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43 退室
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「フェリシア、返事は?」
国王陛下に問われて私はハッと顔を上げた。
どうやら返事を返さないといけなかったらしい。
「わかりました、こく…」
国王陛下、と言おうとして思わず口をつぐんだ。周りの皆が微妙な顔をしていたからだ。
どうやらこの返事は不適切なようだ。
「わかりました、お父様」
その言葉を口にした途端、周りはホッと安堵の息を吐き、国王陛下、もといお父様はまたもや私を抱きしめようと身を乗り出して宰相に止められている。
「それじゃ、一旦アシェトン公爵家に戻ろうか。勿論、僕も付き添うよ」
「待て、ユージーン! どうしてそこでお前がついて来なくちゃいけないんだ?」
「王宮に来るのに王家の馬車を使っただろう? 送って行ってあげるから僕も当然ついて行くよ。それに大事な妹を他の男と二人きりにはしたくないからね」
「二人きりにしたくないなら使用人か誰かを付き添わせればいいだろう。何もお前がついて来る事はない!」
またもや私を挟んでユージーンとハミルトンが言い争いを始めてしまったわ。
私が止めに入ってもいいのかしら?
困ったように周りを見回すと、宰相がニコリと私を安心させるように微笑んだ。
ああ、この人に任せておけば大丈夫ね。
出来る男の宰相サマは、コホンとわざとらしく咳払いをした。
「ユージーン様、ハミルトン様。そのくらいにしておかないと、フェリシア様に嫌われますよ」
ユージーンとハミルトンは宰相の言葉にハッと我に返ったようだ。
「フェリシア、僕達は決して喧嘩をしているわけじゃないよ」
「そうそう、ちょっと意見の食い違いがあっただけだからね」
…今更取り繕っても仕方がないと思うんだけれど、余計な事は言わない方がいいわね。
「…ホントですか?」
ちょっと心配そうに二人を見やると二人共、コクコクと頷いてくれる。
その仕草がそっくりでちょっと笑ってしまうけれど、流石にここで笑うのは無しよね。
不穏な空気が霧散したところで宰相がお父様に時間切れを告げる。
「陛下、そろそろ執務に戻られませんと…」
「…はぁ、仕方がない。明日はフェリシアとの時間を取りたいからな。…それじゃ、フェリシア。明日を楽しみにしているよ。叔父上によろしく伝えてくれ」
「わかりました、お父様。お仕事頑張ってくださいね」
ちょっと励ましてあげようと言った一言だったけれど、効果テキメンだったようで、お父様はぱっと表情を明るくした。
「勿論だ。ほら、ブライアン、何をグズグズしておる。早く仕事を続けるぞ」
お父様は立ち上がるとまた執務机に戻って書類に目を通し始めた。
私とユージーンとハミルトンは執務の邪魔にならないように、そっと立ち上がって執務室を後にする。
廊下に出るとようやく妙な緊張感から解放されたような気分になった。
そんな私の目の前に、スッとユージーンとハミルトンの手が差し出される。
ユージーンはわかるけれど、どうしてハミルトンまでが私に手を差し出してくるのかしら。
もう私がジェシカではないとわかったはずなのに…。
「ハミルトン、もう君の妹ではないと確定したのに、どうしてまだエスコートしようとするんだい?」
ユージーンが私の疑問をハミルトンにぶつけるけれど、何処かからかうような響きがある。
まるで答えを知っていて聞いているみたい。
「妹じゃないとわかってホッとしたよ。僕はフェリシアの事が好きになったんだ。だから今度正式にフェリシアに結婚を申し込むつもりだ」
ハミルトンの爆弾発言に私は言葉を失うけれど、ユージーンはフンと鼻で笑った。
「流石に今の段階で認めるわけにはいかないな。父上に言ったら速攻首を撥ねられかねないぞ」
「やめてくれよ。とても冗談には聞こえないぞ」
「冗談じゃなくやりそうだから言ってるんだよ」
そんな二人のやり取りは私の耳には入っていなかった。
…ハミルトンが私を好き?
…私に結婚を申し込む?
…何でそんな事になってるの?
国王陛下に問われて私はハッと顔を上げた。
どうやら返事を返さないといけなかったらしい。
「わかりました、こく…」
国王陛下、と言おうとして思わず口をつぐんだ。周りの皆が微妙な顔をしていたからだ。
どうやらこの返事は不適切なようだ。
「わかりました、お父様」
その言葉を口にした途端、周りはホッと安堵の息を吐き、国王陛下、もといお父様はまたもや私を抱きしめようと身を乗り出して宰相に止められている。
「それじゃ、一旦アシェトン公爵家に戻ろうか。勿論、僕も付き添うよ」
「待て、ユージーン! どうしてそこでお前がついて来なくちゃいけないんだ?」
「王宮に来るのに王家の馬車を使っただろう? 送って行ってあげるから僕も当然ついて行くよ。それに大事な妹を他の男と二人きりにはしたくないからね」
「二人きりにしたくないなら使用人か誰かを付き添わせればいいだろう。何もお前がついて来る事はない!」
またもや私を挟んでユージーンとハミルトンが言い争いを始めてしまったわ。
私が止めに入ってもいいのかしら?
困ったように周りを見回すと、宰相がニコリと私を安心させるように微笑んだ。
ああ、この人に任せておけば大丈夫ね。
出来る男の宰相サマは、コホンとわざとらしく咳払いをした。
「ユージーン様、ハミルトン様。そのくらいにしておかないと、フェリシア様に嫌われますよ」
ユージーンとハミルトンは宰相の言葉にハッと我に返ったようだ。
「フェリシア、僕達は決して喧嘩をしているわけじゃないよ」
「そうそう、ちょっと意見の食い違いがあっただけだからね」
…今更取り繕っても仕方がないと思うんだけれど、余計な事は言わない方がいいわね。
「…ホントですか?」
ちょっと心配そうに二人を見やると二人共、コクコクと頷いてくれる。
その仕草がそっくりでちょっと笑ってしまうけれど、流石にここで笑うのは無しよね。
不穏な空気が霧散したところで宰相がお父様に時間切れを告げる。
「陛下、そろそろ執務に戻られませんと…」
「…はぁ、仕方がない。明日はフェリシアとの時間を取りたいからな。…それじゃ、フェリシア。明日を楽しみにしているよ。叔父上によろしく伝えてくれ」
「わかりました、お父様。お仕事頑張ってくださいね」
ちょっと励ましてあげようと言った一言だったけれど、効果テキメンだったようで、お父様はぱっと表情を明るくした。
「勿論だ。ほら、ブライアン、何をグズグズしておる。早く仕事を続けるぞ」
お父様は立ち上がるとまた執務机に戻って書類に目を通し始めた。
私とユージーンとハミルトンは執務の邪魔にならないように、そっと立ち上がって執務室を後にする。
廊下に出るとようやく妙な緊張感から解放されたような気分になった。
そんな私の目の前に、スッとユージーンとハミルトンの手が差し出される。
ユージーンはわかるけれど、どうしてハミルトンまでが私に手を差し出してくるのかしら。
もう私がジェシカではないとわかったはずなのに…。
「ハミルトン、もう君の妹ではないと確定したのに、どうしてまだエスコートしようとするんだい?」
ユージーンが私の疑問をハミルトンにぶつけるけれど、何処かからかうような響きがある。
まるで答えを知っていて聞いているみたい。
「妹じゃないとわかってホッとしたよ。僕はフェリシアの事が好きになったんだ。だから今度正式にフェリシアに結婚を申し込むつもりだ」
ハミルトンの爆弾発言に私は言葉を失うけれど、ユージーンはフンと鼻で笑った。
「流石に今の段階で認めるわけにはいかないな。父上に言ったら速攻首を撥ねられかねないぞ」
「やめてくれよ。とても冗談には聞こえないぞ」
「冗談じゃなくやりそうだから言ってるんだよ」
そんな二人のやり取りは私の耳には入っていなかった。
…ハミルトンが私を好き?
…私に結婚を申し込む?
…何でそんな事になってるの?
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