大きさ
23 / 39

23.いざという時の保険

しおりを挟む
「おかえりなさい、ずいぶんと遅かったわね」

 腕を組んで立ちふさがるように待っていたのは、デリックの母親である、ノイマン公爵夫人ライヒラだ。

「母上が帰って来いと言わなけらば、もっと遅くなったかもしれませんね」
「お客様がきているから、知らせただけよ。あなたに会いたいらしいわよ?」
「別に客じゃないから、追い出してくれてよかったんですけど」
「そうねぇ、そうしたいのはやまやまだですけど、そうできない事情はあるのよ。なにせ、相手は一応・・帝室の皇子様と、一応・・ルングレム王国の公爵令嬢ですものね」

 “一応”というところに含みがあったが、聞かずとも想像ができる。

 アメルは申し訳なくなり、ライヒラに頭を下げた。

「申し訳ありません。従姉がご迷惑を……」
「こんなこと、迷惑でもなんでもないわ。アメルさんは気にしないで頂戴。全部デリックに任せてわたくしとお茶でも飲みましょうね」

 さっそうとアメルを連れ出そうとするライヒラに、デリックが待ったをかけた。

「もしかして、俺一人で向かえって? 母上が招き入れたのですから、母上も対応するべきでは?」
「あらまぁ。わたくしのお客様じゃないのよ? わたくしは館の女主人として、とりあえずご挨拶しに行っただけです。あとの事は自分でなんとかなさい」
「あの、ライヒラ様。それならわたしにも責任があるので、デリックと共にリディアに会います。もともと、そうする予定だったので。わたし、リディアと話をするのは面倒だからと避けていましたが、もうそうは言っていられません」

 ルングレム王国では、アメルだけが被害を被ればよかったが、アーバント帝国ではデリックや友人がアメルと共に被害を被っている。

 はっきりさせなければいけない事は、はっきりさせておきたい。

 たとえ、リディアが理解しなくても。

「……そういえば、あいつらが来る前にリンデルス伯爵から手紙が届いていたが、ルングレム王国で何かあったのか?」
「うん。ちょっと、リディアに関係する事かな。この機会に教えてあげようかと思うの」

 アメルが笑みを浮かべると、デリックが訝しがった。

「ルングレム王国で何かあったってことか?」
「それに近いかもしれないわ。もう少し話が進んだらみんなに話す予定だったのだけど、このままリディアを無視していたら、わたしたちだけじゃなくて、ルングレム王国の権威に関わるもの」

 初日なのに、すでにリディアは大多数の女子からの怒りを買っている。
 それに、ルングレム王国では許されたことでも、アーバント帝国では許されない事さえ学んでいない。
 
 そんな状態でアーバント帝国に居続ければ、最終的にアーバント帝国民のルングレム王国への見方が変わってもおかしくない。

 その結果、ルングレム王国を侮られれば目も当てられない。
 ルングレム王国はアーバント帝国からの輸入品が数多くあり、国民の生活を助けているのだから。

 頭が痛い。
 もう少し大人しくしていてくれればよかったのに、いきなりこんな事態になるのなら、もっと対策を考えておくべきだったと今更後悔してしまった。

「あら、じゃあわたくしとのお茶はお話が終わってからにしましょうね。お昼の件も含めて、どんなお話合いになったのか、教えて頂戴」

 ライヒラは完全にこの件から離れるように、背を向けた。
 そして、何か言い忘れように一度立ち止まり、デリックに笑みを向けた。

「デリック、いざとなったら武力で追い出してもいいわよ。その時の責任はわたくしがとります」

 やっちゃいなさい、と堂々と言っているその笑みに、デリックの方も答えるように力強く頷いた。

「善処はしますが、話の聞かない相手ですからね」

 できれば、穏便に済ませたいところだが、お昼の様子を見る限り、穏便に話が進むとは思えず、アメルはため息をこっそりと吐き出した。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~

かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。 だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。 だめだ。 このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。 これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

勇者と聖女の年の差は100歳です

チカフジ ユキ
恋愛
シャーリーは年増聖女として神殿で恐れられている聖女だ。 ある日、魔王討伐のための勇者候補の育成を命じられて、いやいやながらも引き受けることに。 その勇者候補ルイは、見た目が痩せ細った子供で、年は十四。 大聖女であるシャーリーとは百歳差の子供だった。 せっせと育てた勇者候補は、やがて勇者となり魔王を討伐。 しかし、勇者を育てた功績は、全て別の聖女の手柄にされたシャーリーは、以前から無茶ぶりばかりしてきた神殿を出ていく決心をした。 しかし、こっそり出て行こうとしたシャーリーはあっさり捕えられた。 捕えたのは、世界を救った勇者ルイ。 そして、彼から衝撃的な話をされ、シャーリーは選択を迫られた。 ※他の投稿サイトにも掲載中

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。

かのん
恋愛
 真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。  けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。 「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。  ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

婚約者を妹に取られた私、幼馴染の〝氷の王子様〟に溺愛される日々

佐藤 美奈
恋愛
エリーゼ・ダグラス公爵家の令嬢は、フレックス・グリムベルク王子と婚約していた。二人の結婚は間近に迫り、すべてが順調に進んでいると思われた。しかし、その幸せは突然崩れ去る。妹のユリア・ダグラスが、フレックスの心を奪ってしまったのだ。婚約破棄の知らせが届くとき、エリーゼは絶望に打ちひしがれた。 「なぜ?」心の中で何度も繰り返した問いに、答えは見つからない。妹に取られたという嫉妬と、深い傷を負ったエリーゼが孤独に沈んでいた。そのとき、カイル・グリムベルク王子が現れる。 彼はエリーゼにとって、唯一の支えであり安らぎの源だった。学園で『氷の王子様』と呼ばれ、その冷徹な態度で周囲を震えさせているが、エリーゼには、その冷徹さとは対照的に、昔から変わらぬ温かい心で接してくれていた。 実は、エリーゼはフレックスとの婚約に苦しんでいた。彼は妹のユリアに似た我儘で気まぐれな性格で、内心では別れを望んでいた。しかし、それを言い出せなかった。

婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」

佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」 アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。 「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」 アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。 気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。

処理中です...