【完結】フェリシアの誤算

伽羅

文字の大きさ
38 / 98

38 説明(ハミルトン視点)

しおりを挟む
 車椅子が完成したその日、お祖父様は夕食を僕達と一緒に摂る事になった。

 こうしてお祖父様と同じテーブルで食事をするのはいつぶりだろうか?

 ジェシカが車椅子などという物を考えてくれなければ、もう二度とこんな時は訪れなかったかもしれない。



 翌日、ジェシカと一緒に車椅子のお祖父様と庭を散歩した。

 楽しそうに笑うジェシカを微笑ましく見つめながら、この後は何をしようかと考えていた。

 また一緒に買い物をするのもいいかもしれないな。

 散歩を終えて玄関ホールに戻り、ジェシカに声をかけようとしたその時、玄関が開いてユージーンが入って来た。

 その後ろを慌てたような表情のモーガンが追いかけている。

 …何だ?

 今日来るとは聞いていないぞ。

 ユージーンは僕をチラリと一瞥した後、ジェシカに向かって笑顔を振りまく。

「君がフェリシアかい? 迎えに来たよ、僕の妹」

 …は?

 今、ジェシカをフェリシアと呼んだのか?

 おまけに言うに事欠いて「僕の妹」だって?

 それに迎えに来たとはどういう事だ?

 ジェシカは声も出せずに固まっている。

 ここは僕が助けてやらないと!

「ユージーン! いきなり現れて何を言っているんだ? ジェシカが君の妹だと? どうしてそんな話が出てくるんだ?」

 ジェシカを僕の後ろに庇うようにユージーンの前に立ち塞がると、ユージーンはそんな僕を見てニヤリと笑う。

「ユージーン。今、お前はジェシカをフェリシアと呼んだな? 一体どういう事か説明してくれんか?」

 お祖父様も車椅子に座ったまま僕の隣に並んでジェシカをユージーンから遠ざけようとしている。

 ユージーンはジェシカが実はフェリシアと言う名前で、国王陛下の恋人だった女性が産んだ娘だと言い出した。

 そしてあろうことか、ジェシカ、いやフェリシアを王宮に連れて行くと言うのだ。

 玄関ホールで押し問答している僕達をなだめたのは執事のモーガンだった。

 モーガンはいつの間にか応接室の準備を整えて話し合いの場を設けてくれた。

 おまけに母上までもが呼ばれて来るなんて、有能過ぎるだろう。

 その場で改めてユージーンはフェリシアについての話をした。

 本物のジェシカは既に亡くなっていて、フェリシアも友人のジェシカの死を受け入れられなかったらしい。

 弁護士のベイルにも言いそびれてしまったそうだ。

 この屋敷に来て本当の事を打ち明けようとしたのに、僕が照れ隠しとはいえ少しきつい事を言ってしまったせいで言えなかったんだな。

 泣き出したフェリシアを抱きしめたかったけれど、流石にそれは出来なかった。

 お祖父様がフェリシアにお礼を言うのを聞きながら、僕は他の事を考えていた。

 今まではフェリシアは平民だと思っていたから、結婚するのに身分差があるから難しいかもしれないと思っていた。

 しかし、本当にフェリシアが陛下の娘ならば、僕と結婚するのに何の支障もない。

 むしろ諸手を上げて歓迎されるんじゃないのだろうか。

 そんな事を考えているとユージーンが僕を見てまたもやニヤリと笑う。

 …何だ?

 何を企んでいる?

 その理由はすぐに判明した。

 フェリシアを王宮に連れて帰ると言うのだ。

 確かに陛下の娘であれば王女という立場であり、王宮に行くのは当然だろう。

 だが、せっかくこの屋敷で一緒に暮らしているのに、ユージーンに掻っ攫われたくはない。

「ちょっと待て、ユージーン! フェリシアが君の妹だとどうして断定出来るんだ? ただ陛下に似ているだけかもしれないだろう?」

 何とかフェリシアが王宮に行くのを阻止しようとするが、ユージーンはそんな僕を見て楽しそうに笑う。

 こいつ、僕がフェリシアの事を好きなのを知っていて、わざと邪魔をしようとしているな。

「仕方がない。それならばハミルトンも一緒に来い。フェリシアが父上の娘だと証明をしようじゃないか」

 ユージーンの奴、随分と自信満々だな。

 どうやってフェリシアが陛下の娘だと証明するんだ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

処理中です...