竜神様の番

田舎

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8 竜の後悔

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ーーどこだ?

ーーどこにいる?


人間界に降り立ち、竜人のナガレは「消えた番」を探し続けた。

街を、国を、越えて。

その途中、奇跡と呼ぶべき出会いが一度だけあった。
魂の輪郭が、「リオ」と酷く似ている人間。

もし……あの池がリオを探せなければ、
あれが、番になっていたかもしれない。


(……だが)


違う。

リオを見つけた時のような衝撃は、なかった。


『竜人、さま』

はじめて目が合った瞬間に感じた。

まるで雷雨に打ち抜かれたかのように、
思考も理性も、すべてが吹き飛んだ。

―――自分に誓ったのだ。

この人間を、番を、リオを、
生涯、守り続けると。

それが、自分が竜人として生まれた意味なのだと――ナガレは、本能を理解した。


なのに

――――リオは逃げた。

置き手紙だけを残して。

裏切られたという怒りを、ナガレは兄であるハクレイの喉元へと向けた。
彼らが、ナガレに内緒で会っていたことを知っていた。

しかし、兄竜は血を流しながらも、冷ややかに笑った。

【お前、そこまで怒ることができたのか。
なのに、番の心には寄り添えなかった】


―――語るな と 吠えた。

しかし、それは焦りでもあった。
リオは…… リオの心は、どこにあった?

『   ナガレ様』

リオの――― 求めていたものを、知らない。

一瞬だけ見せた動揺にハクレイは微笑んだ。


「これは彼が本当に求めていたものを、一番与えなかったお前への罰だと」


『好きです、ナガレ様』


リオは、何度かそう言った。
しかしナガレは違う。

好きよりも、愛しているよりも、
もっと大きな感情を抱いていた。

――それでも、番にそう言われると、たまらなく嬉しかった。

だけど それを言葉で返したことはない。


【……ああ、そうだ!! 俺が愚かだった!!】


剣を握った人間に、片目を潰された時、

痛みよりも、

番の―――リオの顔が見えなくなることを恐れた。



* * *



夜闇の中、
青の谷に、風が走った。

崩れた岩の向こう。
血と土にまみれた巨体が、荒い息を吐いている。

「……っ」

リオの胸が、きゅっと縮む。
逃げたのは自分なのに、
それでも、探してしまった。


「――――っ、 ナガレ様」


泣きそうな、か細い声。
風に攫われそうなほど小さい。


――それでも、その声は、確かに竜の耳へ届いた。

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