飴玉でハーレム作ろうとしたら男しか寄ってこない

高槻桂

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飴玉でハーレム作ろうとしたら男しか寄ってこない13

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 俺とペルルカが愛し合っている間、ヒロエはアローチャにきちんとミルクを与えておむつを替えてとやってくれたらしかった。頼りになる子だ。
「チャーチャ、あみぐるみ抱いていると凄く大人しかったから楽だったよ」
 とはヒロエの言葉だ。ヒロエ様々、あみぐるみ様々だ。
「今夜は俺とえっちしてね」
「わかってるよ」
 くすりと笑ってキスを落とすと子供の姿のヒロエは満足そうに笑った。
 そうしてペルルカを送り出して俺たちは朝の日課であるドロップスの納品に三人で向かった。
 アイテムショップの店主とパパさんトークをちょっとだけ楽しんで、さてと市場に向かってふと肉屋に目が行った。
 誕生日はラズベリー牛のステーキで!
 なんてポップに足を止めて……俺はあっ!と叫んだ。
「ど、どうしたの?コウにいちゃん」
 ヒロエがびっくりした顔で見上げてくる。
 今はいつなのか。十月も終わろうとしている頃だ。
 十月にはなにがあった?そう、ペルルカとヒロエの誕生日だ。
「ごめん!誕生日忘れてた!」
 ヒロエに謝ると、彼はいいよ大丈夫、と笑った。
「コウにいちゃんが一番大変な時なんだから今年はいいよねってペルルカにいちゃんと話したんだ」
 いつの間に!でもそれでは俺の気が済まない。
「よし、今日お祝いしよう!」
「え、いいの?」
「うん!お肉とケーキとプレゼント買おう!」
 まずは肉屋でラズベリー牛のステーキを三人分買って、次にプレゼントを見に行った。
 あれこれ見て決めたのは、ペルルカには牛革の財布。ヒロエにはジャイアントラビットの毛皮のポシェットを買った。
 よし、とあとはフルーツケーキを買って家路につく。
 肉とケーキを冷蔵魔導装置に入れてプレゼントはリビングのローテーブルの上に置いた。
 ひとまず明日の分のドロップスを作るとして、作業部屋にこもる。
 あーほんとやらかした。ヒロエは気にしなくていいって言うけど、ペルルカだって絶対気にするなって言うに決まってるけど、でも俺は気にする!
 せっかくの年に一度の誕生日だ。祝いたいに決まっている。
 それを子育てに感けて忘れるだなんて。
 地球にいたときだって俺は毎年両親の誕生日にはプレゼントを贈っていたし両親も三十路近い息子にプレゼントをくれた。おめでとうと言ってくれた。
 誕生日とはそれくらい大事なものだと俺は思っているのだ。
 よし、と作業を終えて部屋を出る。アローチャは背中でぐうぐうに寝ている。静かすぎてちょっと怖い。このあみぐるみ、なんか変なもんでも編み込んであるんじゃないか。
 神様からの贈り物にそんな失礼なことを思いながら俺ってわがままだなあと思う。
 アローチャが騒がしかったら騒がしかったで疲弊してペルルカたちに当たっていただろうし静かなら静かで大丈夫かこれ、と疑う始末。
 俺は優しい人、らしいけど未だに自覚がない。ただ呑気なだけなのだ。世界平和が良い。みんな幸せが良い。ただそれだけなのだ。
 なんてことのない、どこにでもいる普通の人間だ。
 ペルルカたちがそれに気づいたら。
「……」
「あーう?」
 おんぶ紐からアローチャを下ろして抱っこする。
 俺がただのつまらない人間だと気づいたら。
「チャーチャ、お前は無邪気だね」
 彼らは、離れていくだろうか。


 ちょっと鬱ってしまった俺は気分を変えるためにアローチャと教会に向かった。ヒロエには申し訳ないがお留守番してもらっている。
 ユリアさんに挨拶をして、小部屋に案内してもらう。
「やあバンビーノ」
 現れた神様に俺はごめんなさい、と謝る。
「今日は何も持ってきていないんだ」
 肩をすくめる俺に神様は構わないよと笑った。
「きみが来てくれた。それだけで私は幸せなんだ」
 でも、と彼は俺の目を覗き込んで髪を撫でてきた。
「きみは少し弱っているね」
 やはりこの人には隠し事はできないようだ。
「俺って本当に優しいのかなって」
「優しいよ」
 神様は、マティスは即答してくれた。それだけで俺の心は少しだけ軽くなる。
「マティスこそ優しいね」
「きみにだけだよ。私は地球を見捨てた神様だよ」
「マティスはなんで神様になったの?」
 俺の問いかけにマティスはなんでだろうねえ、と柔らかい声で言う。
「どうしてだなんてこと、もう昔過ぎて忘れてしまったよ」
「マティスは恋をしたことがある?」
「あるよ。今だってしている」
「付き合ってみて、思っていたのと違うなって思う時ある?」
「どうしたんだい、バンビーノ。ペルルカが思っていたのと違っていたのかい」
 そうじゃない。そうじゃなくて。
「ペルルカもヒロエも素敵な人だ。もちろんマティス、あなたもだ。けれどそんなあなたたちに対して俺は本当にふさわしいのだろうか。そう思ってしまうんだ」
「きみはかわいいね」
 くすくすと笑う声にからかわないでよ、と唇を尖らせる。
 マティスはぱちんと指を鳴らすとテーブルの上にティーセットを出現させた。
「飲みなさい。落ち着く」
 カップには温かい湯気の立つ紅茶が満たされていて、俺はそれを手に取ってそっと口につけた。
 ラズベリーリーフより甘い、なのにさわやかさの感じられる口当たりの良い紅茶だった。
「……美味しい」
「それは良かった」
 マティスが言った通り、紅茶はくさくさとしていた気持ちを落ち着かせてくれた。
「みんなが幸せであれと願えることはね、実は意外と難しいんだよ」
 俺の胸の内を読んだのだろう、マティスがそう答える。
「どうしたって自分の幸せを願ってしまう。狭い範囲での幸せを願ってしまう。けれどきみは心から世界が平和であれと願っている。それは普通の人間にはできないことだ」
「自分だけ幸せでも、それは気不味いからで……」
「大抵の人間はね、気不味いなんて思わないんだよ。優越感に浸ってさらなる高みを望む」
 だけどきみはそうじゃない、とマティスは紅茶をすすってそう言う。
「それはきみが優しいからだ。優しいことに罪悪感を抱いてしまうほどに優しいからきみは迷い傷ついてしまう」
 その道を歩いていきなさい、とマティスは言う。
「迷って、傷ついて、けれど優しいきみであれ」
 いつでも私は君を見守っているよ。マティスはそう微笑んで俺の頬を撫でた。



(続く)
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