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ワケありαの領主×買われたΩの話
その後
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「見てください、桜型のクッキーをつくったんです」
ニコニコと微笑むΩはお屋敷に来たばかりの頃友達になった使用人(領主)に、自らが使った手作りクッキーを差し出した。それは春に相応しく愛らしい花の形をしていた。
「いいのか?わた、……俺に」
「はい。本当は日々のお礼を伝えたくて旦那様の為に作ったのですが…、旦那様はお食事の摂取量を決めてるらしく断られてしまいました」
(は??初耳だが??)
まさか執事か!!確かに菓子などは絶対受け取らぬ!と私が言った、言ったけど―――空気を読めよ!!私の嫁については別であろう!?!?
「ありがとう。とても嬉しいよ」
「!たくさん食べてください!……昔から俺が作れるものなんて蒸かした芋くらいなんですが、弟も妹もおやつだって喜んでくれたんです」
そして、故郷を思い出したのか肩を落とすΩ。
心残りなどたくさんあった。Ωには弟と妹が一人ずついた、けれど自分が売れた金で学校に通わせられるのは一人だけ、一人しか学ぶチャンスを与える事が出来なかった。
「そうか、其方には兄弟が…いたのか」
「はい。けれど俺には、いくら材料があっても質素なものしか作れません。手作りなんてパッとしない地味なものじゃ感謝なんて伝わりませんよね」
「そ、そんなことはない!!喜ばない人間などいない!」
――――息が詰まりそうだった、そして感覚まで覚えていた。
ここにも彼の想いはあった。清らかで純粋な感謝だ。
【貧乏くさいものは要らぬ】。
それを鼻で笑い、靴底で粉々にした過去に存在した己の笑みも――――
「どんなに生活が貧しくとも其方の心は美しい、今も、今でも!」
ぎりっと詰めが食い込むほど手を握っても、過去の己にはなんの爪痕にはならないが
「す、すまん。熱く語りすぎた…」
「いいえ。それよりも旦那様は花をお好きな方でしょうか」
「さぁな…。なにせ花などじっくり眺めたこともない。庭の美しさにも気付けなんだ」
「え?」
「…と俺は見ている。俺が知っているのは花を愛でるよりも美食を追い求めるような主人様だ」
「そ、そうなのですか?俺は恥ずかしいことに領主様の事をなにも知らないんです」
「………そうか」
”理由をつけて俺の菓子は受け取ってはくれなかった、やはり庶民の作ったものなど興味はないのか”
そうやってまた凹む彼に心が痛む。
「人の気持ちなど俺には分からない。しかし人の気持ちとは美しいな」
「あ…」
「綺麗な花だ」
花咲く庭園へと使用人の友人。
それを見て心があたたくなるΩ。
「ふふ、ありがとうございます。貴方にはいつも慰められてばかりだ…頑張ります、次は受け取ってもらえるように」
「そ、そうだ!次も頼む!きっと…領主サマも喜ぶ」
小さな庭園で響く笑い声。
Ωはその太っちょな優しい使用人が領主=旦那様とは気づかない。
後日。
旦那様から贈り物です、と執事長からミニブーケと「うまかった」と感謝の手紙を受け取り、食べてもらえた安堵と嬉しさで微笑むΩの姿……を、こっこり影から見守る絶賛ダイエット中の領主様
(まて、私は一生痩せぬのではないか!?!?)
そして自業自得で、焦る。
「見てください、桜型のクッキーをつくったんです」
ニコニコと微笑むΩはお屋敷に来たばかりの頃友達になった使用人(領主)に、自らが使った手作りクッキーを差し出した。それは春に相応しく愛らしい花の形をしていた。
「いいのか?わた、……俺に」
「はい。本当は日々のお礼を伝えたくて旦那様の為に作ったのですが…、旦那様はお食事の摂取量を決めてるらしく断られてしまいました」
(は??初耳だが??)
まさか執事か!!確かに菓子などは絶対受け取らぬ!と私が言った、言ったけど―――空気を読めよ!!私の嫁については別であろう!?!?
「ありがとう。とても嬉しいよ」
「!たくさん食べてください!……昔から俺が作れるものなんて蒸かした芋くらいなんですが、弟も妹もおやつだって喜んでくれたんです」
そして、故郷を思い出したのか肩を落とすΩ。
心残りなどたくさんあった。Ωには弟と妹が一人ずついた、けれど自分が売れた金で学校に通わせられるのは一人だけ、一人しか学ぶチャンスを与える事が出来なかった。
「そうか、其方には兄弟が…いたのか」
「はい。けれど俺には、いくら材料があっても質素なものしか作れません。手作りなんてパッとしない地味なものじゃ感謝なんて伝わりませんよね」
「そ、そんなことはない!!喜ばない人間などいない!」
――――息が詰まりそうだった、そして感覚まで覚えていた。
ここにも彼の想いはあった。清らかで純粋な感謝だ。
【貧乏くさいものは要らぬ】。
それを鼻で笑い、靴底で粉々にした過去に存在した己の笑みも――――
「どんなに生活が貧しくとも其方の心は美しい、今も、今でも!」
ぎりっと詰めが食い込むほど手を握っても、過去の己にはなんの爪痕にはならないが
「す、すまん。熱く語りすぎた…」
「いいえ。それよりも旦那様は花をお好きな方でしょうか」
「さぁな…。なにせ花などじっくり眺めたこともない。庭の美しさにも気付けなんだ」
「え?」
「…と俺は見ている。俺が知っているのは花を愛でるよりも美食を追い求めるような主人様だ」
「そ、そうなのですか?俺は恥ずかしいことに領主様の事をなにも知らないんです」
「………そうか」
”理由をつけて俺の菓子は受け取ってはくれなかった、やはり庶民の作ったものなど興味はないのか”
そうやってまた凹む彼に心が痛む。
「人の気持ちなど俺には分からない。しかし人の気持ちとは美しいな」
「あ…」
「綺麗な花だ」
花咲く庭園へと使用人の友人。
それを見て心があたたくなるΩ。
「ふふ、ありがとうございます。貴方にはいつも慰められてばかりだ…頑張ります、次は受け取ってもらえるように」
「そ、そうだ!次も頼む!きっと…領主サマも喜ぶ」
小さな庭園で響く笑い声。
Ωはその太っちょな優しい使用人が領主=旦那様とは気づかない。
後日。
旦那様から贈り物です、と執事長からミニブーケと「うまかった」と感謝の手紙を受け取り、食べてもらえた安堵と嬉しさで微笑むΩの姿……を、こっこり影から見守る絶賛ダイエット中の領主様
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そして自業自得で、焦る。
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