48 / 179
第2章
第48話 拿捕
しおりを挟む
「ったく! 毎日毎日あいつらよく平気だな」
研究所の中から、1人の男が出てくる。
周りに人がいないからか、独り言をつぶやいている。
「研究ばっかしてんのもさすがに飽きてきたし、このままトンズラかましちまうかな」
頭を掻きながら、ポケットから取り出した箱からタバコを1本取って口に咥える。
そして、咥えタバコをしながら商店街の方へと向かっていった。
「トンズラするならもっと早くそうした方がよかったな?」
「っ!?」
商店街までもう少しの距離の所で、路地裏に入った男の背後から声がかけられる。
さっきの独り言を聞かれていたことを知り、男は咥えていたタバコを落として背後へと振り向いた。
「だ、誰……」
「動くな!!」
声をかけてきた男の顔には心当たりがない。
男は思わず問いかけようとしたが、すぐにそれを止めることになった。
またも背後から声をかけられたのだ。
しかも、今度はナイフを首に添えられての命令だ。
そうされては命令に従うしかなく、男は黙ってそれに従った。
その間に両手を縛られ、猿轡までされる始末。
訳が分からないまま、男は拘束されるしかなかった。
「このまま付いて来てもらおう」
「…………?」
何でこんなことになっているのか分からず、男は納得できないという表情で指示に従う。
そしてそのまま、男は冒険者ギルドへと連行されて行った。
「これか?」
「っ!!」
ギルドに連れて来られ、ようやく男は自分を拘束した人間が何者なのかを理解した。
そして、身体検査をされて、ポケットに隠していた薬を奪い取られたことで、ギルドが何を理由に自分を拘束したのかを理解した。
「こいつを飲むと数時間の間魔物へと変貌するって話だな?」
「っ!?」
しかも、薬の作用まで知られている。
完成するまでは誰にも知られないようにするのが、研究員5人の間で交わされた盟約だったはず。
つまりは、自分以外の人間がそれを破ったということなのだろうか。
それとも、ギルドが密かに情報を掴んだということなのだろうか。
何にしても、この状況では抵抗する術がない。
「……さて、あの研究所のことを洗いざらい話してもらおう」
「…………」
ギルドの人間が首輪を出して話しかけてくる。
奴隷の首輪だ。
どうやら隠し立てはできそうにないようだ。
男は諦めてされるがままになったのだった。
「捕まえた男は、買い出しに出ただけのようだ」
「そうすか……」
ギルマスの説明に限が頷く。
5人の研究員は、いざ捕まえに動いてみるとなかなか外に出てこなかった。
そしてようやく捕まえたのが、今回の男だ。
南の町で暴れた男が持っていたのと同じような薬を所持していたことから、間違いなく無関係ではない。
このまま色々と尋問を続けるつもりだが、いつまでも帰ってこないとなると他の4人がどう動くか分からない。
念のため冒険者たちを配備しているが、これからどうするかを話し合うためにギルマスに呼び出されたのだ。
「買い出しから戻らない場合、4人がどう動くか聞いていますか?」
レラがギルマスに問いかける。
5人が人間を魔物に変える薬を研究しているのは最初から分かっていた。
限とレラへ人体実験をした研究員たちだ。
そんなのを作っていたとしても驚かない。
それよりも、確保が優先だ。
1人いなくなり、残り4人がどう動くかのことの方が気になる。
「恐らくこの場から去る準備を始めるだろうとのことだ」
「……なるほど」
この町にいた5人の研究員。
たしかに限とレラを苦しめた研究員に違いないだろう。
しかし、あの研究所にはもっと多くの研究員が存在していた。
北からたから南、南から北へと向かって来る途中で、研究員の情報は入ってこなかった。
そのため、研究員は揃って行動している可能性が濃厚だ。
研究内容が研究内容なので、それが当然と言ったところだろう。
他に漏れれば、自分たちに被害が及ぶ可能性があるからだ。
つまり、この町で密かに研究している5人は、限たちを苦しめた研究員たちと袂を分かったということだろう。
そんな事を、あのオリアーナが許すはずがない。
必ず追っ手をかけているはず。
1人が急にいなくなったことで、その追っ手に捕まったと勘違いするだろう。
そして、研究書類と共にいなくなるというのも頷ける。
「危険ではあるが、一網打尽にするしかないかもしれないな……」
「そうだな……」
バラバラに捕縛することで、魔物へ変異する薬を飲ませないことができると思っていたのだが、これで微妙になった。
固まって動かれれば魔物へ変異されて足舞うかもしれない。
そのため、こうなったら全員一気に捕まえるしかない。
「今日の夜に冒険者たちを集めて奇襲をかけようかと思うが?」
「分かった。協力しよう」
危険人物たちを、このまま他の地へ逃がすわけにはいかない。
逃げ出そうとするところを捕まえるしかないだろう。
そのために、ギルマスは信頼できる冒険者たちを集って攻めかかるつもりのようだ。
やつらに話を聞きたいのは限も一緒だ。
当然その捕縛に参加するつもりだ。
「奴らが誰にもバレずにこの町から脱出するには、朝になってから動き出すはず。そのまえに捕まえよう!」
「あぁ……」「はい」
夜中の捕縛作戦。
ギルマスの提案に、限とレラは頷きを返した。
「……どうかしましたか?」
作戦決行の夜までの間、宿屋で仮眠をとっておこうと戻る最中。
レラは限へと問いかけてきた。
「……何故そう思う?」
「ギルマスとの話の途中、限様が何か思う所があるように思えましたので……」
自分が考えていることをなんとなく見透かしているような問いかけに対し、限は問いで返した。
問い返しに対し、レラは僅かに顔に出ていたことを指摘してきた。
「よく分かったな?」
色々あって、今の体になったことで表情筋もおかしくなっている。
それが限自身分かっているので、表情に出たとしてもほんの僅かな反応でしかない。
なのに、レラが判断できたことが意外だ。
「それは限様の信者ですもの……」
「……そ、そうか……」
どうして分かったのかその理由を問いかけたのだが、レラは何だか誇らしげにしつつも照れたように返答してきた。
それが何だかストーカーチックな感情に思え、限は背筋に冷たい汗を流すことになった。
そのため、限は思わずどもるようなことになってしまった。
研究所の中から、1人の男が出てくる。
周りに人がいないからか、独り言をつぶやいている。
「研究ばっかしてんのもさすがに飽きてきたし、このままトンズラかましちまうかな」
頭を掻きながら、ポケットから取り出した箱からタバコを1本取って口に咥える。
そして、咥えタバコをしながら商店街の方へと向かっていった。
「トンズラするならもっと早くそうした方がよかったな?」
「っ!?」
商店街までもう少しの距離の所で、路地裏に入った男の背後から声がかけられる。
さっきの独り言を聞かれていたことを知り、男は咥えていたタバコを落として背後へと振り向いた。
「だ、誰……」
「動くな!!」
声をかけてきた男の顔には心当たりがない。
男は思わず問いかけようとしたが、すぐにそれを止めることになった。
またも背後から声をかけられたのだ。
しかも、今度はナイフを首に添えられての命令だ。
そうされては命令に従うしかなく、男は黙ってそれに従った。
その間に両手を縛られ、猿轡までされる始末。
訳が分からないまま、男は拘束されるしかなかった。
「このまま付いて来てもらおう」
「…………?」
何でこんなことになっているのか分からず、男は納得できないという表情で指示に従う。
そしてそのまま、男は冒険者ギルドへと連行されて行った。
「これか?」
「っ!!」
ギルドに連れて来られ、ようやく男は自分を拘束した人間が何者なのかを理解した。
そして、身体検査をされて、ポケットに隠していた薬を奪い取られたことで、ギルドが何を理由に自分を拘束したのかを理解した。
「こいつを飲むと数時間の間魔物へと変貌するって話だな?」
「っ!?」
しかも、薬の作用まで知られている。
完成するまでは誰にも知られないようにするのが、研究員5人の間で交わされた盟約だったはず。
つまりは、自分以外の人間がそれを破ったということなのだろうか。
それとも、ギルドが密かに情報を掴んだということなのだろうか。
何にしても、この状況では抵抗する術がない。
「……さて、あの研究所のことを洗いざらい話してもらおう」
「…………」
ギルドの人間が首輪を出して話しかけてくる。
奴隷の首輪だ。
どうやら隠し立てはできそうにないようだ。
男は諦めてされるがままになったのだった。
「捕まえた男は、買い出しに出ただけのようだ」
「そうすか……」
ギルマスの説明に限が頷く。
5人の研究員は、いざ捕まえに動いてみるとなかなか外に出てこなかった。
そしてようやく捕まえたのが、今回の男だ。
南の町で暴れた男が持っていたのと同じような薬を所持していたことから、間違いなく無関係ではない。
このまま色々と尋問を続けるつもりだが、いつまでも帰ってこないとなると他の4人がどう動くか分からない。
念のため冒険者たちを配備しているが、これからどうするかを話し合うためにギルマスに呼び出されたのだ。
「買い出しから戻らない場合、4人がどう動くか聞いていますか?」
レラがギルマスに問いかける。
5人が人間を魔物に変える薬を研究しているのは最初から分かっていた。
限とレラへ人体実験をした研究員たちだ。
そんなのを作っていたとしても驚かない。
それよりも、確保が優先だ。
1人いなくなり、残り4人がどう動くかのことの方が気になる。
「恐らくこの場から去る準備を始めるだろうとのことだ」
「……なるほど」
この町にいた5人の研究員。
たしかに限とレラを苦しめた研究員に違いないだろう。
しかし、あの研究所にはもっと多くの研究員が存在していた。
北からたから南、南から北へと向かって来る途中で、研究員の情報は入ってこなかった。
そのため、研究員は揃って行動している可能性が濃厚だ。
研究内容が研究内容なので、それが当然と言ったところだろう。
他に漏れれば、自分たちに被害が及ぶ可能性があるからだ。
つまり、この町で密かに研究している5人は、限たちを苦しめた研究員たちと袂を分かったということだろう。
そんな事を、あのオリアーナが許すはずがない。
必ず追っ手をかけているはず。
1人が急にいなくなったことで、その追っ手に捕まったと勘違いするだろう。
そして、研究書類と共にいなくなるというのも頷ける。
「危険ではあるが、一網打尽にするしかないかもしれないな……」
「そうだな……」
バラバラに捕縛することで、魔物へ変異する薬を飲ませないことができると思っていたのだが、これで微妙になった。
固まって動かれれば魔物へ変異されて足舞うかもしれない。
そのため、こうなったら全員一気に捕まえるしかない。
「今日の夜に冒険者たちを集めて奇襲をかけようかと思うが?」
「分かった。協力しよう」
危険人物たちを、このまま他の地へ逃がすわけにはいかない。
逃げ出そうとするところを捕まえるしかないだろう。
そのために、ギルマスは信頼できる冒険者たちを集って攻めかかるつもりのようだ。
やつらに話を聞きたいのは限も一緒だ。
当然その捕縛に参加するつもりだ。
「奴らが誰にもバレずにこの町から脱出するには、朝になってから動き出すはず。そのまえに捕まえよう!」
「あぁ……」「はい」
夜中の捕縛作戦。
ギルマスの提案に、限とレラは頷きを返した。
「……どうかしましたか?」
作戦決行の夜までの間、宿屋で仮眠をとっておこうと戻る最中。
レラは限へと問いかけてきた。
「……何故そう思う?」
「ギルマスとの話の途中、限様が何か思う所があるように思えましたので……」
自分が考えていることをなんとなく見透かしているような問いかけに対し、限は問いで返した。
問い返しに対し、レラは僅かに顔に出ていたことを指摘してきた。
「よく分かったな?」
色々あって、今の体になったことで表情筋もおかしくなっている。
それが限自身分かっているので、表情に出たとしてもほんの僅かな反応でしかない。
なのに、レラが判断できたことが意外だ。
「それは限様の信者ですもの……」
「……そ、そうか……」
どうして分かったのかその理由を問いかけたのだが、レラは何だか誇らしげにしつつも照れたように返答してきた。
それが何だかストーカーチックな感情に思え、限は背筋に冷たい汗を流すことになった。
そのため、限は思わずどもるようなことになってしまった。
1
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる