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幼少期
64 団らん
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アーサーに前世の記憶があると打ち明けてから半年が過ぎた。
時折、アーサーと会ったりはするけれど、あれ以来前世の事については何も聞かれない。
アーサーも話題にしていいものかどうかわからないというのが現状なんだろう。
僕自身も進んで話題にする事ではないしね。
そんなある日、義両親と共に夕食を食べていると、不意に義父様が「そう言えば」と言い出した。
僕と義母様はカトラリーを動かす手を止めて義父様に注目する。
「今度、『陞爵・叙爵の儀』が行われるらしいよ」
それから義父様は更にこう続ける。
「我が家にも陞爵の打診があったが断っておいた」
ニッと笑う義父様に少し息を詰めていた義母様はホッとしたように息を吐き出す。
確か以前にもこんな会話が交わされたような気がする。
あの時は特に口を挟まなかったけれど、一度くらいは聞いてみてもいいだろう。
「義父様、どうして毎回、陞爵をお断りしているのですか?」
すると、義父様はしれっとした顔で告げる。
「そんなの、面倒くさいからに決まっているだろう」
あっさりと告げる義父様に、義母様も力強く首を縦に振る。
「そうよ。爵位が上がっても面倒事が増えるだけでちっとも割に合わないわ」
まったく同じ考えを持っている義両親に僕は頭を抱えたくなった。
貴族としての振る舞いを『面倒事』と言ってしまって良いのだろうか?
爵位が上がるのは望まないけれど、血筋だけは大切にしているというのも、『何だかな』と思わずにはいられない。
そもそも、今まで野心を持った人がこのエルガー家の当主にならなかった事が不思議だ。
そういえば、長男・長女はおっとりした性格の人が多いと聞くから、この義両親もそうなのかもしれない。
そこで僕は義父様の弟のウィリアム叔父様を思い出した。
あの人は上昇志向があったからエルガー家より上のトンプソン子爵家へ婿養子に入ったのだろう。
義母様も実家の子爵家より男爵家の方が気楽だから、エルガー家へ嫁いできたに違いない。
男爵という身分ながらもかなり裕福な部類に入るエルガー家は、嫁ぎ先としては優良物件に入っているのだろう。
そういう意味では義両親はいわゆる『似た者夫婦』なのだろう。
そう考えて納得している僕を他所に、義両親は何処の家が陞爵するかの話で盛り上がっている。
「どうやら、スタンレイ子爵家も伯爵家に陞爵するらしいね」
「スタンレイ子爵家って、この前『ポップコーン』のお店を出した所でしょう? それだけで爵位が上がるの?」
義母様の疑問に義父様は苦笑気味に答える。
「どうやらあのポップコーンをエドワード王子が気に入られたらしくてね。それに元々あそこは侯爵家だったからね。一つくらいは上げても良いと判断されたのだろう」
それを聞いて僕はチャールズの顔を思い出す。
ようやく念願の陞爵を果たせてホッとしている事だろう。
だが、それよりも僕は義父様に聞いてみたい事が出来た。
「義父様はエドワード王子にお会いした事があるんですか?」
僕の質問に義父様は「とんでもない」とばかりに首を振る。
「王宮に勤めていると言っても僕がいるのは事務棟だからね。それにエドワード王子はまだ王宮の公の場には出て来られないからね」
義父様がまだエドワード王子と顔を合わせた事がないと知って、僕は心の中で安堵した。
だが、いずれエドワード王子が公の場に出られるようになったら、義父様と顔を合わせる事があるのだろうか?
それよりも、僕が学院でエドワード王子と顔を合わせるのが先なのだろうか?
「エドワード王子が公の場に出られるのはいつになるんですか?」
「うーん。一概には言えないけれど、学院に入った後からの方が多いかな? 今の国王であるフィリップ様の時もそうだったしね」
…どうやら、この穏やかな日々も後三年弱で終わりが来るようだ。
『エドワード王子に似ている』と騒がれて、『他人の空似』だと押し切れるのだろうか?
不安の日は刻一刻と迫ってくるのだった。
時折、アーサーと会ったりはするけれど、あれ以来前世の事については何も聞かれない。
アーサーも話題にしていいものかどうかわからないというのが現状なんだろう。
僕自身も進んで話題にする事ではないしね。
そんなある日、義両親と共に夕食を食べていると、不意に義父様が「そう言えば」と言い出した。
僕と義母様はカトラリーを動かす手を止めて義父様に注目する。
「今度、『陞爵・叙爵の儀』が行われるらしいよ」
それから義父様は更にこう続ける。
「我が家にも陞爵の打診があったが断っておいた」
ニッと笑う義父様に少し息を詰めていた義母様はホッとしたように息を吐き出す。
確か以前にもこんな会話が交わされたような気がする。
あの時は特に口を挟まなかったけれど、一度くらいは聞いてみてもいいだろう。
「義父様、どうして毎回、陞爵をお断りしているのですか?」
すると、義父様はしれっとした顔で告げる。
「そんなの、面倒くさいからに決まっているだろう」
あっさりと告げる義父様に、義母様も力強く首を縦に振る。
「そうよ。爵位が上がっても面倒事が増えるだけでちっとも割に合わないわ」
まったく同じ考えを持っている義両親に僕は頭を抱えたくなった。
貴族としての振る舞いを『面倒事』と言ってしまって良いのだろうか?
爵位が上がるのは望まないけれど、血筋だけは大切にしているというのも、『何だかな』と思わずにはいられない。
そもそも、今まで野心を持った人がこのエルガー家の当主にならなかった事が不思議だ。
そういえば、長男・長女はおっとりした性格の人が多いと聞くから、この義両親もそうなのかもしれない。
そこで僕は義父様の弟のウィリアム叔父様を思い出した。
あの人は上昇志向があったからエルガー家より上のトンプソン子爵家へ婿養子に入ったのだろう。
義母様も実家の子爵家より男爵家の方が気楽だから、エルガー家へ嫁いできたに違いない。
男爵という身分ながらもかなり裕福な部類に入るエルガー家は、嫁ぎ先としては優良物件に入っているのだろう。
そういう意味では義両親はいわゆる『似た者夫婦』なのだろう。
そう考えて納得している僕を他所に、義両親は何処の家が陞爵するかの話で盛り上がっている。
「どうやら、スタンレイ子爵家も伯爵家に陞爵するらしいね」
「スタンレイ子爵家って、この前『ポップコーン』のお店を出した所でしょう? それだけで爵位が上がるの?」
義母様の疑問に義父様は苦笑気味に答える。
「どうやらあのポップコーンをエドワード王子が気に入られたらしくてね。それに元々あそこは侯爵家だったからね。一つくらいは上げても良いと判断されたのだろう」
それを聞いて僕はチャールズの顔を思い出す。
ようやく念願の陞爵を果たせてホッとしている事だろう。
だが、それよりも僕は義父様に聞いてみたい事が出来た。
「義父様はエドワード王子にお会いした事があるんですか?」
僕の質問に義父様は「とんでもない」とばかりに首を振る。
「王宮に勤めていると言っても僕がいるのは事務棟だからね。それにエドワード王子はまだ王宮の公の場には出て来られないからね」
義父様がまだエドワード王子と顔を合わせた事がないと知って、僕は心の中で安堵した。
だが、いずれエドワード王子が公の場に出られるようになったら、義父様と顔を合わせる事があるのだろうか?
それよりも、僕が学院でエドワード王子と顔を合わせるのが先なのだろうか?
「エドワード王子が公の場に出られるのはいつになるんですか?」
「うーん。一概には言えないけれど、学院に入った後からの方が多いかな? 今の国王であるフィリップ様の時もそうだったしね」
…どうやら、この穏やかな日々も後三年弱で終わりが来るようだ。
『エドワード王子に似ている』と騒がれて、『他人の空似』だと押し切れるのだろうか?
不安の日は刻一刻と迫ってくるのだった。
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