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ダイダラボッチはなんで課長に憑いてるんでしょうね
反省会だ!
しおりを挟む「ほう、そうか。
じゃあ、来週はお前はキャンプには行けないな」
帰りの車で総司はそう言ってきた。
スマホを開けてみたら、300件ものメッセージの中で、勝手に結婚することになっていた。
思わず、叫んでしまい、
「どうかしたのか?」
と訊かれた萌子は、まさか、
「課長と結婚する話になってます」
とも言えずに、
「……土曜に呑み会やるらしいです。
大学のときの友だちが」
と言ってしまったのだが。
ああ……言うのではなかったな、と萌子は激しく後悔していた。
いや、みんなにも会いたいんだけど、でも……、
と迷う萌子の横で総司はなにやら呟いている。
「来週は他のキャンプ場に行ってみようかと思ってたんだが。
久しぶりにひとりでやるか。
もともとソロキャンプを目指してたわけだしな。
それか、藤崎でも誘うか」
おのれ、藤崎~っ。
あっという間に私のポジションと入れ替わりおってっ。
消防士の霊が離れてすっきりした藤崎だったが。
今度は萌子に呪われていた。
「……そうなんですか、楽しそうですね」
ちょっと、しゅんとして萌子は言う。
まあ、私がついてくより、男同士の方が動ける幅も広がって、きっと楽しいよね。
……って、じゃあ、もしかして、私は二度と呼ばれないかもっ、と思ったときに、ちょうどアパートに着いていた。
駐車場を見、
「司さんはまだ来てないんだな。
荷物運ぶの手伝おうかと思ったんだが」
と言ったあとで、総司は沈黙する。
ふたりで黙って、アパートを見つめていた。
やがて、
「じゃあ、また」
と総司が言い、
「あ、ではまた。
失礼します」
と萌子が言って、車を降りた。
ありがとうございました、と萌子は頭を下げ、車を見送る。
……上がってお茶でも、なんて言えなかったな。
なんか恥ずかしいし。
今言ったら、お兄ちゃん来るまでお茶でも飲んで待っててください、みたいな感じになるし。
課長に荷物運ぶの手伝わせようとしてるみたいだもんな、と思ったとき、司からスマホにメッセージが入ってきた。
「車どうしようか」
いや、どうしようかって、持ってきてくれるんじゃなかったのか、と思いながら電話すると、
「総司はどうした」
と言われる。
「え? どうしたって?」
「一緒にいるんじゃなかったのか」
「課長なら、今、送ってくれて帰ってったよ」
「何故、帰らせる」
いや、何故、引き止めようとする、と思う萌子に司は、
「今、家族会議が行われたんだ。
ちょうど母さんたちも来たから」
とよくわからないことを言い出した。
なんの家族会議……と萌子が思っていると、
「車をいつ持っていくのがいいかについてだ」
と司は言う。
「すぐ持っていって、さっと荷物を戻しておくのが一番いいかと思ったんだが。
それだと総司に、お兄さん、車、なんのためにいるんだったんだと思われて、不自然だろう?」
いや、最初からなにもかも不自然ですが……。
「かと言って、妙な時間に持っていって、ふたりで部屋で語らっているときだったら邪魔になる」
いやあの、課長とふたりきりで部屋で語らう未来が私には想像できないんですが……。
例え、なにかの用事で課長がやってきたとしても。
語らうとかそういう甘い感じではなく。
一方的に課長が侯爵砲を放ちつづけて終わりそうだ。
「いっそ、朝、俺が早起きして、車持ってって、そっと置いて帰ろうかとも思ったんだがな。
荷物は総司に出勤前に上げてもらえばいいだろ?」
……何故、課長が朝までうちにいる設定なのですか。
「そんな感じに我々は熟考を重ねた結果。
やはり、お前にそっと持っていくタイミングを訊くのがいいだろうという話になったんだが」
と言う司に、
「そもそも熟考の必要もないよ、お兄ちゃん。
課長、さっさと帰っちゃってるし」
と萌子は答え、
「何故、そこをお前の魅力で引きとめんっ」
と怒られる。
いや、そんなないもので引き止めるのは不可能ですが……。
「いやいや、そもそも、なんで、そんな押せ押せなの。
課長の意見も聞かずに」
「総司の意見なんて聞いても、断られるに決まってるだろ?」
おい、兄よ……。
「まあ、お前と総司じゃどうかなとは思うんだが。
ばあさんも、なんか似合わなくもない、と言っているし。
見た目だけなら、似合わなくなもない、とじいさんも言っている」
おじいちゃんもおばあちゃんもなんとかお気に入りの課長とくっつけようとしているようだが。
いや、私なんかじゃ無理なのでは。
そもそも課長は私のことをウリ二号くらいにしか思ってない気がする……。
でもまあ、だからこそ、気軽に泊まりがけのキャンプにも誘ってくれてるんだろうな~と寂しく思う萌子に、司が言ってくる。
「総司いないのならしょうがないな。
今から車持ってってやるよ。
ばあさんたちも乗せてくから、反省会だ」
「い、いや……じゃあ、持ってこなくていいよ。
仕事は歩いていけるし」
そう言い、慌てて断った。
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