85 / 101
これは、パクチーによる暴力だ
見つけると、いいことあるらしいですよ?
しおりを挟む
……酔いつぶれてあげるべきだったろうか。
酔って翔平に絡んだ挙句、カーペットに倒れて寝ている芽以の父を見ながら、逸人は思っていた。
なんとか自分を酔わそうとしたようだが、案の定、先に倒れてしまったのだ。
「部屋までお連れしましょう」
と芽以の父の前に片膝をつくと、聖が、
「ああ、いいいい。
俺が運ぶから」
と言う。
父親の腕をつかみながら、
「お前は、芽以を連れて帰ってやれ。
……疲れ果ててるだろうから」
と芽以を見た。
芽以は翔平に上に乗られたまま潰れ、
「……ヒヒン」
と悲しく鳴いていた。
ほぼ百人一首のあと、ずっと翔平におうまさんをさせられていたのだ。
「帰るぞ、芽以」
「ヒヒン……」
ああ、楽しかったけど。
なんか仕事の千倍疲れたぞ、と思いながら、芽以は逸人と夜道を帰っていた。
短い橋の上の風がちょっと冷たい。
もう遅い時間なので、車はまだ行き交っているが、歩く人はさすがにもう少なかった。
「子どもの相手するって体力いりますよね~。
親って大変なんだなーって最近思います」
最近、特にそういう風に感じ始めたのは、やはり、結婚とか、子どもを育てるということが、身近になってきているからだろうか、と思ったあとで、逸人を見上げる。
だが、視線に気づき、逸人がこちらを見下ろしてきたので、つい、目をそらしてしまった。
ま、恐れ多いな。
自分がこの人の子どもを産んで育てるとか、と思う。
私の血の入った子どもが、そう優秀とも思えないから、逸人さんに申し訳ない感じがするし。
確か、この人、凄い偏差値とってたな、と思いながら、芽以は逸人を見上げ、訊いてみた。
「あのー、昔、偏差値80越えとかしてましたよね?
あういうのって、どうやったらできるんですか?」
ん? とこちらを見た逸人は、
「間違わなければいいんじゃないか?」
と言ってくる。
えーと……。
ま、そりゃそうなんですけど。
困ったな。
つづきの言葉が思いつかないんだが、この凡人には……。
だが、逸人は、前を見たまま、
「わからない問題がないよう、日々、努力するだけだ」
と言ってくる。
そうそう。
この人、努力を尊ぶ人だったな、と思い出す。
だが、日々、努力したところで、全員が達成できるわけでもないから。
やはり、もともとの頭もいいんだろうが。
それでも、こういうことを言う逸人さんが好きだな、と芽以は思っていた。
自分はやらなくても出来るとか言う人より、私は好きだ。
でも、そういえば、圭太も実は、すごく努力する人だったな、と思い出す。
奴は、やってるのが見え見えでも、やってない、とうそぶく奴だったが。
まあ、それはそれで可愛らしいが、と思い出し、芽以は笑う。
そして、気づいた。
圭太のことも、あのクリスマスイブの夜のことも、思い出しても、なにも胸が痛まない自分に。
そういえば、いつの間にか、このコートにも迷わず手が通せてるし、とイブのためにとっておいたピンクのコートを着た胸に、そっと触れてみる。
あの日と変わらない柔らかい手触りだった。
だけど、日向子さんが言うように、私が最初から逸人さんを好きだったというのなら。
圭太に対する気持ちはやはり、恋ではなかったのだろうから。
胸が痛んでいたのは、ただ、ずっと側に居た親友と、もう会えなくなってしまうかもしれないという寂しさだったのかもしれないが。
やっぱ、男の子の友だちって、結婚しちゃったら、なかなか会えなくなっちゃうもんな。
そういう意味でも、逸人さんと結婚できてよかったな。
ずっと一緒に居られるし。
……いや、まだしてないようだけどさ、と思いながら、逸人を見上げると、逸人が、なんだ? という目で見下ろしてきた。
そのとき、黒に黄色のナンバーの運送業社の車が横を走っていった。
「あ、クロッキー」
と芽以は笑って声を上げる。
「昔探しましたよね。
三台見つけると、いいことがあるって言って。
でも、翔平がこの間、十五台見つけないとって言ってて、増えすぎ――」
話している途中で、逸人がいきなり顎に手を触れてきた。
えっ? と思っている間に、芽以の顎を持ち上げ、口づけてきた。
酔って翔平に絡んだ挙句、カーペットに倒れて寝ている芽以の父を見ながら、逸人は思っていた。
なんとか自分を酔わそうとしたようだが、案の定、先に倒れてしまったのだ。
「部屋までお連れしましょう」
と芽以の父の前に片膝をつくと、聖が、
「ああ、いいいい。
俺が運ぶから」
と言う。
父親の腕をつかみながら、
「お前は、芽以を連れて帰ってやれ。
……疲れ果ててるだろうから」
と芽以を見た。
芽以は翔平に上に乗られたまま潰れ、
「……ヒヒン」
と悲しく鳴いていた。
ほぼ百人一首のあと、ずっと翔平におうまさんをさせられていたのだ。
「帰るぞ、芽以」
「ヒヒン……」
ああ、楽しかったけど。
なんか仕事の千倍疲れたぞ、と思いながら、芽以は逸人と夜道を帰っていた。
短い橋の上の風がちょっと冷たい。
もう遅い時間なので、車はまだ行き交っているが、歩く人はさすがにもう少なかった。
「子どもの相手するって体力いりますよね~。
親って大変なんだなーって最近思います」
最近、特にそういう風に感じ始めたのは、やはり、結婚とか、子どもを育てるということが、身近になってきているからだろうか、と思ったあとで、逸人を見上げる。
だが、視線に気づき、逸人がこちらを見下ろしてきたので、つい、目をそらしてしまった。
ま、恐れ多いな。
自分がこの人の子どもを産んで育てるとか、と思う。
私の血の入った子どもが、そう優秀とも思えないから、逸人さんに申し訳ない感じがするし。
確か、この人、凄い偏差値とってたな、と思いながら、芽以は逸人を見上げ、訊いてみた。
「あのー、昔、偏差値80越えとかしてましたよね?
あういうのって、どうやったらできるんですか?」
ん? とこちらを見た逸人は、
「間違わなければいいんじゃないか?」
と言ってくる。
えーと……。
ま、そりゃそうなんですけど。
困ったな。
つづきの言葉が思いつかないんだが、この凡人には……。
だが、逸人は、前を見たまま、
「わからない問題がないよう、日々、努力するだけだ」
と言ってくる。
そうそう。
この人、努力を尊ぶ人だったな、と思い出す。
だが、日々、努力したところで、全員が達成できるわけでもないから。
やはり、もともとの頭もいいんだろうが。
それでも、こういうことを言う逸人さんが好きだな、と芽以は思っていた。
自分はやらなくても出来るとか言う人より、私は好きだ。
でも、そういえば、圭太も実は、すごく努力する人だったな、と思い出す。
奴は、やってるのが見え見えでも、やってない、とうそぶく奴だったが。
まあ、それはそれで可愛らしいが、と思い出し、芽以は笑う。
そして、気づいた。
圭太のことも、あのクリスマスイブの夜のことも、思い出しても、なにも胸が痛まない自分に。
そういえば、いつの間にか、このコートにも迷わず手が通せてるし、とイブのためにとっておいたピンクのコートを着た胸に、そっと触れてみる。
あの日と変わらない柔らかい手触りだった。
だけど、日向子さんが言うように、私が最初から逸人さんを好きだったというのなら。
圭太に対する気持ちはやはり、恋ではなかったのだろうから。
胸が痛んでいたのは、ただ、ずっと側に居た親友と、もう会えなくなってしまうかもしれないという寂しさだったのかもしれないが。
やっぱ、男の子の友だちって、結婚しちゃったら、なかなか会えなくなっちゃうもんな。
そういう意味でも、逸人さんと結婚できてよかったな。
ずっと一緒に居られるし。
……いや、まだしてないようだけどさ、と思いながら、逸人を見上げると、逸人が、なんだ? という目で見下ろしてきた。
そのとき、黒に黄色のナンバーの運送業社の車が横を走っていった。
「あ、クロッキー」
と芽以は笑って声を上げる。
「昔探しましたよね。
三台見つけると、いいことがあるって言って。
でも、翔平がこの間、十五台見つけないとって言ってて、増えすぎ――」
話している途中で、逸人がいきなり顎に手を触れてきた。
えっ? と思っている間に、芽以の顎を持ち上げ、口づけてきた。
1
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた
てるぽに中将
SF
20××年、突然に世界中で同時に「30日後に恐竜を絶滅させた隕石よりも何倍も大きいものが衝突する予測」があり、「この隕石によって地球上のすべての人間が消滅する」との発表があった。
最初は誰もが半信半疑だった。映画の中の世界だと思った。だが、徐々に秩序を失い周りが変化していくうちに自らもその世界の変化に対応しなくてはいかなくなっていくのだった――。
読者の皆さんも「一番大切なもの」は何か? それもついでに考えていただければと思います。
※小説家になろう にて「中将」の名前で同じ作品を投稿しています。
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について
古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。
すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!?
「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ?
俺、君と話したことも無いんだけど……?
カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる