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44 帰宅
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私も確かにハミルトンの事は気になっているけれど、今すぐ結婚とか言われても返事に困ってしまう。
そんな私の心を知ってか知らずか、ハミルトンがスッと私に手を差し出してくる。
「さあ、フェリシアに馬車までエスコートしてあげるよ」
そんなハミルトンに負けじとユージーン、もといお兄様までもが私に手を差し伸べる。
「いやいや、まだハミルトンに可愛い妹は任せられないな。さあ、フェリシア。僕がエスコートしてあげよう」
またしても二人に手を差し伸べられて私はどうしていいかわからなくなってしまう。
ここはやはりさっきと同じように二人の手を取る方が無難かしらね。
私がそれぞれの手を取ると、二人共、ホッとしたような、がっかりしたような顔をしている。
「お二人共、そんな顔をされるんでしたらもう手を繋ぎませんよ」
そう告げると二人共慌てたように笑顔を見せて私をエスコートしてくれた。
馬車へは真っ先に私が乗り込んで席の真ん中に陣取り、ハミルトンとお兄様を反対側に並んで座らせた。
「「ええー、そんなー」」
二人は声を合わせて私に抗議をするけれど、私はニッコリと笑って言った。
「ほんの少しの辛抱ですよ。我慢してくださいね」
二人共同じような仕草でがっくりしていたけれど、私は素知らぬ顔で外の景色に目をやった。
やがて馬車は公爵家の門を通り過ぎて玄関先へと到着する。
扉が開くとお兄様とハミルトンはそそくさと馬車から降りて、スッと私に向けて手を差し伸べる。
…これくらいはいいわね。
二人に手を取られて馬車を降りると、モーガンが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。旦那様が応接室でお待ちです」
モーガンの後をついて応接室に向かうと、車椅子に座ったままのお祖父様が出迎えてくれた。
「おかえり、フェリシア。その顔を見るとどうやらフェリシアはエリックの娘だったみたいだな」
お祖父様の言葉に私はコクリと頷いてお祖父様の隣のソファーに腰掛けた。
お兄様とハミルトンは私達の向かいに並んで座ってまたもやブーブー言っている。
「うるさいぞ、お前達。一緒に座るのが嫌なら出て行け!」
お祖父様に一喝されると二人は黙ってしまった。
最初から大人しく座っていればいいのにね。
喧嘩するほど仲が良いって言うから、あれは喧嘩じゃなくてじゃれ合っているだけなのかもね。
「魔道具にお父様と一緒に触れたらすべての魔石が光りだしました、明日には王宮に行かなくてはいけません」
「そうだろうな。エリックはアイリスが居なくなってしばらく気落ちしていたからな。あのまま王宮に留めなかっただけましだな」
お祖父様への報告が終わるとお兄様は王宮へと戻って行った。
何だかんだ理由をつけて公爵家に泊まろうとしていたけど、お祖父様にひと睨みされたらスゴスゴと引き下がったわ。
自室に戻るお祖父様を見送ると私もそのまま、自分の部屋へと戻る事にした。
ハミルトンが何か言いたそうにしていたけれど、気付かないフリをした。
夕食の時間になって食堂に向かう際に、私はジェシカの髪の毛とお骨が入った箱を持っていく事にした。
いずれジェシカの身内に会えたら渡そうと思っていたけれど、こんなに早く出会えるとは思っていなかった。
夕食後のお茶を飲む頃、私はお祖父様にそっとその箱を手渡した。
「お祖父様。この箱にジェシカの髪の毛とお骨が入っています。お墓は孤児院の墓地にありますから、もしこちらのお墓に移されるのならこちらも入れてあげてください」
お祖父様は箱を開けてジェシカの髪の毛を見て軽く頷いた。
「これはダグラスとまったく同じ色の髪だな。フェリシアも似たような色だが、少し濃すぎると思っていたんだ」
お祖父様は何処となく私がこの家の娘ではないかもしれないと感じ取っていたのね。
どちらにしても遺髪と遺骨を渡す事が出来て肩の荷が下りたわ。
そんな私の心を知ってか知らずか、ハミルトンがスッと私に手を差し出してくる。
「さあ、フェリシアに馬車までエスコートしてあげるよ」
そんなハミルトンに負けじとユージーン、もといお兄様までもが私に手を差し伸べる。
「いやいや、まだハミルトンに可愛い妹は任せられないな。さあ、フェリシア。僕がエスコートしてあげよう」
またしても二人に手を差し伸べられて私はどうしていいかわからなくなってしまう。
ここはやはりさっきと同じように二人の手を取る方が無難かしらね。
私がそれぞれの手を取ると、二人共、ホッとしたような、がっかりしたような顔をしている。
「お二人共、そんな顔をされるんでしたらもう手を繋ぎませんよ」
そう告げると二人共慌てたように笑顔を見せて私をエスコートしてくれた。
馬車へは真っ先に私が乗り込んで席の真ん中に陣取り、ハミルトンとお兄様を反対側に並んで座らせた。
「「ええー、そんなー」」
二人は声を合わせて私に抗議をするけれど、私はニッコリと笑って言った。
「ほんの少しの辛抱ですよ。我慢してくださいね」
二人共同じような仕草でがっくりしていたけれど、私は素知らぬ顔で外の景色に目をやった。
やがて馬車は公爵家の門を通り過ぎて玄関先へと到着する。
扉が開くとお兄様とハミルトンはそそくさと馬車から降りて、スッと私に向けて手を差し伸べる。
…これくらいはいいわね。
二人に手を取られて馬車を降りると、モーガンが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。旦那様が応接室でお待ちです」
モーガンの後をついて応接室に向かうと、車椅子に座ったままのお祖父様が出迎えてくれた。
「おかえり、フェリシア。その顔を見るとどうやらフェリシアはエリックの娘だったみたいだな」
お祖父様の言葉に私はコクリと頷いてお祖父様の隣のソファーに腰掛けた。
お兄様とハミルトンは私達の向かいに並んで座ってまたもやブーブー言っている。
「うるさいぞ、お前達。一緒に座るのが嫌なら出て行け!」
お祖父様に一喝されると二人は黙ってしまった。
最初から大人しく座っていればいいのにね。
喧嘩するほど仲が良いって言うから、あれは喧嘩じゃなくてじゃれ合っているだけなのかもね。
「魔道具にお父様と一緒に触れたらすべての魔石が光りだしました、明日には王宮に行かなくてはいけません」
「そうだろうな。エリックはアイリスが居なくなってしばらく気落ちしていたからな。あのまま王宮に留めなかっただけましだな」
お祖父様への報告が終わるとお兄様は王宮へと戻って行った。
何だかんだ理由をつけて公爵家に泊まろうとしていたけど、お祖父様にひと睨みされたらスゴスゴと引き下がったわ。
自室に戻るお祖父様を見送ると私もそのまま、自分の部屋へと戻る事にした。
ハミルトンが何か言いたそうにしていたけれど、気付かないフリをした。
夕食の時間になって食堂に向かう際に、私はジェシカの髪の毛とお骨が入った箱を持っていく事にした。
いずれジェシカの身内に会えたら渡そうと思っていたけれど、こんなに早く出会えるとは思っていなかった。
夕食後のお茶を飲む頃、私はお祖父様にそっとその箱を手渡した。
「お祖父様。この箱にジェシカの髪の毛とお骨が入っています。お墓は孤児院の墓地にありますから、もしこちらのお墓に移されるのならこちらも入れてあげてください」
お祖父様は箱を開けてジェシカの髪の毛を見て軽く頷いた。
「これはダグラスとまったく同じ色の髪だな。フェリシアも似たような色だが、少し濃すぎると思っていたんだ」
お祖父様は何処となく私がこの家の娘ではないかもしれないと感じ取っていたのね。
どちらにしても遺髪と遺骨を渡す事が出来て肩の荷が下りたわ。
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