復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

文字の大きさ
103 / 179
第4章

第103話 元婚約者

しおりを挟む
「ハッ!!」

「っ!」

 ニールが作り出した結界内にて、レラと奈美子が戦闘を繰り広げていた。
 しかし、その攻防は一方的な展開になっていた。

「さっきの威勢はどこ行ったの!?」

「…………」

 攻める美奈子が笑みを浮かべて問いかけるが、守るレラは返答せず無言で受け流す。
 限が敷島の地から去ってからも、訓練を続けていたのだろう。
 美奈子の剣の腕は、敷島の女性の中でトップレベルにまで達している。
 奈美子が押しているのは、当然と言ったところだろう。
 むしろ、レラが何とか防いでいることの方がすごいかもしれない。
 防いでいるといっても完璧ではなく、レラは傷を負っていないが衣服の所々斬られている。

「……限様に感謝しないと」

「何……?」

 奈美子の攻撃を防ぎながら、レラは小さく呟く。
 その声が聞こえた奈美子は、一旦攻撃の手を止めてその意味を問いかける。

「あなたは強い」

「……まあね」

 奈美子の手が止まって軽く息を吐くと、レラは先程呟いた意味を話し始める。
 その出だしが敵である自分を評価する発言であったため、美奈子は意外そうな表情で答えを返した。

「でも、限様の剣を相手に訓練をして来た私なら、その程度を防ぐくらい訳ないわ!」

 限と行動を共にし始めてから、武術と魔法の訓練を毎日のようにしてきた。
 当然、訓練の相手は限だ。
 いくら奈美子が強くても、限以上の剣技でない限り恐ろしくない。
 そう思えるのも、限によるこれまでの訓練のお陰だ。
 そう考えたからこそ、先程レラは限に感謝する言葉を呟いた。

「……つまり、私があの魔無しに劣るって言いたいの?」

「その通りよ」

 レラの言葉を聞いた美奈子は、確認するように問いかける。
 それに対し、レラは当然というように間髪入れず返答した。

「……っっっ!!」

「っ!?」

 レラの発言を聞いて少し俯いた美奈子は、少しの間を置き勢いよく顔を上げる。
 それと同時に、身体強化の魔力を一気に上げた。

「私があんな魔無し以下の訳ないでしょ!!」

 敷島内でもトップレベルの実力の自分が、魔力もなくいじめられていただけの限に劣っているわけがない。
 何をして魔力を得たのか分からないが、所詮限は無能の魔無しでしかないはず。

「一族を皆殺しにされてもそんな風に言えるなんて、あなた本当に馬鹿なのね?」

 魔無し、魔無しといっている所から、奈美子の中で限のイメージは昔と変わっていないようだ。
 しかし、菱山家が潰れたことは事実。
 それなのに限を認めようとしない奈美子を見て、レラは何故か勝った気になった。
 元婚約者で、昔の限を知っている女性。
 自分よりも限のことを理解していると思っていた。
 だが、奈美子からは限を見下すような発言ばかりで、今の限を見ようとしていない。
 身も心も奉仕して理解している自分の方が、限のことを理解しているということだからだ。

「黙れ!! どうせあんたとそっちの従魔。それと罠を張って父たちを殺したんでしょ! そうに違いないわ! いくら魔無しでもそのくらいの頭は持ち合わせているでしょうからね!」

 美奈子は、レラの発言を首を振って否定する。
 何が何でも限を認めたくないようだ。

「そう……、そう思っていればいいわ」

 これ以上話しても、美奈子は聞く耳を持たない。
 そう判断したレラは、無駄口を聞くことをやめた。

「ハッ!!」

「っ!!」

 身体強化の魔力を増やしたことで、奈美子の移動速度が上がる。
 レラはその速度に目を見開くが、ギリギリのところで躱すことに成功した。

「くっ!!」

「っ!!」

 避けられた美奈子は、すぐに体勢を整え、またもレラに向かって地を蹴る。
 そして、接近すると共に振り上げた刀を振り下ろした。
 しかし、その攻撃もレラには当たらない。

「何で……!?」

 レラはさっきまでギリギリ防いでいた。
 それに対し、身体強化の魔力を上げて速度を上げたというのに、これまで同様攻撃が当たらない。
 その理由が分からず、美奈子はレラを追いかけながら疑問の言葉を口にした。

「ハッ!!」

「なっ!?」

 攻撃を躱せている理由を、わざわざ敵の奈美子に教えるわけがない。
 無言で躱していたレラは、接近する美奈子に合わせて火球の魔法を発射した。
 急に飛んできた火球に驚き、美奈子は接近する足を止めて刀で弾いた。

「フッ! こんな魔法が通用すると思っているの?」

 突然の魔法に驚いたが、よく考えれば自分たち敷島の人間は魔法に対しても訓練されている。
 そのため、わざわざ足を止める必要はなかった。
 そのことから、奈美子は自分が頭に血が上って冷静でなかったことを自覚した。 
 速度を上げても攻撃が通用しなかったのも、それが原因だ。
 身体強化の魔力を上げても、完全に肉体をコントロールできなければ、構えなどで攻撃のパターンが読まれても仕方がない。
 本当に限の訓練によってなのかは分からないが、レラの戦闘技術(主に防御力)はかなり高い。
 攻撃を躱されるのも、当然と言ったところだ。

「もう逃がさない。冷静に仕留める!」

『すごい殺気!』

 冷静になった美奈子は、刀を構えてレラへと殺気を飛ばす。
 その圧力を感じ、レラの頬には汗が一筋伝う。

『でも、限様の殺気に比べれば、問題ない!』

 確かにすごい殺気だ。
 しかし、訓練で受けた限の殺気には及ばない。
 そのため、レラは臆することなく冷静に薙刀を構えた。

『それに……』

“ニッ!”

「っ!? 何がおかしい?」

 自分の殺気に当てられても、特に何の反応も見せない。
 それだけで、美奈子にはレラが相当な修羅場を潜ってきたことが分かる。
 しかも、笑みを浮かべたのだから疑問に思うのも仕方がない。

「別に……」

 手の内を明かすわけにはいかない。
 そのため、レラは美奈子の問いに素っ気なく返答した。

「……まあいいわ。もう私はあなたを仕留めるまで止まらない」

「そう……」

 防御が上手いのは認める。
 しかし、防御に手一杯で反撃をする事はできていない。
 ならば、自分が殺られる心配はいらない。
 敷島の人間の自分は、スタミナも訓練しているため、先にスタミナ切れなどしない。
 攻撃を防がれることに焦ることなく攻め続ければ、レラのスタミナが切れて防ぎきることなどできなくなるはずだ。
 そう考えた美奈子は、すぐに仕留めるのではなく時間をかけてでも確実に殺すことに意識を変えた。 

「ハッ!!」

「っ!!」

 コントロールできていない身体強化の時よりも速度は落ちたが、冷静になったことで、これまでとは違い美奈子の動きにキレが出ている。
 動き回りながら迫る美奈子の動きに、レラは目で追うのがやっとだ。

「フッ!!」

「っっっ!!」

 美奈子が接近して間合いに入った瞬間、レラは笑みを浮かべる。
 その瞬間、奈美子の足下に魔法陣が浮かび上がった。

“ドンッ!!”

「ガッ!!」

 魔法陣が浮かび上がった瞬間爆発を起こし、奈美子が吹き飛んだ。

「グウッ!」

 吹き飛んだ奈美子は、なんとか着地する。
 身体強化の魔力で覆われていたため、足が吹き飛ぶことはなかったが、かなりのダメージを受けたようだ。

「時間をかけて仕留めるのは私の方よ」

「……まさか、あんた……」

「そう。防戦一方で反撃をしなかったのには理由があったのよ。逃げ回りながらこの結界内全域に地雷魔法を作り出すっていうね」

 これまでの攻防で、レラが反撃する機会は僅かだがあった。
 しかし、いくら限の指導によってかなりの実力にまで達しているといっても、武器による戦闘では美奈子に勝てないことはすぐに分かった。
 そのため、レラは武器戦闘だけでなく、魔法による戦闘も使用することにした。
 そして、勝機を確信したレラは、ここでようやく手の内を明かしたのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...