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万千湖と駿佑の日常
そこには、きっと……
しおりを挟むその日、万千湖はいつもより早く目を覚ました。
薄暗い部屋の中、横に寝ている駿佑に驚く。
何故、ここに課長がっ、と慌て、ベッドから飛び出そうとして、駿佑が自分の夫だと気がついた。
……慣れないな。
目が覚めたら、課長がいるの。
万千湖はまだ眠っている駿佑の顔をじっと眺めてみた。
綺麗な顔だな……と思ったあとで、万千湖は、はっとする。
私の寝起きっ、絶対に綺麗ではないっ。
慌ててベッドから出ようとしたが、ぐっと肩をつかまれた。
「待て。
何処に行く……」
いや、今日は平日。
仕事ですよっと思ったが、強い力でベッドの中に引っ張り戻される。
真横に駿佑の顔があった。
ひっ、逃げ出したいっ。
寝起きの私をそんな近くから見つめないでくださいっ、と思う万千湖に駿佑が言ってくる。
「まだ早いだろ。
もうちょっとここにいろ」
「え……で、でも……」
駿佑は万千湖を抱き寄せ、目を閉じた。
「……目が覚めたとき、お前がいないと。
全部夢だったかと思って不安になるから」
駿佑のぬくもりと鼓動がすぐそこにある。
万千湖は自らも目を閉じながら思っていた。
い、いいんでしょうか? こんな毎日。
……なんか幸せすぎてバチが当たりそうな。
そう思いながら駿佑の温かさに、またうとうととしていた万千湖は夢の中で、バチが当たっていた。
大量のジョウビタキが窓を叩き割ろうと突っ込んできて、大量の田中洋平と大量の田中洋平のおじいちゃんが玄関先で、謎のダンスを踊っていた。
「起きろ、万千湖っ」
と駿佑に怒鳴られ、目が覚める。
「遅刻するだろっ」
と理不尽に怒られ、
ええっ? 今日は私が先に起きてましたよねっ?
と思う。
課長の腕の中があったかすぎて、つい、うとうとしちゃったんじゃないですかっ、と思いながら、万千湖は反論してみた。
「課長が寝てろって言うからじゃないですかっ。
だから、私、バチが当たって、床一面に落ちてるまつぼっくりとどんぐりを踏んで足が痛かったんですよっ」
玄関先に押し寄せたダンス集団から逃げて、リビングに戻ると、まつぼっくりとどんぐりだらけだったのだ。
「……なんだかよくわからないが。
部屋は片付けろ」
そこにはきっとリスが住んでいる……と言われる。
いや、だから、夢ですよ、さすがに……と思いながら、万千湖は、のそのそ支度をはじめた。
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