御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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学院編

65 クリスの成長

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 月日が経つのは早いもので、僕は十歳を迎える年になった。

 弟のクリスもすくすくと成長し、二歳の誕生日を迎えてやんちゃ盛りである。

 今日も朝ご飯を終えた途端、庭を走り回るクリスの後をメイドがあたふたと追いかけている。

「本当に、クリスのあのやんちゃぶりは誰に似たのかしら?」

 義母様がテラス席から庭を眺めて、ほうっとため息をついている。

 そんな義母様のボヤキに僕は答えを持ち合わせていない。

 もっとも、義母様だって答えが欲しくて呟いているわけではない。

 クリスがヨチヨチ歩きの頃は義母様も時間を見つけては付き合っていたけれど、最近のクリスの活発さにはついていけないようで、若いメイドに任せっきりになっている。

 そんな義母様を見ていると、子育ては体力勝負なんだと実感するのだった。



 今日はアンソニー先生の剣の稽古の日だ。

 いつものようにアンソニー先生と剣の打ち合いをしていると、小さな影がタタタッと視界に入ってきた。

 僕とアンソニー先生はすぐに気づいて打ち合いを止める。

「クリス様っ! お待ち下さい!」

 すぐにメイドが追いついてきてクリスを抱き上げた。

 だが、クリスはその手から逃れようと身をよじっている。

「やっ! にーたまとあしょぶ!」

 どうやら僕の姿を見つけて、こちらに走ってきたようだ。

 僕を慕ってくれるのは嬉しいけれど、流石に剣の稽古に乱入されては危険すぎる。

「申し訳ございません。お邪魔をいたしました」

 メイドがクリスを抱きかかえて連れて行こうとするが、クリスは僕に手を伸ばしてくる。

「ぼくもしゅるの!」

 どうやら僕と一緒に剣の稽古をしたいようだが、流石に二歳の子供が持つような剣はない。

 それでも僕はクリスの期待に応えてあげたかった。

「クリス。後で遊んであげるから向こうで待っててね。クリスはお利口に待てるよね」

 僕がクリスの頭を撫でながら話しかけると、クリスはニコッと笑って「うん」と頷いた。

 そのままメイドに抱かれて僕に「バイバイ」と手を振りながら向こうに連れて行かれてしまった。

「アンソニー先生、申し訳ありません」

 僕がペコリと頭を下げると、アンソニー先生は「ククッ」と笑い声を漏らした。

「小さい頃のダニエルにそっくりだな」

「え、義父様にですか?」

「ああ。あいつは小さな頃はやんちゃでな。私の方が振り回されていたもんだ。セレナ様に会ってからは真逆になったけどな」

 いつの頃からかアンソニー先生はこんな砕けた口調で話してくれるようになった。

 それにしても義父様がやんちゃだったなんて。今の姿からは想像も出来ないや。

 アンソニー先生の稽古が終わると僕はすぐにクリスの元に向かった。

「にーたま!」

 クリスの部屋に入ると、クリスがわっと駆け寄ってくる。

「お待たせ、クリス。クリスも剣の稽古をしたいんだろう?」

「うん!」 

 僕はメイドに紙を二枚用意してもらった。

 それを細長く剣の形に折り、持ち手の所をクリスが持てる太さに調節する。

「ほら、クリス。これを持ってごらん」

 クリスが片手で持った紙の剣を、もう片方の手を添えさせて両手で持たせる。

「そうそう、それでこうやって剣を振るんだよ」 

 クリスの手に僕の手を添えて、紙の剣をシュッと振り下ろさせる。

 二・三回、手を添えてクリスに剣を振らせた後、僕は手を離した。

「ほら、自分でやってごらん」

 クリスは嬉々として紙の剣をブンブン振っている。

 紙とはいっても当たるとそれなりに痛いからね。

 人に当てさせないように注意しよう。

 僕はもう一枚の紙を同じように折って剣を作ると、その剣でクリスの剣を受け止めてやる。

 正確に僕の剣をめがけて打ち下ろしてくるなんて、クリスは剣の天才なんじゃないだろうか。

 …なんて親バカならぬ兄バカな事を考える僕なのだった。




 

 
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