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ダイダラボッチはなんで課長に憑いてるんでしょうね
願望が喉まで迫り上がってきてしまったっ
しおりを挟む「課長、長谷川さんが旅費日当の紙が出てないって言ってましたけど」
日曜だけでも来いよと言ってくれないかなあ。
「課長、回覧です」
日曜だけでも来いよと……。
「課長、日……
轟印刷の西村様からお電話です」
しまったっ。
願望が喉まで迫り上がってきてしまったあああっ。
日……なんだ?
という目でこちらを見ながら、総司は萌子が回した電話に出ていた。
駄目だ。
このままでは、いつか口から出る、と萌子は、
「いや、出せよ」
と藤崎が言ってきそうなことを思っていた。
課長、日曜、私も行きたいんですけど。
そうか。
じゃあ、来い、で終わりそうな気はするのだが。
課長が男二人でキャンプを楽しもうとか思っていたら、悪いしな、と萌子は迷う。
だが、悪いしな、と思っているわりには。
「日曜だけでも来いよ」
と課長の口を操って言わせたい、とまで萌子は思い詰めていた。
「どしたの、萌子。
表情暗いよ」
仕事に集中できないので切り替えようと、萌子は自動販売機のところに行った。
気分転換にスカッと爽やかなものでも、と思い眺めていると、通りかかっためぐが声をかけてきたのだ。
「いや、課長がちょっと……」
「なに? 喧嘩でもしたの?」
「そうじゃなくて。
日曜誘ってくれないかなーと思って」
「……日曜ヒマなんです。
誘ってくださいって言えば?」
あっさり、めぐはそう言ってくる。
「すごいね、ケメちゃん。
そこで言えるタイプ?」
「いや、言えないタイプ。
でも、今、あんた見てて、言えばいいのに、断らないよ、きっと~って思っちゃったわ。
自分のときもそんなものなのかもね」
「ありがとう、ケメちゃん」
と手を握ると、めぐは握られたまま、
「ケメちゃん連呼されると、感謝されてる気がしないんだけど」
と言ってくる。
「じゃあ、今日から、めぐって呼ぶよ」
「……いや、ケメでいいよ。
それはそれでなんか落ち着かないから」
と言ってくるめぐは、家でも、ケメちゃんと呼ばれているらしい。
友だちがみんなそう呼ぶので、親もつられているようだ。
「じゃあ、私のことは、ウリ坊でいいよ」
「長いからヤダ」
と言うめぐに、
「ありがとう。
自分から課長に、日曜は暇なんで、日曜だけでも行ってもいいですかって訊いてみるよっ」
と言うと、
「朝食から参加したいなら、朝早く来いよ」
と後ろから声がした。
振り返ると、総司が立っていた。
自動販売機になにか買いに来たところだったらしい。
ひっ、とめぐの手を握ったまま固まっていると、
「行きたいのなら、なんですぐ言ってこなかったんだ」
と総司は言ってくる。
「いえあの、藤崎が強い戦力となった今、私はもうなんのお役にも立てないので。
誘ってくださいというのもおこがましいかと……」
「いや、そもそもお前は最初から、なんの役にも立ってないから。
遠慮せず、来い」
それもどうなんですか、とめぐは苦笑いしていたが、
「はいっ」
と萌子は尻尾を振る犬のごとく、ご機嫌で返事をした。
総司は渋い顔をし、顎をさすりながら呟く。
「いやまあ、そもそも、俺自身がまだ初心者だからな。
藤崎の実践を伴う技術に比べたら俺なんて」
あいつの言葉には重みがある、という総司に、うっかり、
「いやあ、課長の小ネタもなかなかだと思いますよ」
と言ってしまい、
「……小ネタ」
と呟く総司の前から、めぐと手を取り合い、萌子は飛んで逃げた。
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