【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

文字の大きさ
51 / 321
一年生・夏の章

忍び寄る影⑦

しおりを挟む


 ルイはハッとし慌てて片膝を付き俯くと、リヒトのただならぬオーラに気圧されそうになるのを耐える。セオドアも同じように片膝を付いて俯き、状況を理解出来ないまま冷や汗をかいた。


「ルイ君……セオ君……!」


 フィンは二人の変わりように目を見開き驚きの表情を浮かべる。



「ご無礼を。ご挨拶が遅れました。南部の統率を務めるリシャール侯爵の嫡子、ルイと申します」


 王族特務・大魔法師に対する敬意を示し挨拶をするルイ。


「王都にて魔法薬と魔法医術の権威を持つ、フルニエ伯爵の四男、セオドアと申します」


 セオドアも同じように挨拶をすると、ボーッと立っているフィンを見て青ざめた表情を浮かべた。


「フィンちゃん、何してんの!とりあえずこっちきて挨拶しないと!」


 状況が理解出来ていないセオドアは、小さく声を出してフィンに手招きをする。


「う、うん!(あれ、セオ君すごい制服がぼろぼろ……)」


 フィンは王都の慣わしの一種かと思い、慌ててセオドアの横に行こうとするも、リヒトはため息を吐いてそれを静止し、「君はいいんだよ」と囁く。



「フィンが世話になっている。後見人のリヒト・シュヴァリエだ」


 リヒトの言葉に、ルイとセオドアは目を見合わせ目をひくつかせる。



「「(大魔法師が後見人なんて聞いてねぇ~!!)」」


 ルイとセオドアはバッとフィンに視線を送ると、フィンはビクッと身体を震わせわなわなと震えた。


「ご、ごめんねぇ……二人には言おうと思ってたんだけど、そんな話にもならなかったからぁ……」


 フィンが困り笑いをすると、横からリヒトが口を開く。


「もう顔を上げて立ってくれるか。君らとは少々と話がしたいが、今日は諸々の処理で無理そうだ。明日の午後十四時、シュヴァリエ家の本邸に来てもらうことは可能だろうか」


 リヒトは淡々と真顔でそう語ると、二人はゆっくりと立ち上がり、胸に手を当て王都式の敬礼をする。



「「はい。お伺い致します。お招き頂き、光栄でございます」」


 貴族としての二人の態度を初めて見たフィンは、目を輝かせた。



「…………」



 リヒトは敬礼する二人の姿を見る。
 ルイは石化の影響で靴と制服が劣化しているのと、少々出血しているのが確認できた。セオドアに至っては、服がボロボロになっており、手には軽い火傷の痕が残っている。


 フィンはハッとした表情を浮かべ、慌てて二人に駆け寄った。
 その間、リヒトは三体の伝書梟を召喚すると、魔法をかけ、エリオットとアレクサンダー、そしてエヴァンジェリン宛に飛ばす。



「セオ君!おてて怪我してるし、制服もぼろぼろ……。ルイ君も、足怪我してるよね!?」


 フィンは涙を溜めながら声をかける。



「いや、平気だ。お前こそ大変だったみたいだが、怪我はないのか?見たところ大魔法師様が助けてくれた、ってことで良いんだよな」


 ルイの問いかけに、フィンは縦に大きく頷く。


「フィンちゃん、ごめんね。すぐに行けなくて。俺らが追ったの、ギュンターの偽物っぽくてさ」


 セオドアの言葉に、フィンは首を横に振った。


「僕、ちゃんと言う通りに真っ直ぐ帰れば良かった。ちょっと怪しいなって思ったけど、結局ついてっちゃって、僕のことなのに、二人に怪我させちゃうし……」



 落ち込むフィンの姿に、二人はふぅっと息を吐き、笑いながらフィンの頭を撫でた。


「いーんだよそんなこと。先に気付いたのは俺らだったし、出来ればお前のこと巻き込まず終わらせようと思ったけど……なんか訳アリっぽいな」


 ルイはリヒトが王族宛に梟を飛ばしていたのを見抜いており、フィンのストーカーという枠組みから外れた話だと気付く。



「フィンちゃんにはさ、笑って過ごしてほしいんだ。実は今までも、なんか変なのが付き纏ってたのをルイと一緒に追っ払ってて。ただ今回はさ、もうちょっと色々教えてあげるべきだった!ごめんっ!」


 セオドアは顔の前で手を合わせ謝罪をする。


「そうだったんだ……僕何にも知らなくて。ありがとう、二人とも」


 フィンはニコッと優しく笑みを浮かべて二人を見上げた。
 ルイはぽりぽりと頬を掻き、照れ隠しをする。


「ま、友達なんだから、こんなの当たり前だ。あーでもセオがストーカーされてても無視するけどな」

「ヒドイ!ルイのひとでなし!」

「お前の場合、ストーカーにも愛想良くしそうだな」

「なっ、俺を八方美人みたいに!」

「ははっ、違うのか?」


 二人の明るいやり取りを見ていたフィンは、安心したようにぽろぽろと涙を流した。


「どうした!?」
「どしたのフィンちゃん!」


 二人はギョッとした表情を浮かべ、慌ててフィンの顔を覗き込む。



「ぼく……二人と友達になれて本当によかった」


 か細い声でそう言ったフィンに、二人はキュンっとときめき顔を赤らめる。


「そういうの、卒業の時に言えよ……恥ずいだろ」


 ルイはかぁーっと顔を赤らめ、セオドアはふにゃっと溶けたように笑みを見せる。


「フィンちゃんって本当、そういうところが良いよね。ルイにも見習ってほしいねー」

「なに!お前こそ成績上げろよボケ、俺らの足元にも及んでないぞ!」

「ぬぁ!?!?今それ関係あるかー!?」



 三人の戯れ合う姿をじっと見ていたリヒトは、クスッと笑みを浮かべ、安心したように視線を落とす。
 
 王族特務機関に所属し、敵対している国からスパイを送られ命を狙われる事が多い分、周囲に迷惑をかけないようにしてきた。しかし、予想通りフィンを危険に晒してしまい、フィンの周囲にもそれが及んでいる。

 自分が後見人だと分かってもなお、フィンに友人として接する彼らを見たリヒトは、ある決心を固め口を開いた。



「取り込み中のところ申し訳ないが、状況把握のため、君らの記憶も見させてもらう。また明日詳しく話すが、これは敵対する国からの攻撃と関係がある。君たちにも協力を願いたい」



 リヒトは真顔で口を開き、二人に近づく。



「大魔法師様の命とあらば、いくらでも協力致します」

「右に同じです」


 リヒトはルイとセオドアの額に同時に触れると、アカシックレコードを発動させる。それは瞬時に終わり、リヒトはすぐに手を離した。



「やはり、ドラゴンの技を使ったか。石化に竜の息吹。それを他者の身体を使って……」



 リヒトはふむふむと一人で声を発しては一人で納得をし、やがて思い出したように突然目を見開くと、二人を睨み付ける。



「「!?」」


 ルイとセオドアは身構えたように身体を硬直させ、顔を強張らせた。


しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

お疲れポメラニアンの俺を癒したのは眼鏡イケメンの同期だった

こたま
BL
前田累(かさね)は、商社営業部に勤める社員だ。接待では無理してノリを合わせており、見た目からコミュ強チャラ男と思われているが本来は大人しい。疲れはてて独身寮に帰ろうとした際に気付けばオレンジ毛のポメラニアンになっていた。累を保護したのは普段眼光鋭く厳しい指摘をする経理の同期野坂燿司(ようじ)で。ポメラニアンに対しては甘く優しい燿司の姿にびっくりしつつ、癒されると…

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました

水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。 その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。 整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。 オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。 だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。 死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。 それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。 「見つけた。俺の対になる存在を」 正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……? 孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。 星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...