15 / 27
元奴隷(敵国の騎士)×捕えられた小貴族
終わり 後半
しおりを挟む「ノルンは私の子どもを宿しています、表向きには」
「子の父親は―――― 貴方の兄、ラヴェト様です」
「……っ、…それは、… 父上の計画か?」
――― 狂ったような質問を、ルシウスに投げた。
父上は兄にたくさんの教育をする一方で、俺のことは放置していた。俺が―――― 領地に関する本を読み漁っていると知ってからも変わらず。
とくに蚕の世話など何十年も前に奪われた話だ。いくら勉強しても無駄だと、誰もが読むのも馬鹿らしいと思っていた記録をウィルだけは没頭することを許された。
『父上、これはなんて書いているのですか?』
『あぁ。随分と古い記録だから字が分かりづらいね、これは』
――――― 領主である父は、ウィルに領地の歴史を教え込んだ。
だからこそ、ウィルは知っていた。
父上には"野望”とも呼べる”夢”あるのだと。
「どうして、そう思うのですか?」
黒くて美しい衣を纏うウィルの体を、そっと抱き寄せる男。
それ以上触れて欲しくはないと、言いたげだった。
「父上は、」
偉大な先祖の功績を奪われた。
そのことを父上はずっと嘆き、いつも激しい怒りを心の内に秘めていた…
「アンタなら…、”夢”を叶えてくれると思ったんだろ?」
長男のラヴェト、次男のウィル。そのどちらが生き残ったとか死んだとか、父にとってはどっちでも問題はない。
あの人は、あの豊かである故郷を芽吹かせて、祖先たちの”血”が残ることを望んでいた。
例え、その土が、自らの血で染まろうとも。
(兄上とルノンの子どもが、ルシウスの子供になる。ルシウスはきっとその子を――――……)
あぁ、なんて恐ろしい父親だったのか……
きっと"ここまでとは思ってなかったけどね!"と、満足げな笑顔を浮かべて、あの世で拍手をしてるに違いない。
どうして、ルシウスをそこまで信じる気になったのかは分からない。
だけど思い返せば、燃え盛る火に照らされた表情に苦悶はなく―――、どこか穏やかだった。
「……それはウィル様の願望ですか?」
「ルシウス」
「残念ですが違います。私は、国益さえ与えてくれるならばどこでもよかった。それだけです」
………そうか、それがお前の答えなのか…。
今ここですべてを父の凶行とも呼べる計画のせいにしてくれたらよかったのに…、俺はお前を許せたのに。
(お前らは、”共犯”だったんだな?)
父上の望んだ、領地の再建。
祖国の為に貢献したくて提案を受け入れた、ルシウス。
―――――屋敷の記録が灰になったいま、失われた知恵が欲しかった。
「金剛蚕には月桂樹も食べさせてあげて…、それだけでいい」
「ウィル様。ノルンは、処女証明にサインをしました。破ったならば彼女は処刑されるほどの誓約です」
「………」
兄上とノルンは番いのように仲睦まじい恋人同士だった。
きっと最期まで兄上を裏切れない。彼女は―――死んでもルシウスを選ばないだろう。
それを、この男も知っている。
「彼女は、蜜のように甘く優しい毒で眠らせましょう。その亡骸はラヴェト様の隣がよいでしょう」
「……こんな真似をしても俺を、殺してはくれないんだな」
「えぇ、殺しません。貴方だけが私の、復讐相手なのです」
ルシウスにより、そっとベッドの上に押し倒されたウィルの体。
約束をした以上、もう逆らうことはなしない。
「ルシウス………・、お前を許せない、許しちゃいけない・…俺が死んだことになっていたとしても、」
ゼノン国もルタ国も関係ない。
誰よりも尊敬していた父上が遺した、呪いのような願いだーーー…
「あの土地の、正しい歴史を教えられるのはウィル様だけです。生まれたのが娘だったとしても、すべての所有権を子に与えます」
「アンタは、それでいいの…・?」
いや、いいのだろう。
それが父とお前の間で交わされた契約なら… 俺が何を言っても無駄だ。
「えぇ、ずっと。この身が朽ち果てても、約束を守りましょう」
―――――――――――――――――
”旦那様”、貴方の望みを叶えましょう。
生きることを望んではくれなかった貴方の条件。
けれど私にも、譲れない条件があります
「ウィル様は、俺のモノです。」
50
あなたにおすすめの小説
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ドSと崇拝
夏緒
BL
先輩の家で宅飲みしてて、盛り上がって大騒ぎしてみんなで雑魚寝したんです。そしたら先輩が当たり前のようにおれに乗っかってくる。両隣には先輩のダチが転がってる。しかもこの先輩、酔ってるうえに元がドSだもんだから……。
前編、中編、後編です♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる