BL短編集

田舎

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ワケありαの領主×買われたΩの話

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貧乏な家庭にうまれたΩ君。
貧乏人故に抑制剤は買えず、将来は娼館で働くか貴族αの愛人として売られるくらいしか選択肢がない。けれど両親はΩをとても大事にしていて、どんなに生きづらい道しかなくとも息子にまだ明るい未来がある方を…と常に願ってくれていた。
それでも遠からず発情期は来てしまう
もしもこんなオンボロの家で発情期を迎えてみろ、息子はもっと悲惨な運命を辿るしかないと常に両親は頭を抱えていた。

「俺は一人の人がいい。だから俺を、まだ若いって価値があるうちに金持ちの愛人に売ってよ。Ωなんていつまでもココにいちゃいけないって分かってる」

その代わり俺が売れたら、そのお金で弟を学校に行かせてあげてと言えば両親は泣いて頷いた。
貴族αの中は買ったΩの愛人を噛まないよう首輪をつけて⚫︎奴隷のように扱う人間がいる。うちは貧乏だから相手を選ぶ権利すらない…

(それでも体を触らせるのは"番い"だけがいいな)



そして、その日は来てしまった。
Ωを買ったのは王都から馬車で何日もかかる田舎の、小さな土地の領主様だ。無駄に情報量に溢れた王都でも貧乏人には貴族の噂は入らない。
家族と別れて一人馬車に揺られるΩの心には不安と影しかない。
αの領主様がどんな風貌なのかどんな人柄なのかも分からない緊張の中、屋敷に着いた馬車。いよいよご主人様と初対面を迎えるのかと思いきや、どうしてか旦那様は姿を見せなかった。
まぁαの旦那様に出迎えてもらえるとは思っていなかったけれど…。

「残念ですが領主様はお忙しいとのことです」

旦那様は夕食時にも現れなかった。旦那様が不在だから歓迎会はなく質素なメニューです、と出された料理だけれど味付けされたスープに具とパンがあるだけでご馳走だ。
手を合わせて「いただきます」と有り難く食事をいただいた。

夜だけが目当てなのか?、と思いきやそんなこともなく朝までぐっすり案内された部屋のベッドで寝た。
そして朝と昼も、旦那様は現れず一人食事をとり、屋敷を散策するくらいしかやることがなかった。


(あ、もしかして…お世継ぎ目的?)

それならば発情期にしか俺に用事はないんだろう、そうとしか考えられなかった。




一方の領主様は部屋に引きこもり…



「ふっ、ふっ、っ…、!」

真っ赤な顔とほとばしる汗。荒い息を吐きながら追い詰める体は限界を訴えるようにガクガクと震えていた。

「…腹筋、100回、終了ッ!!」

次腕立て伏せぇ!と…  Ωを買ったαのご主人様は毎日毎日、筋トレに励んでおられました。

「……旦那様、そろそろΩ様とお会いになられては?」
「ならん!!」

カッと目を見開き執事にNOを浴びせるが、それほどΩに会いたくない…わけではなくて

「見てみろ!私の、この腹!腕、足を!体重もまだ三分の一も減らせてないぞ!!」

ぷよぽよんとした白い肌とむっちりな贅肉。
立派なワガママボディについていたあだ名は、白豚領主サマだった。


あれは王都で菓子を買いに行く途中の、たまたまだった。


(なんだ、この胸の鼓動は…!?)

一目会った時すぐ気づいた、彼が自分の運命の番いであると。
彼が欲しい、いますぐ番いにしたい、味わったことのない強く惹かれてたまらない衝動ーーー 
それと同時に思い出したのは数年後、己が犯す過ちについてだった。

傲慢でわがままな白豚様は番いを好き勝手に扱い虐げた。さらに領民らにも重税を繰り返し、己に逆らえば容赦なく鞭打ちにした。
正に悪逆非道。しかしそんな暴虐がいつまでも許されるはずもなく終止符が打たれる時が来た。
うまくやってきたつもりが、ほんの些細なミスから芋蔓式に全ての悪行が暴かれてしまった。
そして自業自得の罪に下されたのは、処刑だった。

歓喜の声と、さっさと殺せ!の罵詈雑言。
最期に見たのは振り下ろされる白い刃と、私から解放された喜びか… はたまた別の感情なのかすら聞くともできない。

死に逝く自分へ、たったひとり涙を見せた番いの姿があった。



(どうせ過去を思い出すならもっと早く思い出せ、私!!)

アレが夢なのかは分からないが今ならまだやり直せるかも、いいや!!必ずやり直すと誓ったのだ。そのためにまず決意したダイエットだった。 

「私は痩せるぞ!これまでの過ちも精算し、恥ずかしくないα…領主になるのだッ」

そしてプロポーズをする。今度こそ、あの子を幸せな笑顔で泣かせてやりたい。

「素晴らしい心意気ですが、Ω様とはいつ晩餐会を?」
「早くても三年後だ!」
「………」

頑張りは嬉しいが、複雑な面持ちを見せる執事だった。



この後すぐ、お腹が空いてつまみ食いしにきた領主様は、仕込みの手伝いをしてたΩと厨房で鉢合わせするのだが、領主に会った事のないΩはその人が自分を買った領主とは気付かず、「はい。まだ夕食前だけどコレどうぞ」とお腹が空いてやってきた使用人だろうと微笑み、蒸かし芋を差し出す。

それから領主である事を隠し、屋敷の使用人としてΩに近づくようになり益々Ωを好きになってくダイエット中な領主と、見た目なんて関係なくどんどん使用人(旦那様)に惹かれるようになるΩ。


すれ違いからめっちゃハッピーエンドにしかならないオメガバ
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