侯爵様と私 ~上司とあやかしとソロキャンプはじめました~

菱沼あゆ

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ダイダラボッチはなんで課長に憑いてるんでしょうね

なんかボロボロなんですよ……

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 なにが、課長の気持ちはよくわからなくても、自分の気持ちならわかるだろ、だ。

 自分の気持ちがわからないのに、俺は、なに偉そうに言ってんだ、と思いながら、藤崎は、おのれの部署に向かい、渡り廊下を歩いていた。

 花宮が課長好きなのは確実だろう。

 お前はもう、リンゴをかじったあと……

 というか、木に登ってもぎとって来そうな勢いで課長を好きになっている。

 木の下で、
「それまだ、毒塗ってない~っ!」
と叫ぶ魔女の声に耳も貸さずに。

 わかっているのに、花宮にハッキリ教えるのが嫌なのは何故なんだろうな。

 その理由はあまり考えたくないな、と思った藤崎は、めぐたちと話しながら先に戻っていった萌子の部署の前を足早に通り抜ける。

 そのままデスクに向かおうとしたが、ひとつ気になることがあった。

 足を止め、素早く振り向いてみる。

 ところで、なにが憑いてるんだろうな、と思ったからだ。

 だが、なにも見えなかった。

 花宮の気のせいだろう……と無理やり結論づけ、スチール棚の横を歩いていたが、まただまし討ちのように振り返ってみる。

「なにやってんの? 藤崎」
と書類を手にやってきためぐに言われただけで、結局、なにも見えなかった。
 



 ボロボロな自分が気になる……と萌子は自分のロッカーについている鏡で顔を眺めていた。

 今まで、キャンプグッズの店を見たついでとかで、食事に行くことはあったが。

 こんな風に、ちゃんと誘われていったことはなかった。

 なんとなくデートっぽい。

 いや、課長はデートだとか思ってないかもしれないけど。

 そうやって意識すると、この仕事終わりのボロボロの顔はな~と気になりはじめたのだ。

 そのとき、
「お疲れっ」
賀川多英かがわ たえがやってきた。

「うわ、どうしたんですかっ」
とそちらを見ると、

「いや、デートなんでしょ。
 化粧直してあげるわよ」
と言ってくる。

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