御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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幼少期 

61 買い物

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  (時は『謁見』の少し前に遡る)

 アーサーの誕生日プレゼントを買うために街に出かける事にした。

「私が付き添ってあげたいんだけれど、今日はお茶会に呼ばれているのよ」 

 義母様が申し訳なさそうに言うけれど、忙しい義母様の手を煩わせるわけにはいかない。

「代わりにエミーに付き添わせるわ。エミー、エドアルドを頼むわね」

「お任せください、奥様」

 先日、スタンレイ子爵の所に付いてきてくれてから、エミーは僕の専属メイドのような立ち位置になっている。

 義母様の方から指名したのか、エミーが希望したのかはわからない。

 だけど、ずっと付き添ってくれるおかげで気心がしれて、お互いに良いことだと思う。

 だからといって無理難題を言いつけたり横柄な態度を取らないように気をつけようと思っている。

 馬車に乗って商店が立ち並ぶ区域に向かう。

 こうして買い物に出かけるなんて、この世界に転生して初めての事で、ちょっとワクワクしている。

「エミーは買い物に行ったりした事はあるの?」

 僕が尋ねるとエミーはニコッと笑って頷いた。

「勿論でございます。今日はどういった物をお買いになられますか?」

 エミーに聞かれたけれど、特に何を買うかはまるで決まっていない。

「うーん。まだ全然決めてないんだよね。何が良いかなぁ…」

 前世のようにおもちゃが溢れかえっている世界じゃないし、そもそもおもちゃ自体が少ない。

 本だって子供向けの本はそんなにないし、好みの問題もあるからね。

 プレゼントを買いに出てきたは良いけれど、何も見つからなかったらどうしよう。

 そんな事を考えているうちに、目的地に到着した。

 一旦、ここで馬車を降りて、後で迎えに来てもらう事になっている。

 僕とエミーは馬車を降りると商店街へと入っていく。

 このあたりは中流貴族が主に出入りする商店街らしいが、時々上流貴族もお忍びで来るらしい。

 最も、上流貴族はわざわざ自分で買い物に来たりはしないからね。

 物珍しげにあちこちの店をキョロキョロと見ながら歩いていると、前方に改装中の店舗があった。

 だが、その店舗の前で改装作業を見守る人物を見て僕はハッとした。

 そこに立っていたのはチャールズだったのだ。

 流石に声をかけるわけにもいかないので、僕は気づかないふりをして通り過ぎようとした。

 たが、タイミング悪くチャールズがふと、こちらに顔を向けた。

 チャールズは僕を見た瞬間、「あ」と言うように口を開けかけた。

 僕はエミーに気づかれないように、チャールズに向かって首を横に振る。

 チャールズは開けかけた口を閉じると、手に持っていた紙をスッとエミーに差し出した。

「こんにちは。今度、こちらにオープンする予定です。ぜひ、いらしてください」

 突然、差し出された紙にエミーは怪訝な顔をしながら受け取った。

「は、はぁ…」

 チャールズは僕に目もくれずに、今度は別の通行人に紙を差し出している。

「ねぇ、何が書いてあるの?」

 僕はエミーが受け取った紙を覗き込もうと背伸びをする。

 エミーは僕が見えやすいように紙をこちらに向けてくれた。

「『ポップコーン専門店』と書いてありますね。ポップコーンって何でしょう?」

「『新しいお菓子』って書いてあるよ。今度、国王様にも献上するんだって」

 紙、いわゆるチラシには、一週間後に開店する事と、ポップコーンのフレーバーの種類の紹介が書いてある。

 それによると、僕が教えた塩味とキャラメル味の他に、バターソルト味、ブラックペッパー味、カレー味、ハチミツバター味、チョコレート味があるようだ。

 あの料理長のサミュエルさん、随分と頑張ったんだな。

 一週間後にオープンなら、アーサーの誕生日プレゼントに間に合うぞ。

「エミー、このポップコーンをアーサーの誕生日プレゼントにするよ。悪いけど、このお店のオープンの日に連れてきてくれる?」

「このポップコーンをですか? 食べた事のないお菓子をプレゼントにして大丈夫なんですか?」 

「大丈夫だよ。きっとアーサーも気に入ってくれるよ」

「本当に大丈夫なんでしょうか…」

 半信半疑のエミーだったが、また連れてきてくれる事を約束してくれた。

 アーサーへの誕生日プレゼントとするよりも、僕自身へのプレゼントとして買いたいな。






 
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