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学院編
95 学院長
次の日、僕は戦々恐々としながら登校した。
朝のホームルームは特に何事もなく終わった。
最初の授業は選択していない科目だったので、隣の自習ルームに移動するために立ち上がった。
教室の後ろの扉を開けて廊下に出ようとした所で僕は足を止めた。
そこにはディクソン先生が立っていて、僕を見ると軽く微笑んだ。
「エルガーさん。ちょっとお話がありますのでこちらに来ていただけますか?」
ディクソン先生はお願いの形をとっているが、僕に断るという選択肢はない。
「わかりました」
僕は隣の教室には入らずにそのままディクソン先生について廊下を歩き出した。
背中にアーサーや他の生徒の視線を感じるけれど、振り返る余裕はない。
ディクソン先生はどんどん先に進んで行き、やがて連絡通路から隣の校舎へと向かって行く。
確かこちらには教員室があったはずだが、そちらに向かうのだろうか?
だが、ディクソン先生は『教員室』と書かれたプレートが下がっている部屋を通り過ぎて行った。
一体、何処に向かっているのだろう?
そう思って歩いている僕の目に『学院長室』と書かれたプレートの文字が飛び込んできた。
ま、まさか!?
僕の焦りをよそにディクソン先生は『学院長室』のプレートの下にある扉をノックした。
「学院長、エルガーさんをお連れしました」
「どうぞ」
短い返事を受けてディクソン先生は学院長室の扉を開いて中に入って行く。
僕が躊躇っていると、先に入ったディクソン先生が僕を学院長室に引っ張り込んだ。
少しつんのめりながら学院長室に入ると、部屋の奥にある重厚な机の奥に座っていた学院長が僕を見据えた。
「この子が、エドアルド・エルガー君ですか? あまりダニエル君にはにていないようですねぇ」
学院長から義父様の名前が出てきて僕は困惑する。
義父様はそんなに学院長と親しいのだろうか?
だけど、学院長は僕が養子だとは知らないみたいだな。
「学院長。…その、エルガーさんは養子ですので…」
言葉を濁すディクソン先生に学院長は何度か頷いた。
「そうですか。それは失礼しましたね」
学院長に謝られて僕は小さく「いえ」と返した。
だけど、どうしてここに呼ばれたんだろう?
まさか、昨日の小テストの事か?
陞爵の事はともかく、筆算については学院長に報告はされたのだろう。
僕の背中をタラリと冷や汗が落ちていく。
ディクソン先生と並んで学院長の前に立っていると、学院長は座ったまま僕に微笑んできた。
「『筆算』でしたか? 君が考案した計算方法はとても素晴らしいですね。これはぜひとも全生徒に向けて広めていきたいと思っていますがよろしいですかな?」
「あ、はい。僕の名前を出されないのなら構いません」
「名前を出さない? 何故ですか? これを考案したと知らしめれば皆エルガー君に一目置くようになると思いますよ。君が望むのであれば国王陛下に陞爵を進言しても…」
「待ってください!」
僕は慌てて学院長の言葉を遮った。
陞爵は勿論だけど、『筆算』を考案したとかで国王陛下と顔を合わせるという展開にだけはなりたくない。
僕を出産した記憶のない王妃でさえ、僕を息子だと認識したのだ。
実際に僕を捨てさせた国王が僕に気付く確率は高いに決まっている。
万が一、その事でエルガー家に迷惑がかからないとも限らないのだ。
「僕はそんなのはいりません。義父様達と同様に僕は静かな生活がしたいのです」
そう告げると学院長はやれやれとばかりにため息をついた。
「流石はダニエル君の息子さんですね。わかりました。君が考案した事は伏せておきましょう。ところで、この計算方法だと割り算はしにくいようなのですが、この場合はどうするのですか?」
学院長はそう言って昨日の小テストのプリントを出してきた。
学院長自らが解いたらしく、筆算に書き換えて計算がしてあった。
僕は割り算の場合の筆算での計算の仕方を学院長に教えた。
「おお、なるほど! 割り算の場合はこうやるんですね。確かにこちらの方が計算しやすいですね。ありがとうございます。これで全生徒に教える事が出来ます」
学院長は嬉々として他の問題を解き始めた。
…あの、そろそろ帰っていいですか?
朝のホームルームは特に何事もなく終わった。
最初の授業は選択していない科目だったので、隣の自習ルームに移動するために立ち上がった。
教室の後ろの扉を開けて廊下に出ようとした所で僕は足を止めた。
そこにはディクソン先生が立っていて、僕を見ると軽く微笑んだ。
「エルガーさん。ちょっとお話がありますのでこちらに来ていただけますか?」
ディクソン先生はお願いの形をとっているが、僕に断るという選択肢はない。
「わかりました」
僕は隣の教室には入らずにそのままディクソン先生について廊下を歩き出した。
背中にアーサーや他の生徒の視線を感じるけれど、振り返る余裕はない。
ディクソン先生はどんどん先に進んで行き、やがて連絡通路から隣の校舎へと向かって行く。
確かこちらには教員室があったはずだが、そちらに向かうのだろうか?
だが、ディクソン先生は『教員室』と書かれたプレートが下がっている部屋を通り過ぎて行った。
一体、何処に向かっているのだろう?
そう思って歩いている僕の目に『学院長室』と書かれたプレートの文字が飛び込んできた。
ま、まさか!?
僕の焦りをよそにディクソン先生は『学院長室』のプレートの下にある扉をノックした。
「学院長、エルガーさんをお連れしました」
「どうぞ」
短い返事を受けてディクソン先生は学院長室の扉を開いて中に入って行く。
僕が躊躇っていると、先に入ったディクソン先生が僕を学院長室に引っ張り込んだ。
少しつんのめりながら学院長室に入ると、部屋の奥にある重厚な机の奥に座っていた学院長が僕を見据えた。
「この子が、エドアルド・エルガー君ですか? あまりダニエル君にはにていないようですねぇ」
学院長から義父様の名前が出てきて僕は困惑する。
義父様はそんなに学院長と親しいのだろうか?
だけど、学院長は僕が養子だとは知らないみたいだな。
「学院長。…その、エルガーさんは養子ですので…」
言葉を濁すディクソン先生に学院長は何度か頷いた。
「そうですか。それは失礼しましたね」
学院長に謝られて僕は小さく「いえ」と返した。
だけど、どうしてここに呼ばれたんだろう?
まさか、昨日の小テストの事か?
陞爵の事はともかく、筆算については学院長に報告はされたのだろう。
僕の背中をタラリと冷や汗が落ちていく。
ディクソン先生と並んで学院長の前に立っていると、学院長は座ったまま僕に微笑んできた。
「『筆算』でしたか? 君が考案した計算方法はとても素晴らしいですね。これはぜひとも全生徒に向けて広めていきたいと思っていますがよろしいですかな?」
「あ、はい。僕の名前を出されないのなら構いません」
「名前を出さない? 何故ですか? これを考案したと知らしめれば皆エルガー君に一目置くようになると思いますよ。君が望むのであれば国王陛下に陞爵を進言しても…」
「待ってください!」
僕は慌てて学院長の言葉を遮った。
陞爵は勿論だけど、『筆算』を考案したとかで国王陛下と顔を合わせるという展開にだけはなりたくない。
僕を出産した記憶のない王妃でさえ、僕を息子だと認識したのだ。
実際に僕を捨てさせた国王が僕に気付く確率は高いに決まっている。
万が一、その事でエルガー家に迷惑がかからないとも限らないのだ。
「僕はそんなのはいりません。義父様達と同様に僕は静かな生活がしたいのです」
そう告げると学院長はやれやれとばかりにため息をついた。
「流石はダニエル君の息子さんですね。わかりました。君が考案した事は伏せておきましょう。ところで、この計算方法だと割り算はしにくいようなのですが、この場合はどうするのですか?」
学院長はそう言って昨日の小テストのプリントを出してきた。
学院長自らが解いたらしく、筆算に書き換えて計算がしてあった。
僕は割り算の場合の筆算での計算の仕方を学院長に教えた。
「おお、なるほど! 割り算の場合はこうやるんですね。確かにこちらの方が計算しやすいですね。ありがとうございます。これで全生徒に教える事が出来ます」
学院長は嬉々として他の問題を解き始めた。
…あの、そろそろ帰っていいですか?
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