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第4章
第57話
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魔物の様子が最近おかしいので、ケイは美花と共に今朝から探索に出かけることにした。
ケイたちの息子のレイナルドとカルロス、それと最近はご意見番のような立場のルイス・アレシアの夫婦も見張りの塀まで見送りに来てくれた。
「ルイスたちもわざわざ見送りに来なくてもよかったのに……」
「いや、我々は朝早いですからお気になさらず」
村の食事は理由がない限り、家族とか関係なくケイが建てた食堂で食べるようにしている。
朝食はパン食が基本となっているので、担当のアレシアは朝が早く、ルイスも大体午前中にチーズ作りをおこなっているため、朝は別につらくない。
なので、見送りくらいたいしたことではない。
「レイ! もしもの時にはお前がみんなを守れよ」
「……縁起でもないことを言うなよ父さん」
ケイのあまりにも急な発言に、レイナルドは一瞬固まった。
確かに、この異変の原因が強力な魔物だった場合、ケイたちが怪我を負う可能性もある。
しかし、ケイはこの島で一番強い人間。
そんなケイにもしものことがあった場合、レイナルドがどうこうできるとは思えない。
そんなことを考えると、いきなり不安にかられた。
「まぁ、その可能性も考えとけって話だ。カルロスもだぞ」
「…………あぁ」「…………う、うん」
ケイの言葉に、レイナルドとカルロスは躊躇いつつも頷く。
ケイ自身もこういったことを言うとフラグになりそうで嫌なのだが、もしものこと想像しておけば対処のしようがあったりする。
1人で無人島生活を始めた時も、人や魔物との遭遇を想定して行動してきたから、子供1人でも生き抜けたと思っている。
それに、フラグになったとしても、最悪逃げ帰るつもりだ。
美花も同じような気持ちなのか、ケイがレイナルドに言ったことを黙って聞いていた。
「じゃあ、行ってくる」
「じゃあね」
見送りの4人に手を振って北西へ向けて歩き出した。
この島の魔物の腕鶏は北西に分布していて、卵や肉は村の貴重な食料源だ。
最近では家畜として育てられないかイバンが試している。
腕鶏とはケイが勝手につけた名前だが、その名の通り危険なのは発達した羽だ。
鶏のように飛べるわけでもないので、雛の内に羽を切ってしまえば脅威は低い。
食べる部分は少なくなるが、安定的に卵や肉を手に入れられるので、このまま問題なく進んでいってもらいたい。
◆◆◆◆◆
「…………腕鶏がいないわね」
「……うん」
腕鶏たちが縄張りにしていた場所へ着いたケイと美花だが、数日前にきた時と様子が変わっていた。
美花が言うように、1匹の腕鶏もいなくなっていて、割れた卵がいくつか散乱している。
ケイたちが見たように、南に移動したのだろうか。
「もう少し北へ行ってみようか?」
「小山の方?」
南に逃げたということは、逆方向に何か原因があるかもしれない。
そちらの方に言ってみることをケイは提案した。
美花が問い返してきたように、西側の島の北側には小さな山がある。
北にある物といったらそれぐらいしか思いつかないし、特に何もないため、村のみんながそっちに行くことはあまりない。
異変が起きていて誰も気付かないとなると、行く頻度が低い所。
その条件を考えると、ピッタリの場所ともいえる。
「猪に会うかもしれないから気を付けよう」
「えぇ」
山といってもたいした高さではなく、1~2時間ほどで登頂できる高さだ。
その山の西の麓付近には猪の一部が住み着いている。
放って置くとその猪の群れの数が増えてしまう可能性があるので、ちゃんとみんなで数を調整している。
そのため、スタンピードが起きるようなことはないと思う。
猪くらい今のケイと美花なら余裕で倒せる魔物だが、もしかしたら特殊個体が出現した可能性があるので注意が必要だ。
ケイとも美花はその可能性を心に留め、北の小山へ向かった。
「……ケイおならした?」
「失敬な! してないよ」
ケイたちは夫婦になってもう20年以上経つ。
別におならをしたからといって何とも思わないが、不名誉なことには否定させてもらう。
「う~ん、何かちょっと臭った気がしたのよね」
2人とも嗅覚は普通の人族だ。
美花が何かに気付いたようだが、ケイは何も感じていない。
「猪の糞でも近くにあるんじゃないか?」
「……かな?」
猪の魔物は雑食で色々な物を食べる。
その糞は結構臭い。
もしかしたら美花はその匂いを感じたのかもしれない。
そう思った2人は、勘違いだと判断して先を進んだ。
「…………臭うな」
「でしょ?」
少しずつ山を登って、探知術も行って特殊な魔物が存在しないか確認しているのだが、そんなのは存在しているように思えない。
それどころか、魔物の気配が全くしない。
そして何より、微かに嫌な臭いがしてきた。
この匂いが美花が少し前に言っていた臭いのようだ。
「この臭いは……」
ケイにはこの臭いに心当たりがある。
「硫黄?」
温泉地などで嗅いだことのある臭い。
卵が腐った臭いといった感じだ。
「……ってことは?」
「え? ちょっと……」
この臭いが硫黄だと判断したケイは、急いで山の頂上へ向かい出した。
そのケイに離されないように、美花も少し遅れて付いて行った。
ケイたちの息子のレイナルドとカルロス、それと最近はご意見番のような立場のルイス・アレシアの夫婦も見張りの塀まで見送りに来てくれた。
「ルイスたちもわざわざ見送りに来なくてもよかったのに……」
「いや、我々は朝早いですからお気になさらず」
村の食事は理由がない限り、家族とか関係なくケイが建てた食堂で食べるようにしている。
朝食はパン食が基本となっているので、担当のアレシアは朝が早く、ルイスも大体午前中にチーズ作りをおこなっているため、朝は別につらくない。
なので、見送りくらいたいしたことではない。
「レイ! もしもの時にはお前がみんなを守れよ」
「……縁起でもないことを言うなよ父さん」
ケイのあまりにも急な発言に、レイナルドは一瞬固まった。
確かに、この異変の原因が強力な魔物だった場合、ケイたちが怪我を負う可能性もある。
しかし、ケイはこの島で一番強い人間。
そんなケイにもしものことがあった場合、レイナルドがどうこうできるとは思えない。
そんなことを考えると、いきなり不安にかられた。
「まぁ、その可能性も考えとけって話だ。カルロスもだぞ」
「…………あぁ」「…………う、うん」
ケイの言葉に、レイナルドとカルロスは躊躇いつつも頷く。
ケイ自身もこういったことを言うとフラグになりそうで嫌なのだが、もしものこと想像しておけば対処のしようがあったりする。
1人で無人島生活を始めた時も、人や魔物との遭遇を想定して行動してきたから、子供1人でも生き抜けたと思っている。
それに、フラグになったとしても、最悪逃げ帰るつもりだ。
美花も同じような気持ちなのか、ケイがレイナルドに言ったことを黙って聞いていた。
「じゃあ、行ってくる」
「じゃあね」
見送りの4人に手を振って北西へ向けて歩き出した。
この島の魔物の腕鶏は北西に分布していて、卵や肉は村の貴重な食料源だ。
最近では家畜として育てられないかイバンが試している。
腕鶏とはケイが勝手につけた名前だが、その名の通り危険なのは発達した羽だ。
鶏のように飛べるわけでもないので、雛の内に羽を切ってしまえば脅威は低い。
食べる部分は少なくなるが、安定的に卵や肉を手に入れられるので、このまま問題なく進んでいってもらいたい。
◆◆◆◆◆
「…………腕鶏がいないわね」
「……うん」
腕鶏たちが縄張りにしていた場所へ着いたケイと美花だが、数日前にきた時と様子が変わっていた。
美花が言うように、1匹の腕鶏もいなくなっていて、割れた卵がいくつか散乱している。
ケイたちが見たように、南に移動したのだろうか。
「もう少し北へ行ってみようか?」
「小山の方?」
南に逃げたということは、逆方向に何か原因があるかもしれない。
そちらの方に言ってみることをケイは提案した。
美花が問い返してきたように、西側の島の北側には小さな山がある。
北にある物といったらそれぐらいしか思いつかないし、特に何もないため、村のみんながそっちに行くことはあまりない。
異変が起きていて誰も気付かないとなると、行く頻度が低い所。
その条件を考えると、ピッタリの場所ともいえる。
「猪に会うかもしれないから気を付けよう」
「えぇ」
山といってもたいした高さではなく、1~2時間ほどで登頂できる高さだ。
その山の西の麓付近には猪の一部が住み着いている。
放って置くとその猪の群れの数が増えてしまう可能性があるので、ちゃんとみんなで数を調整している。
そのため、スタンピードが起きるようなことはないと思う。
猪くらい今のケイと美花なら余裕で倒せる魔物だが、もしかしたら特殊個体が出現した可能性があるので注意が必要だ。
ケイとも美花はその可能性を心に留め、北の小山へ向かった。
「……ケイおならした?」
「失敬な! してないよ」
ケイたちは夫婦になってもう20年以上経つ。
別におならをしたからといって何とも思わないが、不名誉なことには否定させてもらう。
「う~ん、何かちょっと臭った気がしたのよね」
2人とも嗅覚は普通の人族だ。
美花が何かに気付いたようだが、ケイは何も感じていない。
「猪の糞でも近くにあるんじゃないか?」
「……かな?」
猪の魔物は雑食で色々な物を食べる。
その糞は結構臭い。
もしかしたら美花はその匂いを感じたのかもしれない。
そう思った2人は、勘違いだと判断して先を進んだ。
「…………臭うな」
「でしょ?」
少しずつ山を登って、探知術も行って特殊な魔物が存在しないか確認しているのだが、そんなのは存在しているように思えない。
それどころか、魔物の気配が全くしない。
そして何より、微かに嫌な臭いがしてきた。
この匂いが美花が少し前に言っていた臭いのようだ。
「この臭いは……」
ケイにはこの臭いに心当たりがある。
「硫黄?」
温泉地などで嗅いだことのある臭い。
卵が腐った臭いといった感じだ。
「……ってことは?」
「え? ちょっと……」
この臭いが硫黄だと判断したケイは、急いで山の頂上へ向かい出した。
そのケイに離されないように、美花も少し遅れて付いて行った。
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