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万千湖と駿佑の日常
……メリークリスマス
しおりを挟む今日は課長来ないのかな? と思いながら、万千湖はベッドで、うとうととしていた。
すると、ドアが音もなく開き、クリスマスが入ってきた。
……クリスマス。
いや、ロウソクを手にした人が入ってきた。
見ようによっては怖い状況だったのだが。
忍んでくるのは幽霊よりも駿佑の方が可能性が高いとわかっていたので、万千湖は安心感を持ってその光を見つめていたのだ。
万千湖の通っていた幼稚園では、クリスマス会では、みんながカマボコ板に釘を打ち、ロウソクを立てていた。
なんだかあれを思い出すなあ。
荘厳な感じがする。
いや、おそらく、十中八九、夜這いに来た人なんだが……。
なんか訊かなくてもいいかな~と思いながらも、万千湖は訊いてみた。
「あの、なんでロウソクなんですか?」
駿佑はモデルハウスのときから、この家にインテリアとして置いてあった気がする、ドライフルーツが埋め込まれた洒落たロウソクを吹き消し、サイドテーブルに置いた。
「キャンドルと言えよ。
ロウソク持って暗闇に立ってるとか、丑の刻参りみたいだろ」
そう言いながら、万千湖のベッドに入ってくる。
いや、丑の刻参りだったら、頭に突き立てないと……と思う万千湖に駿佑が言った。
「すまん。
お前との100年愛を見つめていて遅くなった」
何故、私も知らないところで、私との100年愛が育まれているのですか……。
「もう寝てたら、起こしちゃ悪いな、と思って。
そっとキャンドルのやさしい灯りでお前の寝顔を照らそうかと。
以前、強烈な登山用ヘッドライトを額につけて訪ねたら、お前、悲鳴を上げたからな」
「……あれは夢ではなかったのですね」
歯医者さんが夜中にやってきたのかと思いました……と言って、
「何故、歯医者さんがわざわざ夜中に治療しに来てくれる」
ともっともなことを言われてしまった。
「歯医者のコスプレでヘッドライトだったわけじゃなくて。
手が自由に使えるからヘッドライトだっただけだ」
「手が自由だとなにかいいことがあるんですか?」
真顔で訊いた万千湖に、駿佑は照れ、ちょっと迷って、
「……こういうことできるだろ」
と万千湖の頭を撫でてきた。
万千湖が笑うと駿佑が意外そうに訊いてきた。
「どうした? そんな嬉しそうな顔をして」
「いえ、課長に頭撫でられるの、なんか好きなんです」
「そんなものなのか?
じゃあ、お前、俺の頭も撫でてみろ」
「えっ?」
「撫でてみろ」
「いや、そんな恐れ多いっ」
いいからっ、と手をつかまれる。
そのまま無理やり頭を撫でさせられた。
「……別にときめかないな」
いや、そんな強引にワシワシやったんじゃ、人の手使って頭掻いてるのと変わりないからですよ……と万千湖は思っていた。
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