43 / 52
43 散策
しおりを挟む
お父様は私の手を取って庭園を歩き出す。
その手を振り払うわけにもいかずに私はそのまま大人しく付いて行くのだけれど、そんな私達の後ろをエイブラムさんは何も言わずに歩いている。
「綺麗だろう、ここの庭園は。クリスティンが好きな花を揃えてみたんだよ」
お父様が歩きながら花の名前を教えてくれる。
…花の名前までちゃんと覚えているなんて、本当にお父様はお母様が好きだったのね。
そんなふうにゆったりと庭園を歩く私達の前に立ちはだかる人物が現れた。
「陛下。お部屋に籠もっておいでだと伺ったのですが、どうやら庭園を散策されるまで回復されたようですね。ですが、それよりも先に目を通すべき書類が山積みになっている事をお忘れではないですよね」
冷ややかな目の宰相サマが、ジロリとお父様を見つめる。
「ワ、ワスレテナイヨ…」
お父様、声が上ずってますわ。
「アリス様、誠に申し訳ございませんが陛下は返していただきますね」
宰相はそう私に断ると、お父様を引きずるように連れ去ってしまった。
二人共、仕事を先に終わらせてしまえばいいのに、どうしてそれよりも私を優先にするのかしら。
気を取り直して後ろのエイブラムさんを振り返ると、その後方から誰かが近付いて来た。
「団長、ここにいらっしゃったのですね。せっかく王宮におられるんだから一緒に訓練しましょう」
いい笑顔で副団長さんがエイブラムさんに声をかける。
「えっ、いや、私は…」
「アリス様、それでは団長をお借りしますね」
エイブラムさんの返事も聞かずに副団長さんは、エイブラムさんの背中を押して訓練場の方へと押しやっていく。
…副団長さんもなかなか鍛えていらっしゃるわ。
だけど、どうして私の周りの男性は有無を言わさずに連れ去られてしまうのかしら?
一人ポツンと庭園に残された私にセアラが声をかけて来た。
「アリス様、お部屋に戻られますか?」
今まで側にいた事を気付かせないなんて、流石はお母様の侍女だっただけあるわね。
「そうね。一人でここにいても仕方がないものね」
私はセアラを伴って自分の部屋に戻るといつものように読書を始めた。
翌日、朝食を終えた後で部屋に戻ると、セアラが一通の手紙を持って来た。
「アリス様、ジェンクス侯爵夫人からお手紙を預かって参りました」
差出人は確かにエイブラムさんのお母様の名前があった。
開封してみると、お茶会を開催するので出席してほしいと書いてある。
「ジェンクス侯爵夫人からお茶会のお誘いなのだけれど、出席しても大丈夫かしら?」
まだそんなに貴族同士のお付き合いに慣れていない私が参加しても大丈夫なのかしらね。
セアラに尋ねてみると、私を安心させるように頷いてくれる。
「ガブリエラ様でしたらクリスティン様のご友人でしたから、アリス様の事もご指導してくださいます」
どうやら私の為にセアラが侯爵夫人にお願いしたみたいね。
セアラはお母様の侍女ではあるけれど、元々はお母様の同級生で子爵令嬢だったらしい。
実家が没落して行くあてが無くなったセアラをお母様が侍女に引き立てたそうよ。
セアラに教えを乞いながら侯爵夫人に手紙の返事を書いて届けてもらう。
それからお茶会に着ていく衣装を吟味していると、何故かお父様とお兄様が顔を出してきた。
「アリス、こちらのドレスがいいんじゃないか?」
「いえ、父上。それは少し地味です。アリスにはやはりこちらの華やかなドレスの方が似合います」
「何を言う。それよりはこちらの方が可憐で可愛らしいぞ!」
「いやいや、父上。それよりもこちらの方が…」
私とセアラをそっちのけでお父様とお兄様があれこれと口を出してきては、ドレスを私に着せようとする。
二人の暴走ぶりに他の侍女達もあっけに取られてドン引き状態だ。
誰か、あの二人をこの場から連れ出してちょうだい!
その手を振り払うわけにもいかずに私はそのまま大人しく付いて行くのだけれど、そんな私達の後ろをエイブラムさんは何も言わずに歩いている。
「綺麗だろう、ここの庭園は。クリスティンが好きな花を揃えてみたんだよ」
お父様が歩きながら花の名前を教えてくれる。
…花の名前までちゃんと覚えているなんて、本当にお父様はお母様が好きだったのね。
そんなふうにゆったりと庭園を歩く私達の前に立ちはだかる人物が現れた。
「陛下。お部屋に籠もっておいでだと伺ったのですが、どうやら庭園を散策されるまで回復されたようですね。ですが、それよりも先に目を通すべき書類が山積みになっている事をお忘れではないですよね」
冷ややかな目の宰相サマが、ジロリとお父様を見つめる。
「ワ、ワスレテナイヨ…」
お父様、声が上ずってますわ。
「アリス様、誠に申し訳ございませんが陛下は返していただきますね」
宰相はそう私に断ると、お父様を引きずるように連れ去ってしまった。
二人共、仕事を先に終わらせてしまえばいいのに、どうしてそれよりも私を優先にするのかしら。
気を取り直して後ろのエイブラムさんを振り返ると、その後方から誰かが近付いて来た。
「団長、ここにいらっしゃったのですね。せっかく王宮におられるんだから一緒に訓練しましょう」
いい笑顔で副団長さんがエイブラムさんに声をかける。
「えっ、いや、私は…」
「アリス様、それでは団長をお借りしますね」
エイブラムさんの返事も聞かずに副団長さんは、エイブラムさんの背中を押して訓練場の方へと押しやっていく。
…副団長さんもなかなか鍛えていらっしゃるわ。
だけど、どうして私の周りの男性は有無を言わさずに連れ去られてしまうのかしら?
一人ポツンと庭園に残された私にセアラが声をかけて来た。
「アリス様、お部屋に戻られますか?」
今まで側にいた事を気付かせないなんて、流石はお母様の侍女だっただけあるわね。
「そうね。一人でここにいても仕方がないものね」
私はセアラを伴って自分の部屋に戻るといつものように読書を始めた。
翌日、朝食を終えた後で部屋に戻ると、セアラが一通の手紙を持って来た。
「アリス様、ジェンクス侯爵夫人からお手紙を預かって参りました」
差出人は確かにエイブラムさんのお母様の名前があった。
開封してみると、お茶会を開催するので出席してほしいと書いてある。
「ジェンクス侯爵夫人からお茶会のお誘いなのだけれど、出席しても大丈夫かしら?」
まだそんなに貴族同士のお付き合いに慣れていない私が参加しても大丈夫なのかしらね。
セアラに尋ねてみると、私を安心させるように頷いてくれる。
「ガブリエラ様でしたらクリスティン様のご友人でしたから、アリス様の事もご指導してくださいます」
どうやら私の為にセアラが侯爵夫人にお願いしたみたいね。
セアラはお母様の侍女ではあるけれど、元々はお母様の同級生で子爵令嬢だったらしい。
実家が没落して行くあてが無くなったセアラをお母様が侍女に引き立てたそうよ。
セアラに教えを乞いながら侯爵夫人に手紙の返事を書いて届けてもらう。
それからお茶会に着ていく衣装を吟味していると、何故かお父様とお兄様が顔を出してきた。
「アリス、こちらのドレスがいいんじゃないか?」
「いえ、父上。それは少し地味です。アリスにはやはりこちらの華やかなドレスの方が似合います」
「何を言う。それよりはこちらの方が可憐で可愛らしいぞ!」
「いやいや、父上。それよりもこちらの方が…」
私とセアラをそっちのけでお父様とお兄様があれこれと口を出してきては、ドレスを私に着せようとする。
二人の暴走ぶりに他の侍女達もあっけに取られてドン引き状態だ。
誰か、あの二人をこの場から連れ出してちょうだい!
1
あなたにおすすめの小説
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる