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29 グレンダからの贈り物
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舞踏会では結局、お父様とお兄様としかダンスが出来なかった。
知らない男の人とダンスをしなくてすんだのは助かったけれど、せめてエイブラムさんとは踊りたかったわ。
それなのにお父様とお兄様ったらエイブラムさんに近付く事すら許してくれなかったのよ。
おかげで私はエイブラムさんが他の女性とダンスをするのを見せられる羽目になってしまったわ。
ただ救いと言えば、グレンダさんが舞踏会に参加していなかった事かしら。
グレンダさんは魔術師としてはそれなりに実績があるらしいけれど、平民だから舞踏会には参加できないらしいわ。
彼女が参加出来なかった事にホッとしてしまうのは、やはり私はエイブラムさんの事が好きなのかしら?
時々騎士団の訓練場に行ってエイブラムさんの勇姿を眺めているんだけれど、そういう時は決まってお兄様が現れてエイブラムさんと模擬戦を始めるのよね。
お兄様もそれなりに鍛えていらっしゃるけれど、やはり騎士団長を務めているエイブラムさんには敵わないのよね。
それなのに懲りずにエイブラムさんと対戦するのは、私にカッコいい所を見せたいからか、怪我をして私に治療してもらいたいからか…。
多分両方ね。
本当に面倒臭いったらないわね。
この世界に戻って来て、ようやく王宮での生活にも慣れてきた。
侯爵夫人がお母様の代わりをしてくださるので、女性だけのお茶会でも何とかやっていけるわ。
時々グレンダさんに遭遇するけれど、彼女は私のエイブラムさんへの気持ちを知っているみたいで、いつも挑発的な視線を私に投げてくる。
そんなの無視すればいいってわかっているんだけど、それが出来たら苦労はしないわよ。
そんな事を考えていると、案の定向こうからグレンダさんが歩いて来るのが見えた。
このまま回れ右して顔を見ないようにしたいけれど、グレンダさんも私の姿を認識したようで、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
向こうから声をかけられないから、そのまま知らん顔で通り過ぎればいいのに、つい声をかけてしまった。
一緒にいるセアラと護衛騎士の目を気にしてしまったせいだわ。
「こんにちは、ご機嫌いかがかしら?」
けれど、これは単なる社交辞令で大した意味はない。
グレンダさんもそれをわかっているらしく、フッと鼻で笑う。
「これはこれは、アリス王女様におかれてはご機嫌麗しゅう」
そのまま通り過ぎようとした所、グレンダさんが持っていた本の一冊を私に差し出してきた。
「そう言えば、アリス王女様にご覧いただきたい本がありましたの。よろしければお持ちください」
差し出された本をセアラが受け取り、軽く中身を確認した後で私に渡してくれた。
表紙のタイトルからすると魔術に関する本のようだ。
「ありがとう。後で読ませていただくわ」
私は本をセアラに持ってもらいその場を後にする。
グレンダさんが意味ありげな笑みを私に向けている事も知らずに…。
そのまま自分の部屋に戻り、くつろいでいるとセアラがお茶を入れてくれた。
「…ありがとう」
グレンダさんと出会った事は思った以上に緊張していたようだ。
お茶を一口飲んで、ようやくひと心地つけたような気がした。
「アリス様。こちらの本はいかがなさいますか?」
セアラが先程グレンダさんから渡された本をテーブルの上に置いた。
せっかくだから、少し読んでみようかしら。
グレンダさんには思うところはあるけれど、だからといって本に罪はないものね。
パラパラと本を捲っていると、一箇所ほどページが引っ付いている所があった。
「あら、どうしたのかしら?」
いきなり引っ張ると本が破れてしまうかもしれないので、ゆっくりと慎重にページを引き剥がす。
ペリペリッと軽い音がして本のページが剥がされた。
その瞬間、カッと眩い光が私を包んだ。
それと同時に焦ったようなセアラの声が私を呼ぶ。
私はそのまま意識を失った。
知らない男の人とダンスをしなくてすんだのは助かったけれど、せめてエイブラムさんとは踊りたかったわ。
それなのにお父様とお兄様ったらエイブラムさんに近付く事すら許してくれなかったのよ。
おかげで私はエイブラムさんが他の女性とダンスをするのを見せられる羽目になってしまったわ。
ただ救いと言えば、グレンダさんが舞踏会に参加していなかった事かしら。
グレンダさんは魔術師としてはそれなりに実績があるらしいけれど、平民だから舞踏会には参加できないらしいわ。
彼女が参加出来なかった事にホッとしてしまうのは、やはり私はエイブラムさんの事が好きなのかしら?
時々騎士団の訓練場に行ってエイブラムさんの勇姿を眺めているんだけれど、そういう時は決まってお兄様が現れてエイブラムさんと模擬戦を始めるのよね。
お兄様もそれなりに鍛えていらっしゃるけれど、やはり騎士団長を務めているエイブラムさんには敵わないのよね。
それなのに懲りずにエイブラムさんと対戦するのは、私にカッコいい所を見せたいからか、怪我をして私に治療してもらいたいからか…。
多分両方ね。
本当に面倒臭いったらないわね。
この世界に戻って来て、ようやく王宮での生活にも慣れてきた。
侯爵夫人がお母様の代わりをしてくださるので、女性だけのお茶会でも何とかやっていけるわ。
時々グレンダさんに遭遇するけれど、彼女は私のエイブラムさんへの気持ちを知っているみたいで、いつも挑発的な視線を私に投げてくる。
そんなの無視すればいいってわかっているんだけど、それが出来たら苦労はしないわよ。
そんな事を考えていると、案の定向こうからグレンダさんが歩いて来るのが見えた。
このまま回れ右して顔を見ないようにしたいけれど、グレンダさんも私の姿を認識したようで、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
向こうから声をかけられないから、そのまま知らん顔で通り過ぎればいいのに、つい声をかけてしまった。
一緒にいるセアラと護衛騎士の目を気にしてしまったせいだわ。
「こんにちは、ご機嫌いかがかしら?」
けれど、これは単なる社交辞令で大した意味はない。
グレンダさんもそれをわかっているらしく、フッと鼻で笑う。
「これはこれは、アリス王女様におかれてはご機嫌麗しゅう」
そのまま通り過ぎようとした所、グレンダさんが持っていた本の一冊を私に差し出してきた。
「そう言えば、アリス王女様にご覧いただきたい本がありましたの。よろしければお持ちください」
差し出された本をセアラが受け取り、軽く中身を確認した後で私に渡してくれた。
表紙のタイトルからすると魔術に関する本のようだ。
「ありがとう。後で読ませていただくわ」
私は本をセアラに持ってもらいその場を後にする。
グレンダさんが意味ありげな笑みを私に向けている事も知らずに…。
そのまま自分の部屋に戻り、くつろいでいるとセアラがお茶を入れてくれた。
「…ありがとう」
グレンダさんと出会った事は思った以上に緊張していたようだ。
お茶を一口飲んで、ようやくひと心地つけたような気がした。
「アリス様。こちらの本はいかがなさいますか?」
セアラが先程グレンダさんから渡された本をテーブルの上に置いた。
せっかくだから、少し読んでみようかしら。
グレンダさんには思うところはあるけれど、だからといって本に罪はないものね。
パラパラと本を捲っていると、一箇所ほどページが引っ付いている所があった。
「あら、どうしたのかしら?」
いきなり引っ張ると本が破れてしまうかもしれないので、ゆっくりと慎重にページを引き剥がす。
ペリペリッと軽い音がして本のページが剥がされた。
その瞬間、カッと眩い光が私を包んだ。
それと同時に焦ったようなセアラの声が私を呼ぶ。
私はそのまま意識を失った。
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