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第2章
第49話 思わぬ失敗
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「動き出したみたいだな」
人を魔物の姿へ変化させる薬を作っている研究所。
限たちは、そのなかで研究をおこなっていた1人の男性を捕まえた。
この男性研究員が言うには、自分は買い出しに出ただけで、戻らなければ他の者たちは逃走を開始するという話だった。
ようやく見つけた自分を実験体として苦しめた者たち。
他の研究員たちの居場所を吐かせるためにも、逃がすわけにはいかない。
そのため、限は多くの冒険者と共に夕方から研究所を囲んでいたのだが、ようやく動きがあった。
建物のなかから誰か出てくるのが感じ取れたのだ。
「女が2人のようだな」
建物から出てきたのは女が2人。
研究所内には2人の女性研究員がいるという話だったため、その2人が出てきたようだ。
女1人でここから別の地へ移動するのが危険と判断して、2人で行動するつもりなのだろう。
「それぞれ行動を開始してくれ」
「了解!」
先に移動を開始した2人に、予定通り女性冒険者たちが尾行を開始する。
少し離れた所で2人同時に捕縛する予定だ。
彼女たちに任せ、限はそのまま研究所から出てくる者を待った。
話によると、まだ研究所には男が2名残っているはずだ。
「1人出てきた」
残っている男2名のうち、片方が出てきた。
それを確認したのか、冒険者たち数名がその男の後を尾行していく。
「後1人だ。もう乗り込んでしまおう」
限と共に研究所を最後まで見張っていた冒険者の男が呟く。
残っているのは1人で、 研究員ということはたいした戦闘力はないはず。
それならば、乗り込んで捕まえてしまえば良いと判断したようだ。
「いや、待った。研究所内に何があるか分からない。もう少し様子を見よう」
その冒険者の言葉に、限が待ったをかける。
魔物の研究をしている施設なのだから、様々な薬品や仕掛けなどが施されているはずだ。
バレずになかに入って捕まえることができれば良いが、見つかったら面倒なことになる。
一定時間とは言え、彼らには人間を魔物化させる薬を所持している。
それを飲む間を与えないためにも、出てくるのを待った方が良い。
「何ビビってんだ。静かに入ればバレないって」
「バカ! 乗り込んだら……」
限の制止の言葉を無視して、冒険者の男は仲間に指示を出す。
その指示を受けた者たちが、足音を潜ませ研究所内へと入っていった。
今回の作戦に際し、ここのギルマスから冒険者たちを借り受けた。
しかし、この冒険者を連れてきたのは間違いだった。
この冒険者は、顔を合わせた時から態度に違和感を感じていた。
この作戦の指揮は限に任されているのだが、この男はそれを納得していなかったのかもしれない。
自分よりランクが下の者の言うことを聞きたくないとかいう小さなプライドによって、最後になって指示を無視したようだ。
なかに入って行った者たちを追いかけるように、限もなかへと入ろうと建物のへと向かっていった。
“ドンッ!!”
「っ!?」
限が建物の扉に手をかけた所で、建物の壁が破壊される音が響き渡る。
その音と共に、なかへ侵入した冒険者たちが外へと吹き飛んできた。
「ぐっ!!」「がっ!!」
飛び出してきた冒険者たちは、どこか痛めたらしく呻き声を漏らしている。
派手に吹き飛んでいたから、かなりの大怪我かと思ったが、たいしたことなかったようだ。
「グウゥ……」
空いた建物の穴から唸り声が聞こえてくる。
そちらに目を向けてみると、日が暮れて薄暗くなったところに狼の姿をした生物が現れた。
「わざと遅れて出ようと思ったのは正解だったな。まさか冒険者に見つかっていたとは」
「……薬を使われたか」
狼が言葉をしゃべる。
しかも2足歩行している所を見ると、なかに残っていた研究員が薬を使ったのだと限は理解した。
魔物化したら戦闘力が低い者でもかなり危険な力を得ると分かっていたのに、甘く見た冒険者たちの勇み足がこのような結果になってしまった。
「……フッ! 所詮ただの狼だろ? 俺が倒してやる!」
「おいっ!」
先程限の意見を無視した冒険者は、自分のせいで仲間の冒険者が怪我をしたというのに、まだ犯した間違いを反省していないようだ。
ギルマスにより、今回集められた冒険者には色々と説明がされていた。
隣町の冒険者たちが殺られ、限が倒したということも伝えられている。
それをこの男は間違った形で受け取ったようだ。
D級の限が倒したということは、A級の自分なら余裕で倒せると解釈していた。
そのため、限の指示に従ったりするのも不快に思っていたのかもしれないが、この場では最悪の判断だ。
「へぶっ!!」
「……フッ! 雑魚が」
剣を片手に狼に突っ込んで行く冒険者の男。
それに対し、狼男は自分から接近して拳を振るう。
冒険者の男はその攻撃に反応できず、顔面に見事な裏拳を受けて吹き飛んで行った。
そのまま地面を何バウンドか弾むと、冒険者の男は動かなくなった。
一応小刻みに動いている所を見ると、死んではいないようだ。
この結果に、狼はあまりにも弱すぎたため、おかしそうに笑みを浮かべながら呟いた。
「あのバカのことはいい。あんたらは怪我人連れて逃げてくれ」
「わ、分かった」「あぁ……」
A級冒険者でも危険だとギルマスから教えられていたのに、ああなったのはあの男の責任だ。
なので、限はたいして心配をしていない。
それよりも、狼へと変身したこの研究員を止めないといけない。
そのため、残っていた無傷の冒険者たちに、怪我人の回収を指示する。
彼らはちゃんとギルマスの指示を聞いていたため、変身してしまった研究員の相手は限に任せ、怪我人と共に退散することにした。
「……何だ? 逃げるなら追わないのだが、お前だけ残って戦うということか?」
限の指示を受けた者たちが、怪我人に手を貸してこの場から離れていく。
狼はそれをただ眺めているだけで、追いかけようとはしない。
それなのに残った限に、狼は不思議そうに問いかけた。
先程冒険者をあっさり倒したところを見ていたはずだ。
なのに、まるで自分と戦うつもりのような目をしていたからだ。
「その通りだ。他に4人いることだし、お前は殺しても構わないな」
「……ハハ、ハーハッハ!! この状態の俺を殺すだと?」
「あぁ……」
どうやらこの男にはさっきの動きは見えていなかったのだと分かった狼は、戦うだけでなく殺すとまで言う限に大きな声をあげて笑う。
そんな狼のことなど気にせず、限は刀を抜いて狼へと構えを取ったのだった。
人を魔物の姿へ変化させる薬を作っている研究所。
限たちは、そのなかで研究をおこなっていた1人の男性を捕まえた。
この男性研究員が言うには、自分は買い出しに出ただけで、戻らなければ他の者たちは逃走を開始するという話だった。
ようやく見つけた自分を実験体として苦しめた者たち。
他の研究員たちの居場所を吐かせるためにも、逃がすわけにはいかない。
そのため、限は多くの冒険者と共に夕方から研究所を囲んでいたのだが、ようやく動きがあった。
建物のなかから誰か出てくるのが感じ取れたのだ。
「女が2人のようだな」
建物から出てきたのは女が2人。
研究所内には2人の女性研究員がいるという話だったため、その2人が出てきたようだ。
女1人でここから別の地へ移動するのが危険と判断して、2人で行動するつもりなのだろう。
「それぞれ行動を開始してくれ」
「了解!」
先に移動を開始した2人に、予定通り女性冒険者たちが尾行を開始する。
少し離れた所で2人同時に捕縛する予定だ。
彼女たちに任せ、限はそのまま研究所から出てくる者を待った。
話によると、まだ研究所には男が2名残っているはずだ。
「1人出てきた」
残っている男2名のうち、片方が出てきた。
それを確認したのか、冒険者たち数名がその男の後を尾行していく。
「後1人だ。もう乗り込んでしまおう」
限と共に研究所を最後まで見張っていた冒険者の男が呟く。
残っているのは1人で、 研究員ということはたいした戦闘力はないはず。
それならば、乗り込んで捕まえてしまえば良いと判断したようだ。
「いや、待った。研究所内に何があるか分からない。もう少し様子を見よう」
その冒険者の言葉に、限が待ったをかける。
魔物の研究をしている施設なのだから、様々な薬品や仕掛けなどが施されているはずだ。
バレずになかに入って捕まえることができれば良いが、見つかったら面倒なことになる。
一定時間とは言え、彼らには人間を魔物化させる薬を所持している。
それを飲む間を与えないためにも、出てくるのを待った方が良い。
「何ビビってんだ。静かに入ればバレないって」
「バカ! 乗り込んだら……」
限の制止の言葉を無視して、冒険者の男は仲間に指示を出す。
その指示を受けた者たちが、足音を潜ませ研究所内へと入っていった。
今回の作戦に際し、ここのギルマスから冒険者たちを借り受けた。
しかし、この冒険者を連れてきたのは間違いだった。
この冒険者は、顔を合わせた時から態度に違和感を感じていた。
この作戦の指揮は限に任されているのだが、この男はそれを納得していなかったのかもしれない。
自分よりランクが下の者の言うことを聞きたくないとかいう小さなプライドによって、最後になって指示を無視したようだ。
なかに入って行った者たちを追いかけるように、限もなかへと入ろうと建物のへと向かっていった。
“ドンッ!!”
「っ!?」
限が建物の扉に手をかけた所で、建物の壁が破壊される音が響き渡る。
その音と共に、なかへ侵入した冒険者たちが外へと吹き飛んできた。
「ぐっ!!」「がっ!!」
飛び出してきた冒険者たちは、どこか痛めたらしく呻き声を漏らしている。
派手に吹き飛んでいたから、かなりの大怪我かと思ったが、たいしたことなかったようだ。
「グウゥ……」
空いた建物の穴から唸り声が聞こえてくる。
そちらに目を向けてみると、日が暮れて薄暗くなったところに狼の姿をした生物が現れた。
「わざと遅れて出ようと思ったのは正解だったな。まさか冒険者に見つかっていたとは」
「……薬を使われたか」
狼が言葉をしゃべる。
しかも2足歩行している所を見ると、なかに残っていた研究員が薬を使ったのだと限は理解した。
魔物化したら戦闘力が低い者でもかなり危険な力を得ると分かっていたのに、甘く見た冒険者たちの勇み足がこのような結果になってしまった。
「……フッ! 所詮ただの狼だろ? 俺が倒してやる!」
「おいっ!」
先程限の意見を無視した冒険者は、自分のせいで仲間の冒険者が怪我をしたというのに、まだ犯した間違いを反省していないようだ。
ギルマスにより、今回集められた冒険者には色々と説明がされていた。
隣町の冒険者たちが殺られ、限が倒したということも伝えられている。
それをこの男は間違った形で受け取ったようだ。
D級の限が倒したということは、A級の自分なら余裕で倒せると解釈していた。
そのため、限の指示に従ったりするのも不快に思っていたのかもしれないが、この場では最悪の判断だ。
「へぶっ!!」
「……フッ! 雑魚が」
剣を片手に狼に突っ込んで行く冒険者の男。
それに対し、狼男は自分から接近して拳を振るう。
冒険者の男はその攻撃に反応できず、顔面に見事な裏拳を受けて吹き飛んで行った。
そのまま地面を何バウンドか弾むと、冒険者の男は動かなくなった。
一応小刻みに動いている所を見ると、死んではいないようだ。
この結果に、狼はあまりにも弱すぎたため、おかしそうに笑みを浮かべながら呟いた。
「あのバカのことはいい。あんたらは怪我人連れて逃げてくれ」
「わ、分かった」「あぁ……」
A級冒険者でも危険だとギルマスから教えられていたのに、ああなったのはあの男の責任だ。
なので、限はたいして心配をしていない。
それよりも、狼へと変身したこの研究員を止めないといけない。
そのため、残っていた無傷の冒険者たちに、怪我人の回収を指示する。
彼らはちゃんとギルマスの指示を聞いていたため、変身してしまった研究員の相手は限に任せ、怪我人と共に退散することにした。
「……何だ? 逃げるなら追わないのだが、お前だけ残って戦うということか?」
限の指示を受けた者たちが、怪我人に手を貸してこの場から離れていく。
狼はそれをただ眺めているだけで、追いかけようとはしない。
それなのに残った限に、狼は不思議そうに問いかけた。
先程冒険者をあっさり倒したところを見ていたはずだ。
なのに、まるで自分と戦うつもりのような目をしていたからだ。
「その通りだ。他に4人いることだし、お前は殺しても構わないな」
「……ハハ、ハーハッハ!! この状態の俺を殺すだと?」
「あぁ……」
どうやらこの男にはさっきの動きは見えていなかったのだと分かった狼は、戦うだけでなく殺すとまで言う限に大きな声をあげて笑う。
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