年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ

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18.質問と再びの提案2

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「わたくし、自分の家に利益のある結婚をしたいと思っています。今後も我が子爵家の継続を考えているのですが、そうすると……その婿養子にという話になるんですが、ルドヴィック様はそれはよろしいのですか?」
「もちろん。むしろ、そのつもりです。もし今後爵位を賜るときもあなたの家と統合しようと思っています」
「そ、それは……周囲がなんというか」
「私が決めたことに口出しできるのは、私と伴侶だけです。大丈夫です、たとえ国主といえども、渡した爵位の扱いに口出す権利はありませんので」

 国主――つまり国王も黙らせると。

「ご実家の御父上は、もっと立派な家の者と結婚してほしいのではないかとも思いまして」
「私は三男で、すでに実家を出ています。両親にとやかく言われる筋合いはありませんが――きっとあなたは気にするのでしょうね。ご両親は良い方たちだから」
「仮に、わたくしがこの求婚を受け入れたとしても、ミルドレット侯爵様が反対したら、我が子爵家では太刀打ちできないと思いました。きっと潰されるだろうと」
「そんな事にはなりません。我が家は恋愛結婚主義なので。政略結婚するよりも、よっぽど歓迎されます。一応貴族は平民と結婚する際には議会と国王の承認が必要ですが、よっぽどのことが無い限り、通ります。つまり、事実上恋愛結婚なら平民とであろうと歓迎されるという事です」

 にこにこと説明するルドヴィックに、やっぱり少し疑いたくなるヴィクトリア。
 平民でも問題ないとは言っているが、彼の家の人間はほとんど政略結婚なのではないかと思うほどの相手と結婚している。
 ただし、どの夫婦も仲が良好なのもまた事実だった。

「もし、お疑いなら今から私の実家に行きますか? きっと歓迎されますよ」
「いえ、それはまたの機会で」

 訪問の窺いも立てていないのに、格上の家に突然赴くのは礼儀に反する。
 たとえ、それがルドヴィック――友人の実家で会っても。
 むしろ、実家であるからこそ行きたくない。なぜか、行ってはいけない気配がした。
 ルドヴィックは未だに疑いの晴れないヴィクトリアにそれなら、と一つ提案をしてきた。

「ヴィクトリア嬢、これは提案なのですが……友人から婚約者になってみませんか?」
「それは一体?」
「婚約者らしく会わないかという提案です」

 なんだかおかしい方向に話が進む。

「友人と婚約者は全く違います。それは、ヴィクトリア嬢もわかりますよね?」

 それくらいは言われなくても分かっているが、だからなんどというのだろうかと首を捻るヴィクトリア。

「ですから、婚約者として過ごしてみて、私の気持ちを分かってほしいなと思いまして。やはり一目惚れというのは言葉で説明できない類のものですし、行動で証明するしかないと思いました。結婚の話はひとまず置いておいて、私をもっと近くで知ってみませんか? それで無理だと思った時求婚を断って下さい。今のまま断られても、私は納得できません」

 真剣にこちらを見つめるルドヴィックに罪悪感がわいた。
 気持ちを疑われるというのは気持ちのいいものではない。
 しかし、それはそれで問題ありすぎる。

「ああ、もちろん。何かありました、責任は取ります。むしろ取らせてください」
「いえ、あの。ルドヴィック様をお待たせするのはあまりよろしくないかと」
「私は急いでいませんので、ゆっくりお互い知っていきましょう。もちろん、結婚してからゆっくり知っていくというのもいいですが」
「結婚前の方が好ましいです」

 どちらにしますかとにこりと微笑まれ、当然結婚前に決まっていると選ぶ。
 そこではたと、止まった。
 そもそもなんで、結婚前か結婚後かの選択になるのだろうかと。

「では、今から婚約者として振る舞っていいという事でよろしいですか?」
「求婚を受け入れていないのに婚約者というのはちょっと問題があるかと思います」
「では、恋人にしましょう。どちらでも私はいいですよ? 婚約者として振る舞うか恋人として振る舞うか。どちらも似たようなものです。ちなみに、どちらもなしというのは駄目です。私に対して罪悪感があるのなら、提案を受け入れて下さい。疑われたままというのは気持ちがいいものではありません」
「それはその通りですが……」

 押しが強い。
 ヴィクトリアだって、商人の娘。押しの強い相手との交渉だってやってきたが、今目の前にいるのが私的な相手という事もあって、なかなか強気になれないでいた。
 しかも、いわゆる恋愛的なものにはめっぽう知識がないので、どういえば角が立たないのかというのが分からない。

「では、今から恋人として振る舞っていいですよね? それとも婚約者? ああ、恋人だったけど婚約者になったという設定にしましょう。その方がおいしいですから」

 何がどうおいしいのだろうか。
 ヴィクトリアに断る隙を与えない様に、ルドヴィックは話をまとめにかかった。


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