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学院編
96 筆算
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学院長がせっせと小テストの問題を解いているのを僕は所在なげに見つめていた。
それを見かねたのかディクソン先生が学院長にそっと声をかけた。
「学院長。お話が終わったようでしたら、エルガーさんは教室に帰ってもらってよろしいですか?」
問題を解くのに没頭していたらしく、学院長は「ん?」と疑問符を浮かべたような表情を見せた。
その目が僕とディクソン先生を認識すると「おお!」と声を上げる。
どうやら僕達の存在をすっかり忘れていたようだ。
「いや、すみませんね。すっかり夢中になっていました。もうお帰りいただいて結構ですよ」
学院長の言葉に僕はホッと胸を撫で下ろす。
「それでは失礼します」
僕とディクソン先生は学院長に一礼すると、学院長室から廊下に出た。
やれやれ、ようやく解放されたよ。
僕の後から廊下に出て来たディクソン先生は、学院長室の扉を閉めると僕に告げた。
「エルガーさん、一人で教室に戻れますよね? 私はこのまま職員室に戻ります」
「はい、大丈夫です」
こちらの棟に来るのは初めてだけれど、渡り廊下を通って向こうの校舎に戻ればいいだけだ。
迷子になりようがない。
僕はディクソン先生と分かれて教室がある校舎へ戻って行った。
まだチャイムは鳴っていないので、隣の自習ルームの扉を開けた。
そっと音がしないように開けたつもりだけれど、やはり中にいる皆の注目を集めてしまった。
だが、皆はチラリと視線を向けただけですぐに元の体勢にもどるが、アーサーだけはこちらを向いたままだ。
僕は素早く教室に入るとアーサーの隣に腰を下ろした。
「何処に行ってたんだ? こっちにいないから隣で授業を受けているのかと思ってたけど違ったのか?」
声を潜めてアーサーが聞いてくるので、僕はアーサーにそっと耳打ちをした。
「ディクソン先生に連れられて学院長の所に行っていたんだ」
それを聞いたアーサーが思わず叫びそうになったのか、慌てて自分の口を押さえた。
まあ、そういう反応になるよね。
これ以上内緒話も出来ないので、僕は前回読みかけていた本を持ってきて読み始める。
程なくしてチャイムが鳴り、僕達は隣の教室に戻る。
次の授業は計算の時間だ。
始業のチャイムと同時にディクソン先生が教室に入って来た。
ディクソン先生の手には昨日の小テストの束が握られている。
「それでは昨日の小テストを返却します。このテストで満点を取ったのはエルガーさんだけでした。皆さんもエルガーさんに負けないように頑張ってください」
ディクソン先生の暴露によって皆の視線が一斉に僕に降り注いでくる。
称賛を込めた視線もあれば、敵意を込めたような視線もあった。
すぐに皆、ディクソン先生の方に視線を戻したが、あまり気分のいいものではない。
一人ずつ名前を呼ばれてディクソン先生の所へテスト用紙を取りに行く。
テスト用紙を受け取った生徒の表情は悲喜こもごもだ。
アーサーもテスト用紙を受け取ってがっくりと肩を落としている。
筆算と九九を教えたから、次回のテストはきっと良くなるだろう。
僕の名前を呼ばれてディクソン先生の所へ向かう。
「エルガーさん、素晴らしい成績ですね。この次も頑張ってくださいね」
「…ありがとうございます」
点数の暴露さえなければもっと良かったんですけどね。
チロリ、と恨みがましい目を向けてみたけれど、ディクソン先生は気付かずに次の生徒の名前を呼んだ。
テスト用紙を返却し終わるとディクソン先生はグルリと教室の中を見回した。
「これから新しい計算の仕方を教えます。この方法で計算すればきっと皆さんもテストの成績が上がりますよ」
ディクソン先生はそう告げると黒板に筆算での計算式を書き始める。
それを見た生徒達は一斉にざわついた。
「ディクソン先生! その計算の仕方は何ですか?」
生徒の一人がディクソン先生に質問を浴びせる。
「これは『筆算』と言う計算の仕方です。とある方が考案されました」
いや、だから、そんな含みのある言い方はしなくていいんだってば!
それを見かねたのかディクソン先生が学院長にそっと声をかけた。
「学院長。お話が終わったようでしたら、エルガーさんは教室に帰ってもらってよろしいですか?」
問題を解くのに没頭していたらしく、学院長は「ん?」と疑問符を浮かべたような表情を見せた。
その目が僕とディクソン先生を認識すると「おお!」と声を上げる。
どうやら僕達の存在をすっかり忘れていたようだ。
「いや、すみませんね。すっかり夢中になっていました。もうお帰りいただいて結構ですよ」
学院長の言葉に僕はホッと胸を撫で下ろす。
「それでは失礼します」
僕とディクソン先生は学院長に一礼すると、学院長室から廊下に出た。
やれやれ、ようやく解放されたよ。
僕の後から廊下に出て来たディクソン先生は、学院長室の扉を閉めると僕に告げた。
「エルガーさん、一人で教室に戻れますよね? 私はこのまま職員室に戻ります」
「はい、大丈夫です」
こちらの棟に来るのは初めてだけれど、渡り廊下を通って向こうの校舎に戻ればいいだけだ。
迷子になりようがない。
僕はディクソン先生と分かれて教室がある校舎へ戻って行った。
まだチャイムは鳴っていないので、隣の自習ルームの扉を開けた。
そっと音がしないように開けたつもりだけれど、やはり中にいる皆の注目を集めてしまった。
だが、皆はチラリと視線を向けただけですぐに元の体勢にもどるが、アーサーだけはこちらを向いたままだ。
僕は素早く教室に入るとアーサーの隣に腰を下ろした。
「何処に行ってたんだ? こっちにいないから隣で授業を受けているのかと思ってたけど違ったのか?」
声を潜めてアーサーが聞いてくるので、僕はアーサーにそっと耳打ちをした。
「ディクソン先生に連れられて学院長の所に行っていたんだ」
それを聞いたアーサーが思わず叫びそうになったのか、慌てて自分の口を押さえた。
まあ、そういう反応になるよね。
これ以上内緒話も出来ないので、僕は前回読みかけていた本を持ってきて読み始める。
程なくしてチャイムが鳴り、僕達は隣の教室に戻る。
次の授業は計算の時間だ。
始業のチャイムと同時にディクソン先生が教室に入って来た。
ディクソン先生の手には昨日の小テストの束が握られている。
「それでは昨日の小テストを返却します。このテストで満点を取ったのはエルガーさんだけでした。皆さんもエルガーさんに負けないように頑張ってください」
ディクソン先生の暴露によって皆の視線が一斉に僕に降り注いでくる。
称賛を込めた視線もあれば、敵意を込めたような視線もあった。
すぐに皆、ディクソン先生の方に視線を戻したが、あまり気分のいいものではない。
一人ずつ名前を呼ばれてディクソン先生の所へテスト用紙を取りに行く。
テスト用紙を受け取った生徒の表情は悲喜こもごもだ。
アーサーもテスト用紙を受け取ってがっくりと肩を落としている。
筆算と九九を教えたから、次回のテストはきっと良くなるだろう。
僕の名前を呼ばれてディクソン先生の所へ向かう。
「エルガーさん、素晴らしい成績ですね。この次も頑張ってくださいね」
「…ありがとうございます」
点数の暴露さえなければもっと良かったんですけどね。
チロリ、と恨みがましい目を向けてみたけれど、ディクソン先生は気付かずに次の生徒の名前を呼んだ。
テスト用紙を返却し終わるとディクソン先生はグルリと教室の中を見回した。
「これから新しい計算の仕方を教えます。この方法で計算すればきっと皆さんもテストの成績が上がりますよ」
ディクソン先生はそう告げると黒板に筆算での計算式を書き始める。
それを見た生徒達は一斉にざわついた。
「ディクソン先生! その計算の仕方は何ですか?」
生徒の一人がディクソン先生に質問を浴びせる。
「これは『筆算』と言う計算の仕方です。とある方が考案されました」
いや、だから、そんな含みのある言い方はしなくていいんだってば!
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