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11.突然の求婚と困惑1
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迷惑な客人がいなくなると、ルドヴィックは頭を下げた。
「子爵、私の至らなさでご令嬢にも父上である子爵にもご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」
「いえ、ミルドレット卿。お忙しい中娘のために骨を折っていただきありがとうございます……しかし、なぜ? あなたほどの方が娘と、誤解を受ける事をなさったのか疑問です」
「流石に誤魔化されたりはしませんね」
涼しい場所で休憩が必要だったと言っていたが、そんな取って付けたかのような言い訳を全く信じていないヴィクトリアの父親に苦笑してみせた。
「下心があったと言ったら信じますか?」
「…・・・」
「子爵、できればご令嬢と二人で話がしたいのですが、いいですか?」
いいですかと問いながらも、許可を求めているわけではなかった。
これは、半強制的な退室を促していた。
「この邸宅内で不埒なマネはしませんよ」
「――、信じますよ」
二人の男の間にはなにやら通じ合うものが生まれたようであっさりと父親の方が引いた。
「え、お父様?」
「ヴィクトリア、もし、もし万が一にも何かされそうになったらすぐに叫ぶんだぞ? いいな」
そんな言葉を残しながらさっさと応接室を出て行く、代わりにメイドが新しいお茶を運んできた。
ルドヴィックにお茶を淹れ、彼女も退室すると、本当に二人きりになった。
こんなこと、普通は父が許さない。
しかし、応接室の外は庭園が広がっていることもおり、更には目の前の人物が信用ある人物であるから許されたと思う事にした。
彼はお茶を優雅に一口含み、ヴィクトリアの視線に気づいたのか、ゆっくり静かにカップを戻した。
「ミルドレット卿、この度はありがとうございます。しかし、色々疑問があるのですが、お聞きしてもよろしいですか?」
「もちろんです。今日は比較的暇なので、いくらでも時間は取れますよ? なんならこの後半休にしてもきっと許してくれるでしょう。なにせ、ここ数か月まともに休みをとれていないのですから」
ああ、そういえばと思い至る。
最近、国境沿いで色々あったことを思い出した。
それに借り出されていたのなら、この間は本当に久しぶりの休暇だったと思われる。
「ええと……今日の事はなぜお知りになったのでしょうか?」
今日、あの二人が来たのは特別決まった予定ではなかった。
突然押しかけてきて、突然わめきだしたのだ。
「偶然にも、伯爵家の馬車がこちらに向かっているのを知りまして、もしやと思い駆けつけました」
「偶然……ですか?」
「偶然です」
さらりと言われ、それを信じている訳ではないが、これ以上聞いても無駄だろうなというのも伝わってきたので、他の質問に切り替える。
「あの日、どうして誘ってくださったんですか? わたくしに同情してくださったのでしょうか?」
「それなら逆に聞きますが、どうして私の誘いに乗ったのですか? あなたなら、理解していたはずです。たとえ二人きりで無かったとしても体裁が悪い事を」
ヴィクトリア自身その事を明確に口に出来なかった。
親近感がわいたのもあるが、それ以上に年下の婚約者であるクレメンスの行動と態度とは真逆の紳士的なルドヴィックに心が惹かれ、もう少し一緒にいたい気持ちが生まれた。
それをなんと表現していいのかは分からない。
「すみません、自分でも軽率だったと思っています」
「それを言うなら、私も随分軽率な行動だったと思いますよ。おかげで、私も呼び出されました。実家にね」
「えっ?」
「あなたと同じですよ、婚約者が我が家に乗り込んできて。フェミニストの父に危うく本気で殴られるところでした」
「そ、それは――、そのご迷惑を!」
「いえ、それはもう解決しましたのでお気になさらず。私の方も婚約解消で話がまとまりました」
なんてことない様に口に出す、ルドヴィックにヴィクトリアは開いた口が塞がらなかった。
「正確には解消でさえないんですけどね。私の場合は、婚約さえしていませんでした。婚約の話が出た時は彼女はまだ十一で、わたしは二十一でした。しかも騎士として紛争地帯に行く事が決まっていました。この先どうなるか分からない身だったのに、まだ成人してもいない少女の未来を縛り付けるのもどうかと思いまして」
「え? 婚約していなかった?」
なにやらおかしい発言が飛び出てきた。
「しかし金銭援助していると聞いていますが……」
婚約しているなら分かるが、婚約していないのに無償で金銭援助するなんて事あり得るのだろうか。いや、普通に考えてあり得ない。
そんなヴィクトリアの考えていることなどすべて見透かしているかのようにルドヴィックが説明してくれた。
「子爵、私の至らなさでご令嬢にも父上である子爵にもご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」
「いえ、ミルドレット卿。お忙しい中娘のために骨を折っていただきありがとうございます……しかし、なぜ? あなたほどの方が娘と、誤解を受ける事をなさったのか疑問です」
「流石に誤魔化されたりはしませんね」
涼しい場所で休憩が必要だったと言っていたが、そんな取って付けたかのような言い訳を全く信じていないヴィクトリアの父親に苦笑してみせた。
「下心があったと言ったら信じますか?」
「…・・・」
「子爵、できればご令嬢と二人で話がしたいのですが、いいですか?」
いいですかと問いながらも、許可を求めているわけではなかった。
これは、半強制的な退室を促していた。
「この邸宅内で不埒なマネはしませんよ」
「――、信じますよ」
二人の男の間にはなにやら通じ合うものが生まれたようであっさりと父親の方が引いた。
「え、お父様?」
「ヴィクトリア、もし、もし万が一にも何かされそうになったらすぐに叫ぶんだぞ? いいな」
そんな言葉を残しながらさっさと応接室を出て行く、代わりにメイドが新しいお茶を運んできた。
ルドヴィックにお茶を淹れ、彼女も退室すると、本当に二人きりになった。
こんなこと、普通は父が許さない。
しかし、応接室の外は庭園が広がっていることもおり、更には目の前の人物が信用ある人物であるから許されたと思う事にした。
彼はお茶を優雅に一口含み、ヴィクトリアの視線に気づいたのか、ゆっくり静かにカップを戻した。
「ミルドレット卿、この度はありがとうございます。しかし、色々疑問があるのですが、お聞きしてもよろしいですか?」
「もちろんです。今日は比較的暇なので、いくらでも時間は取れますよ? なんならこの後半休にしてもきっと許してくれるでしょう。なにせ、ここ数か月まともに休みをとれていないのですから」
ああ、そういえばと思い至る。
最近、国境沿いで色々あったことを思い出した。
それに借り出されていたのなら、この間は本当に久しぶりの休暇だったと思われる。
「ええと……今日の事はなぜお知りになったのでしょうか?」
今日、あの二人が来たのは特別決まった予定ではなかった。
突然押しかけてきて、突然わめきだしたのだ。
「偶然にも、伯爵家の馬車がこちらに向かっているのを知りまして、もしやと思い駆けつけました」
「偶然……ですか?」
「偶然です」
さらりと言われ、それを信じている訳ではないが、これ以上聞いても無駄だろうなというのも伝わってきたので、他の質問に切り替える。
「あの日、どうして誘ってくださったんですか? わたくしに同情してくださったのでしょうか?」
「それなら逆に聞きますが、どうして私の誘いに乗ったのですか? あなたなら、理解していたはずです。たとえ二人きりで無かったとしても体裁が悪い事を」
ヴィクトリア自身その事を明確に口に出来なかった。
親近感がわいたのもあるが、それ以上に年下の婚約者であるクレメンスの行動と態度とは真逆の紳士的なルドヴィックに心が惹かれ、もう少し一緒にいたい気持ちが生まれた。
それをなんと表現していいのかは分からない。
「すみません、自分でも軽率だったと思っています」
「それを言うなら、私も随分軽率な行動だったと思いますよ。おかげで、私も呼び出されました。実家にね」
「えっ?」
「あなたと同じですよ、婚約者が我が家に乗り込んできて。フェミニストの父に危うく本気で殴られるところでした」
「そ、それは――、そのご迷惑を!」
「いえ、それはもう解決しましたのでお気になさらず。私の方も婚約解消で話がまとまりました」
なんてことない様に口に出す、ルドヴィックにヴィクトリアは開いた口が塞がらなかった。
「正確には解消でさえないんですけどね。私の場合は、婚約さえしていませんでした。婚約の話が出た時は彼女はまだ十一で、わたしは二十一でした。しかも騎士として紛争地帯に行く事が決まっていました。この先どうなるか分からない身だったのに、まだ成人してもいない少女の未来を縛り付けるのもどうかと思いまして」
「え? 婚約していなかった?」
なにやらおかしい発言が飛び出てきた。
「しかし金銭援助していると聞いていますが……」
婚約しているなら分かるが、婚約していないのに無償で金銭援助するなんて事あり得るのだろうか。いや、普通に考えてあり得ない。
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