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お茶汲み秘書の話すのやめときたい秘密
いいえ、酔ってはいません
しおりを挟むよし、オッケー。
こんなもんかな。
和室に鏡がなかったので、窓ガラスに映して、あまりは浴衣と茶羽織を確認する。
いいな、この色。
可愛い可愛い。
よしよし、と髪もアップにして、障子を開けると、渋い茶系の茶羽織と浴衣を着た海里がソファに座って新聞を読んでいた。
それが海里の落ち着いた表情によく似合っている。
えーっ。
格好いい。
なんか良く本屋さんにある高くて立派な雑誌に出てる人みたい。
そして、はた、と気づいた。
いやいやいや。
危険だ、危険。
見合い相手だと初めて写真を見せられたときに危惧していたのと同じ状況になりつつある。
「か、海里さん」
と呼びかけると、海里はチラとこちらを見た。
「あの、支度できました」
海里は新聞を閉じ、そうか、と立ち上がった。
最近には珍しくカードキーではない鍵をひとつくれながら、
「じゃあ、行くか」
と言って、こちらを見ずに出て行ってしまう。
……別に貴方に見せたくて来たわけじゃないんですけど。
せっかく着たんですから、ちょっとは見てくれませんかね?
なんで視線合わさないんですか。
海里さん、おーい、と思いながら、茶羽織を着たその広い背中を見ていたが、海里は振り返りもせず、廊下を歩いていってしまう。
おーい……。
「いやー、最高に幸せですっ」
風呂を出たあまりたちは、夕食の出る別の個室に行っていた。
さっき、海里がこちらを見てくれないと不満に思ったことなど、あまりは既にケロッと忘れていた。
風呂も料理も最高だったからだ。
「さっきまで海を求めてさまよってたというのに、突然の素敵な宿に美味しい料理。
信じられません。
カメに助けられて、竜宮城に連れてかれたときの浦島太郎くらいに驚いています」
「いや……助けられたの、カメの方だからな」
っていうか、竜宮城に行く前に、カメがしゃべったところで、まず、驚け、と冷静に言われた。
「もう酔ってるだろ、お前」
氷でできた器に入った刺身の向こうで、海里が言ってくる。
「いいえ。
酔ってません」
と言いながら、イケメンより刺身が大きく視界に入っている時点で、酔っているかもな、とちょっと思っていた。
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