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箱から覗いてみました……
人は何故、すっ転ぶと、辺りを見回し、笑いながら、立ち上がってしまうのか
しおりを挟む布団はお客様用の予備が一応あったが、部屋はワンルームなので、端と端に敷いてみた。
「待て。
俺はキッチンか」
と言うので、
「私がそちらに寝ます」
と言って、先に入れと言われたので、風呂に入る。
おお、確かに、洗剤も使っていないのに、つるつるピカピカだ、とあまりは湯船をきゅっきゅっと触って喜ぶ。
そして、気づいた。
いかんっ。
乗せられている!
このままでは、風呂掃除目当てに結婚してしまうっ、と思ったあとで、
『だから、その程度で流されるのなら、流されろ』
という海里の声が聞こえた気がした。
あまりは鼻先まで湯に浸かりながら考える。
それにしても、わからない。
何故、海里さんは、私に結婚しようなんて言うのやら。
あんな素敵な人が私にそんなこと言うなんて、嘘で罠に決まってる。
出会ってから、なにひとつ、いいところなんて見せてないし。
海里さんが道を歩いたら、みんなが振り返るだろうけど。
私が歩いてても、振り返られるときは、なんか笑われるときだけだし。
つまづいたときとか。
……人は何故、すっ転ぶと、辺りを見回し、笑いながら、立ち上がってしまうんだろうな。
あまりは目を閉じ、思う。
見合い写真を見たとき思った。
こんな人が見合いになんか来るわけないから、親御さんが適当に話を進めようとしているだけか。
私を騙そうとしているのに違いないと。
形だけの妻になるのも嫌だし。
私ひとりが本気になるのも嫌だ。
……いや、本気になってないですよ。
今もなってないですよっ、と今、此処には居ない海里に向かい、言い訳のように思ってしまう。
本気になったところで、マントとかひるがえして言いそうだしな。
『かかったな、あまりっ!』
とか言って。
……似合うな、マント、とか思っていると、ドンドンドン、と風呂の戸を叩かれた。
「生きてるか、あまりっ。
のぼせてひっくり返ってるんじゃないだろうなっ」
あまりに風呂が長いので、心配して来てくれたようだった。
大丈夫ですよ、もう~、と思いながら、こういうときは戸は開けないんだな。
紳士的だな、とうっかり思ってしまった。
……いや、一連の行動を思い返すと、とても紳士的とは思えないんだが、と思いながら、風呂を出ると、ラグの上のテーブルがなくなり、そこに布団がふたつ並べて敷かれていた。
「いやいやいや」
とあまりは、海里が風呂に入っている間に、二つを引き離す。
だが、トイレに行って戻ってくると、また引っついていた。
「いやいやいや」
とまた離してみた。
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