同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ

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おまけ めぐる&田中のその後――

今度のお菓子はこれでいきますっ!

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「急に第三局のお菓子、頼まれたんですよ。
 パティシエの方がよそに引き抜かれたとかで」

 その日。
 めぐるは食堂のカウンターでいろいろアイディアを書いたメモ帳を見ながら唸っていた。

「……対局があるホテルはどこも呪われているのか」
とみんなと夕食をとっていた田中が呟く。

「どれにしようかな。
 最近、3日にいっぺんくらいしかいいのができなくて」

 遅い時間だったので、客が少なく。
 カウンターで勉強していた雄嵩が、だからそれ、どんなスランプだよ、という顔をしていた。

「それ、アイディアメモですよね。

 めぐる先生のなら、どれでも良さそうだから、ぱっと開いたページのにしたらどうですか?」

 まだジュウジュウ音がしている熱々の焼きサバ定食を食べながら、若林がそんなことを言う。

「そうですね。
 じゃあ、はいっ」
とめぐるは適当なページを開いてみた。

「『賞味期限20秒のチーズケーキ』」

「なんだそれは……」
と田中と黒木田が見、

「……スフレとかじゃなくて?」
とルカが言う。

「できたては天使の羽根のように軽くて、ふわふわなんですけど。
 20秒以内に食べないと真っ平になるんです」

「チーズケーキでそれは失敗作では……?」
と健が言い、

「なんで、おやつ時間にまで、カウントとられないといけないんだ」
と田中が言う。

 ……まあ、確かに、なにも癒されなさそうですよね、と思いながらもめぐるは言った。

「でも、できたてはほんとうに美味しいんですよ。
 自分で言うのもなんなんですが。

 あ、そうだ。
 食べ遅れないように、横で誰かにカウントとってもらったらどうでしょう。

 20秒……

 1、2……」

 田中が、
「やめろ。
 お前に言われるとまた『にーろくふ』の呪いにかかるからっ」
と文句を言い、

「ぜひ、その呪い、かけてやってくれ、めぐるん」
と黒木田が言う。

 みんなが笑う中、雄嵩がいつの間にかスマホを取り出し、ブログになにかを打ちはじめた。

 ひょいとめぐるは覗き込む。

「あっ、またなんか私のしょうもない話書いてるっ」

 貸しなさいっ、とスマホを取り上げようとすると、雄嵩はカウンターから逃げ出した。

 みんなの笑い声が響く中、

「はい、オムライス上がったよー」

 百合香の張りのある声が厨房から響き渡る。

「はーい」
と慌てて返事をしながら、めぐるは厨房に駆け込んだ――。


                  完

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