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箱から覗いてみました……
訳さないでくださいっ!
しおりを挟む俯いているこちらを見つめ、
「……日本語に訳してやろうか」
と囁いてきたので、
「けけけけ、結構ですっ」
とあまりは飛んで逃げ、ソファに腰をぶつけた。
いててて、と腰を押さえると、海里はそのソファに手をつき、あまりを見下ろし、言ってきた。
「あまり、愛してるよ……」
だから訳さないでくださいっ。
そんな間近でっ。
イギリスは生真面目で質実剛健な国というイメージが勝手にあったのだが、やはり、日本とは違うのだろうか。
海里さん、日本人の男は、愛してるよなんて、しゃあしゃあと言いませんっ、と思いながらも、固まる。
「キスしていいか」
と訊いておいて、
「いや、お前のような女は訊いたら駄目だな」
と言っていきなり腕をつかみ、逃げられないようにしてキスしてきた。
ぼっ、防犯ブザーッ! と思わず、手探りで探そうとするが、鞄をつかんだ手を、見ていないのかと思った海里に払われる。
「だから言ったろ」
と海里が耳許で囁く。
「男なんか部屋に上げたら駄目だって」
そう言い、もう一度、口づけてきた。
たっ、助けてっ、大崎さんっ。
成田さんっ。
あきづ……
……きさんは、絶対、助けないな。
っていうか、大崎さんも助けないな、とソファに押し付けられ、キスされながら、頭の片隅で冷静に考えていた。
成田さんは間に合わないしっ。
そうだ。
服部半蔵さんっ!
この人、逮捕してくださいっ。
流されてしまいます~っ!
海里に言ったら、いや、そんな簡単に流されるくらいなら、流されろ、と言うところだろうが。
そのとき、ぴぴぴぴ、と夜に迷惑な警告音が大音量で流れた。
海里が耳を押さえながら、
「あっ、てめっ。
ほんとに鳴らしたなっ」
と叫ぶ。
いや、ほんとすごい音だな、と思っていると、海里はあまりが鞄から引きずり出した防犯ブザーを慌てて止めていた。
ドンドンと壁を叩く音がする。
服部の部屋の方からだ。
海里は壁まで行って、自分も壁を叩くと、服部に向かって叫んでいた。
「大丈夫だ。
今のは、あまりがうっかり鳴らしただけだっ!」
すぐに壁はしんとした。
海里は戻ってきながら、
「あまり、すぐに引っ越せ。
この壁、意外に薄いぞ」
と言う。
そ、そうですか……。
いや、薄いからと言って、特に引っ越さなければならない理由もないのですが、と思いながら、まだ防犯ブザーを握り締めていると、それをチラと見た海里が、
「気がそがれたな。
呑み直すか」
と言ってくる。
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