御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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学院編

71 遭遇

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 採寸を終えると僕と店員は小部屋を出てエミーの所へ戻った。

「お疲れ様でした。出来上がりは一週間後の予定ですので、その日以降に取りに来てくださいませ」

「わかりました。よろしくお願いします」

 エミーと店員が制服の受け渡し日の確認をしてこの日は終わりとなった。

 帰り支度をしてソファーから立ち上がり、扉に向かおうとしたところで、店の扉が開いて別の客が入ってきた。

 何気なくその客の顔を見て僕は「あ」と思わず声を出した。

 向こうはすぐには僕だと気づかなかったようで、しばし僕の顔を見ていたが、その目が驚いたように見開かれた。

「え? エドアルド? そのメガネ、どうしたの!?」 

 店に入るなりアーサーは僕の所へ駆け寄ってくる。

 だが、アーサーが僕を問い詰めるより先に、アーサーの後を追ってきた従者がアーサーを引き止めた。

「アーサー様、今、この場でエドアルド様とお話する時間はございませんよ」

 従者にたしなめられ、アーサーはハッとしたように周りを見渡した。

 それほど格式張った店内ではないにしても、友人同士でおしゃべりに興じるような場所でもない。

「そうだね。エドアルド、後で遊びに行くからね」

 アーサーは手短にそれだけを告げると、待ち構えていた店員と一緒に接客コーナーへと行ってしまった。

 僕もエミーに促され、店の外へと向かう。

 馬車に揺られながらエルガー家が近付いて来たところでエミーが「エドアルド様」と声をかけていた。

「何?」

「そろそろ眼鏡を外された方がよろしいですよ。でないと、またクリス様に泣かれますよ」

 そう告げられて僕は慌てて眼鏡を外してポケットに仕舞う。

 クリスへの対応もだけれど、この後やって来るアーサーになんて言い訳をしようかと、そちらの方が気になっている。

 まさか、こんなに早くアーサーに出会うなんて考えてもいなかった。

 学院に通うようになってから、アーサーに眼鏡をかけた僕を見せるとばかり思っていたのだ。

 まだ何の心構えも出来ていなかったのに、どうしてあそこでアーサーに出会っちゃうかな。

 アーサーって何気に勘が鋭いから、今までどおりの言い訳じゃ誤魔化されてくれないと思うんだよね。

 屋敷に戻るとちょうどお昼寝から起きたクリスが僕を待ち構えていた。

「にーたま、おきゃーり(お帰り)」

 まだ舌足らずな口調でクリスが僕を出迎えてくれた。

 ぽふっと僕の足に抱きついてくるクリスを抱っこしてやると、僕の顔を不思議そうに見つめてきた。

「にーたま、ここ、いたい?」

 クリスが小さな手で僕の目と鼻の間を指差す。

「痛くないよ、どうして?」

「ここ、あかいよ。ここも。…かゆい?」

 クリスは反対側の目と鼻の間を指差してきた。

 そこで僕はクリスが何を言っているのか悟った。

 どうやら眼鏡をかけていた時の眼鏡パッドの跡がついていたようだ。

 それほど長時間つけていたわけではないのでそれほど赤くなっているとは思えないんだけれどな。

 おそらく、抱っこした事でクリスの目線が近くなり、ほんの少しの赤味でもクリスに気づかれてしまったのだろう。

「痒くもないよ。すぐに治るからね」

 僕はそう言ってクリスの意識を他に逸らすために、クリスの身体を持ち上げて「高い高い」をしてやる。

 途端にクリスははしゃいだ顔になり、キャッキャッと声をあげて笑い出した。

 そこから、しばらくクリスと遊んでいると、エミーが僕に近寄ってきた。

「エドアルド様。アーサー様がお見えになりました」

「…わかった。クリス、また後でね」

 僕はクリスを乳母に預けると、エミーと一緒にアーサーがいる応接室に向かった。

 応接室に入ってきた僕を見てアーサーは「あれ?」という顔をする。

「エドアルド、眼鏡はどうしたの?」

「家でかけているとクリスが泣くんだ。だから、家での眼鏡は禁止だって…」

「クリスが嫌がるのに眼鏡をかけるのか。それほど目が悪いわけじゃないよね。理由を聞かせてくれるかな?」

 アーサーはニコッと口角を上げるけれど、目は笑っていない。

 もう、これ以上の言い逃れは無理…かな?




 
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