80 / 89
箱から覗いてみました……
相変わらず、怖いものなしですね
しおりを挟む「あまりー。
なんか爽やか系のイケメンが呼んでるー」
此処、秘書室ですよ!? と言いたくなる発言をしながら、総務の草野が現れた。
まあ、秘書室の影のボス、秋月が結構好き勝手な話をしているからいいのだが。
よその部署から秘書室に来た人は、大抵、カチンコチンに固まってやってきて、此処の空気に呑まれたように、しずしずと去っていくのに。
マスペースだなあ。
怖いものなしというか。
草野のことを職場を男を見つけるまでの腰かけだと思ってると揶揄する人たちも居るが。
だからこそ、先のことを考えずに、ズバズバ物を言ったり、行動出来たりもするので。
上司に言いにくいことを言ってくれたりして、助かるときもあると思うのだが、と思いながら草野を眺める。
はい、と桜田のデスクに回覧を置いた草野に、
「誰ですか、爽やか系のイケメンって」
と問うと、
「知らない。
なんかうちの部長と話してた」
と言う。
行ってみると、服部だった。
「なんで此処に居るんですか?」
総務の前の廊下に居た彼に問うと、服部たちが追っているのは、企業専門のコソ泥だと言う。
「社員のフリとかして、会社に入り込んで、ロッカーとかから金目のものを持って逃げるんだよ。
データ系のものは何処の企業も警戒してるけど、最近は、そっちばっかりで、物品の方はおろそかになりがちだから、一応、警戒してもらおうと思って。
あのカフェに何度も出没してるから、この辺りの企業には一応、お知らせをね」
「そうなんですか……」
と言うと、
「ところで、君、此処の社員だったの?」
さっき廊下で見かけたから、総務の人に訊いてみたんだけど、と言ってくる。
「ああ、いえ。
カフェから出張して、二週間程、秘書に研修に」
お茶の淹れ方を皆様に教えるというより、結局、此処で、研修させてもらっている気がする、と思っていた。
秘書室って、気配りの部署だからな。
秋月さんとかああ見えて、指導もさすがポイント押さえてて、上手いし。
そんなことを考えていると、
「そうなんだ?
まあ、此処で話できてよかったよ。
カフェの方ではちょっと。
あまり目につきたくないんで」
と服部が言ったとき、通り過ぎかけて戻ってきた者が居た。
「お、服部半蔵じゃないか。
なんで此処に居るんだ」
海里だった。
「あれっ? 彼氏さんじゃないですか」
と海里を見上げて服部が言い出す。
ひーっ。
此処ではやめてくださいーっ。
いや、何処ででもやめてくださいーっ。
第一、彼氏じゃないしーっ、と思ったのだが、口に出せばまた、海里に、
「往生際が悪い」
と言われるのはわかっているので、黙っていた。
「なんの用だ、服部半蔵」
「あのー、この人、めっちゃ偉そうなんですけど、誰なんですか?」
と海里を示して、服部が訊く。
何者なのかという意味だろう。
「そ、その方は支社長です……」
へー、支社長なんですかー、と呟いたあとで、服部は、あまりを見、海里を見、また、あまりを見た。
「では……」
とまずいものでも見てしまったような顔で、服部はそれ以後、目を合わせず、頭を下げると、すすすっと行こうとする。
「いやっ、待ってくださいっ」
あまりは服部の肩をつかんでいた。
「私、愛人とかじゃありませんからっ」
と小声で叫ぶ。
だが、海里はその手を手にしていた青いファイルで跳ね上げた。
「みだりに男に触るな」
そのとき、後ろから、別の声がした。
「……なにやってんだ。
暇なのか? この会社」
パンの入ったケースを抱えた成田が立っていた。
12
あなたにおすすめの小説
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
あやかし旅館、縁結びは四季ちゃんにおまかせ!!
八乙女 忍
キャラ文芸
僕の家は、昔から旅館をしていた。
その旅館には、座敷わらしが出ると言われている。
その座敷わらしを見ると、願い事が叶うと言われていた。
僕は、小さい頃からその座敷わらしと遊んでいる。
僕も年頃になり好きな子ができた。
小さい頃から座敷わらしと、遊んでいた僕の願い事は叶うのだろうか?
紅玉楽師は後宮の音を聞く 〜生き残りたい私の脱走計画〜
高里まつり
キャラ文芸
【耳のいい隠れ長公主】✕【したたかな美貌の文官】コンビが挑む後宮の陰謀!
片目が紅い娘・曄琳(イェリン)は訳あって後宮から逃走した妃の娘ーー先帝の血を引く、隠れ長公主。
貧民街で隠れて生活していたのに、ひょんなことから宮廷に舞い戻ってしまった曄琳は、生まれを秘匿し、楽師としてあらゆる音を聞き分けるという特技を活かしながら、宮廷からの脱走を目論んでいた。
しかしある日、後宮で起きた幽鬼騒動の解決に駆り出された先で、運命を狂わされてしまう。
利用できるものは利用します精神の美形の文官・暁明(シャオメイ)と、出生の秘密をなんとか隠して外に出たい曄琳。
二人が後宮での事件を追う中で、母や貴妃の死、過去の出来事が少しずつ絡んで、宮廷の陰謀に巻き込まれていく。契約じみた曄琳と暁明の関係も少しずつ、少しずつ、形を変えていきーー?
曄琳の運命やいかに!
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
OL 万千湖さんのささやかなる野望
菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。
ところが、見合い当日。
息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。
「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」
万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。
部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる