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42 国王の決定
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国王陛下がテーブルを回って私の所に来ようとするのを宰相であるブライアンが押し留めている。
「陛下、落ち着いてください。どうしてフェリシア様に名前で呼ばれたいのですか?」
国王陛下は少しムッとした顔で仕方がなさそうにまたソファーに腰を下ろした。
また抱きしめられずに済んで私はホッと安堵の息を吐く。
「フェリシアの声がアイリスの声にそっくりなのだ。だからもう一度あの声で私の名前を呼んでもらいたいと思った。何しろいきなり私の前から姿を消したのだからな。それもこれもあの女が…」
国王陛下はそこでユージーンの顔を見てハッとしたように口をつぐんだ。
何故、言いかけて止めたのかしら?
不思議に思っていると、フッとユージーンが小さく笑った。
チラリと顔を見ると何処か醒めたような視線を国王陛下に向けている。
「今更気を遣っていただく必要はありませんよ。私にとっても母上は『あの女』に過ぎませんからね。つまり母上が何かしたせいで父上と彼女は引き裂かれたという事なんですね。お腹の中にフェリシアを宿したままで…」
ユージーンの言葉はあまりにも衝撃的だった。
実の息子にまで『あの女』呼ばわりされるなんて、王妃様はユージーンに対してどんな態度を取っていたのかしら?
「…いや、まあ…。私もまさかアイリスが身ごもっていたとは知らなかった。ソフィアが知っていたかどうかは今となってはわからないがな」
少し重たい空気が辺りを包む中、それを振り払うようにブライアンがひときわ明るい声を出す。
「とにかく、フェリシア様が陛下の娘だとわかりましたので、王宮での受け入れ体制を整えましょう。フェリシア様もそれでよろしいですね?」
出来る男の笑顔の破壊力は半端ないわね。思わず頷きそうになっちゃったわ。
だけど、私が返事をするよりも先にハミルトンが待ったをかけた。
「ちょっとお待ちください。フェリシアが王女様である事はわかりましたが、一旦アシェトン公爵家に戻らせてください。お祖父様にきちんと挨拶をしなければなりませんから。ユージーンもそう思うだろう?」
ハミルトンはユージーンに同意を求めたけれど、ユージーンは素知らぬ顔をハミルトンに向ける。
「僕の妹だと判明したんだから、このまま王宮に留まるのが普通だろ? わざわざまたアシェトン公爵家に戻らなくてもいいじゃないか」
「ユージーン! お前もさっきのお祖父様とのやり取りを見ただろう? お祖父様もここに来たがったけれど、車椅子を馬車に乗せられないから断念したんじゃないか!」
せっかく収まったと思ったのに、またもやハミルトンとユージーンが言い争いを始めてしまったわ。
幼馴染で仲が良いのかと思いきやお互いライバル視している所があるのかしら。
そこへ割って入ったのが国王陛下だった。
「ハミルトン、今車椅子と言ったか? それは一体何だ? それに叔父上は叔母上を亡くされてから臥せっていると聞いたのだが、回復されたのか?」
お祖父様の事は国王陛下の耳にも入っていたみたいね。
いくら叔父とは言っても一国の国王がそうそうお見舞いになんて出かけられないのかもしれないわ。
「陛下、車椅子はここにいるフェリシアがお祖父様の為に開発してくれたんです。お祖父様はフェリシアが我が家に来てから随分と元気になりました。このままフェリシアが王宮に留まってしまうと、お祖父様の具合がまた悪くなってしまわないかと心配です。ユージーン、そうは思わないか?」
「車椅子は僕も見ました。まるで小さな馬車に乗っているようでしたよ。しかし、あれをフェリシアが開発したとは初耳だな。どうして教えてくれなかったんだい?」
またもや私を挟んでハミルトンとユージーンが火花を散らし始める。
そんなに喧嘩がしたいのなら何処か他所へ行ってやってくれないかしら。
「回復したばかりの叔父上がまた臥せってしまうのは忍びないな。それに受け入れ体制を整えるのにも時間がかかるだろう。仕方がない、一度アシェトン公爵家に戻りなさい。けれど明日には必ず王宮に戻るように、いいね、フェリシア」
国王陛下の決定で、私は明日には王宮に居を構えるのが確定した。
この前まで下町で暮らしていた私が王宮に住むようになるなんて、訳が分からないわ。
「陛下、落ち着いてください。どうしてフェリシア様に名前で呼ばれたいのですか?」
国王陛下は少しムッとした顔で仕方がなさそうにまたソファーに腰を下ろした。
また抱きしめられずに済んで私はホッと安堵の息を吐く。
「フェリシアの声がアイリスの声にそっくりなのだ。だからもう一度あの声で私の名前を呼んでもらいたいと思った。何しろいきなり私の前から姿を消したのだからな。それもこれもあの女が…」
国王陛下はそこでユージーンの顔を見てハッとしたように口をつぐんだ。
何故、言いかけて止めたのかしら?
不思議に思っていると、フッとユージーンが小さく笑った。
チラリと顔を見ると何処か醒めたような視線を国王陛下に向けている。
「今更気を遣っていただく必要はありませんよ。私にとっても母上は『あの女』に過ぎませんからね。つまり母上が何かしたせいで父上と彼女は引き裂かれたという事なんですね。お腹の中にフェリシアを宿したままで…」
ユージーンの言葉はあまりにも衝撃的だった。
実の息子にまで『あの女』呼ばわりされるなんて、王妃様はユージーンに対してどんな態度を取っていたのかしら?
「…いや、まあ…。私もまさかアイリスが身ごもっていたとは知らなかった。ソフィアが知っていたかどうかは今となってはわからないがな」
少し重たい空気が辺りを包む中、それを振り払うようにブライアンがひときわ明るい声を出す。
「とにかく、フェリシア様が陛下の娘だとわかりましたので、王宮での受け入れ体制を整えましょう。フェリシア様もそれでよろしいですね?」
出来る男の笑顔の破壊力は半端ないわね。思わず頷きそうになっちゃったわ。
だけど、私が返事をするよりも先にハミルトンが待ったをかけた。
「ちょっとお待ちください。フェリシアが王女様である事はわかりましたが、一旦アシェトン公爵家に戻らせてください。お祖父様にきちんと挨拶をしなければなりませんから。ユージーンもそう思うだろう?」
ハミルトンはユージーンに同意を求めたけれど、ユージーンは素知らぬ顔をハミルトンに向ける。
「僕の妹だと判明したんだから、このまま王宮に留まるのが普通だろ? わざわざまたアシェトン公爵家に戻らなくてもいいじゃないか」
「ユージーン! お前もさっきのお祖父様とのやり取りを見ただろう? お祖父様もここに来たがったけれど、車椅子を馬車に乗せられないから断念したんじゃないか!」
せっかく収まったと思ったのに、またもやハミルトンとユージーンが言い争いを始めてしまったわ。
幼馴染で仲が良いのかと思いきやお互いライバル視している所があるのかしら。
そこへ割って入ったのが国王陛下だった。
「ハミルトン、今車椅子と言ったか? それは一体何だ? それに叔父上は叔母上を亡くされてから臥せっていると聞いたのだが、回復されたのか?」
お祖父様の事は国王陛下の耳にも入っていたみたいね。
いくら叔父とは言っても一国の国王がそうそうお見舞いになんて出かけられないのかもしれないわ。
「陛下、車椅子はここにいるフェリシアがお祖父様の為に開発してくれたんです。お祖父様はフェリシアが我が家に来てから随分と元気になりました。このままフェリシアが王宮に留まってしまうと、お祖父様の具合がまた悪くなってしまわないかと心配です。ユージーン、そうは思わないか?」
「車椅子は僕も見ました。まるで小さな馬車に乗っているようでしたよ。しかし、あれをフェリシアが開発したとは初耳だな。どうして教えてくれなかったんだい?」
またもや私を挟んでハミルトンとユージーンが火花を散らし始める。
そんなに喧嘩がしたいのなら何処か他所へ行ってやってくれないかしら。
「回復したばかりの叔父上がまた臥せってしまうのは忍びないな。それに受け入れ体制を整えるのにも時間がかかるだろう。仕方がない、一度アシェトン公爵家に戻りなさい。けれど明日には必ず王宮に戻るように、いいね、フェリシア」
国王陛下の決定で、私は明日には王宮に居を構えるのが確定した。
この前まで下町で暮らしていた私が王宮に住むようになるなんて、訳が分からないわ。
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