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36 エイブラムの目覚め
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私がエイブラムさんにキスをした瞬間、辺りは阿鼻叫喚となった。
「アリス! 何をしている!」
「アリス! 僕にもキスを!」
「「アリス様! お止めください!」」
変な事を言っている人がいるけど、あの声はお兄様かしらね。
そんな事はお構いなしに私はエイブラムさんにキスをしている。
ファーストキスはレモンの味とかって言うけど、そんな事はないわね。
だけどエイブラムさんの唇って柔らかい。
もっと堪能していたかったのに、お父様に引き剥がされたわ、残念!
「アリス! 一体どうしてこんな事を! 説明してくれ!」
お父様ったら涙目でブチ切れてるわ。
まあ、自分の娘が目の前で他の男にキスをしていたら当然でしょうけどね。
「すみません、お父様。グレンダさんがエイブラムさんにキスをして、エイブラムさんを操っていたみたいなので、私がキスをしたら目が覚めるかもと思ったんです」
決してエイブラムさんとキスがしたいためだけにしたんじゃないと強調してみたけれど伝わったかしら。
それでも一向に目覚める気配がないエイブラムさんに、もう一回キスをしようかと身を乗り出したところで、エイブラムさんの瞼がピクリと動いた。
「エイブラム、気が付いたの?」
侯爵夫人が呼びかけると、薄っすらとエイブラムさんが目を開けた。
最初は焦点が合っていなかった目も、徐々に輝きを取り戻していった。
「…ここは? …私は何を…」
エイブラムさんの顔がこちらを向いて、私と目が合った。
「…アリス様?」
良かったわ。
私が誰だかわかっているみたい。
「誰?」って聞かれたら立ち直れないところだったわ。
「エイブラム。君はアリスとグレンダと一緒に倒れていたんだが、何があったのか覚えているか?」
お父様がエイブラムさんに質問をしたけれど、エイブラムさんはお父様がいる事に驚いていたわ。
「…国王陛下? それにアンドリュー王子まで…。一体何があったのですか?」
身体を起こそうとしたエイブラムさんだったが、すぐにまたベッドに横たわった。
「無理をするな。そのままで構わないからエイブラムが覚えている事を教えてくれ」
お父様に諭されてエイブラムさんはポツリポツリと話しだした。
「騎士団長室にいると、突然グレンダがやってきたんです。今日は魔術師団との演習も予定されていないし、何か用かと聞くと、いきなり…」
そこでエイブラムさんが言い淀んだ。
おそらくグレンダさんにキスをされた事をこの場で口にしていいものかどうか迷っているのだろう。
「構わん、続けなさい」
お父様に促されてエイブラムさんは軽く咳払いをすると話し始めた。
「いきなり、グレンダが私の首に腕を回してキスをしてきました。驚いて引き剥がそうとしたのですが、頭がぼんやりとしてきて…。その後の事は覚えていません。気が付いたらこのベッドの上でした」
どうやらグレンダさんは、私に本を渡した後で騎士団長室に向かったみたいね。
「そうか」
お父様は頷いたものの、厳しい目をエイブラムさんに向けている。
「私達がエイブラムを発見した時はエイブラムの剣は鞘から抜かれていた。そしてその先には倒れたアリスがいた。幸いアリスに怪我は無かったが…。これを君はどう説明する?」
お父様ははっきりとは告げなかったが、状況から考えてエイブラムさんが私に剣を向けたのは明白だ。
エイブラムさんもそれを察したのだろう。
ノロノロと身体を起こすとベッドから下りて床に跪き土下座をした。
「アリス様。操られていたとはいえ、あなた様に刃を向けたのは紛れもない事実です。いかような処罰でもお受けいたします」
わかってはいたけれど、実際にエイブラムさんの口からそんな言葉を告げられると辛いわ。
「処罰については追って沙汰を下します。まずは元の体調に戻すのを先決にしてください」
私は土下座したままのエイブラムさんを残し、お父様とお兄様を伴って部屋を後にした。
「アリス! 何をしている!」
「アリス! 僕にもキスを!」
「「アリス様! お止めください!」」
変な事を言っている人がいるけど、あの声はお兄様かしらね。
そんな事はお構いなしに私はエイブラムさんにキスをしている。
ファーストキスはレモンの味とかって言うけど、そんな事はないわね。
だけどエイブラムさんの唇って柔らかい。
もっと堪能していたかったのに、お父様に引き剥がされたわ、残念!
「アリス! 一体どうしてこんな事を! 説明してくれ!」
お父様ったら涙目でブチ切れてるわ。
まあ、自分の娘が目の前で他の男にキスをしていたら当然でしょうけどね。
「すみません、お父様。グレンダさんがエイブラムさんにキスをして、エイブラムさんを操っていたみたいなので、私がキスをしたら目が覚めるかもと思ったんです」
決してエイブラムさんとキスがしたいためだけにしたんじゃないと強調してみたけれど伝わったかしら。
それでも一向に目覚める気配がないエイブラムさんに、もう一回キスをしようかと身を乗り出したところで、エイブラムさんの瞼がピクリと動いた。
「エイブラム、気が付いたの?」
侯爵夫人が呼びかけると、薄っすらとエイブラムさんが目を開けた。
最初は焦点が合っていなかった目も、徐々に輝きを取り戻していった。
「…ここは? …私は何を…」
エイブラムさんの顔がこちらを向いて、私と目が合った。
「…アリス様?」
良かったわ。
私が誰だかわかっているみたい。
「誰?」って聞かれたら立ち直れないところだったわ。
「エイブラム。君はアリスとグレンダと一緒に倒れていたんだが、何があったのか覚えているか?」
お父様がエイブラムさんに質問をしたけれど、エイブラムさんはお父様がいる事に驚いていたわ。
「…国王陛下? それにアンドリュー王子まで…。一体何があったのですか?」
身体を起こそうとしたエイブラムさんだったが、すぐにまたベッドに横たわった。
「無理をするな。そのままで構わないからエイブラムが覚えている事を教えてくれ」
お父様に諭されてエイブラムさんはポツリポツリと話しだした。
「騎士団長室にいると、突然グレンダがやってきたんです。今日は魔術師団との演習も予定されていないし、何か用かと聞くと、いきなり…」
そこでエイブラムさんが言い淀んだ。
おそらくグレンダさんにキスをされた事をこの場で口にしていいものかどうか迷っているのだろう。
「構わん、続けなさい」
お父様に促されてエイブラムさんは軽く咳払いをすると話し始めた。
「いきなり、グレンダが私の首に腕を回してキスをしてきました。驚いて引き剥がそうとしたのですが、頭がぼんやりとしてきて…。その後の事は覚えていません。気が付いたらこのベッドの上でした」
どうやらグレンダさんは、私に本を渡した後で騎士団長室に向かったみたいね。
「そうか」
お父様は頷いたものの、厳しい目をエイブラムさんに向けている。
「私達がエイブラムを発見した時はエイブラムの剣は鞘から抜かれていた。そしてその先には倒れたアリスがいた。幸いアリスに怪我は無かったが…。これを君はどう説明する?」
お父様ははっきりとは告げなかったが、状況から考えてエイブラムさんが私に剣を向けたのは明白だ。
エイブラムさんもそれを察したのだろう。
ノロノロと身体を起こすとベッドから下りて床に跪き土下座をした。
「アリス様。操られていたとはいえ、あなた様に刃を向けたのは紛れもない事実です。いかような処罰でもお受けいたします」
わかってはいたけれど、実際にエイブラムさんの口からそんな言葉を告げられると辛いわ。
「処罰については追って沙汰を下します。まずは元の体調に戻すのを先決にしてください」
私は土下座したままのエイブラムさんを残し、お父様とお兄様を伴って部屋を後にした。
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