エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

文字の大きさ
68 / 375
第4章

第68話

しおりを挟む
「あれ? 船じゃね?」

 レイナルドが見つけた温泉に露天風呂施設を作った帰り、遠くの海に何か光る物を感じたケイは、西の海の方向に目を向けた。
 魔力で視力を強化して見てみると、船がこの島に向かってきているように見えた。

「獣人側だよね……」

 ケイと一緒にきて、できた施設を一番最初に使用した美花も、同じ方向を見てその船を確認した。
 西からくるところを見ると、獣人大陸から来ていることになる。

「そうだな」

 せめてもう少し近付いてこないと、視力を強化しても乗っている人間までは見えない。
 しかし、美花の言う通り獣人が乗っている船の確率が高い。
 なので、美花の言葉に、ケイは頷きを返した。

「ギリギリ見えるくらいってことは、もしもここに来るとしたら夕方くらいかな?」

「……そうね」

 船首の向きからいって、こちらに向かっているのは分かるが、そもそもここに向かっているとも限らない。
 この島に来るにしてもまだ時間がある。

「ルイスたちに色々聞いておこう」

「うん」

 獣人と言ったらこの島にもいる。
 彼らなら何か分かるかもしれない。
 船がここに到着するまでに、何かしらの情報を入れておこうと、ケイと美花は村へ向かって走り出した。
 
「えっ? 船ですか?」

 村に戻ってすぐ、ケイと美花はみんなを集めて会議を始めた。
 今ではここのチーズ職人のような立ち位置になっているルイスに、西の海から船が向かって来ていることを伝えた。

「何しに向かって来ているか分かるか?」

「ん~……、分からないですね」

 獣人側のことは一番年上の人間が知っているだろうと、ケイはルイスに尋ねた。
 しかし、聞かれた方のルイスも、この島に住んで10年以上経っている。
 この島は完全に他の世界とは切り離されたような場所。
 聞かれても、ルイスには思い当たる所はない。

「そもそも、ここに島があるということは知られていなかったですから」

 地図にも載っていなかったので、ルイスも流れ着くまで大陸の東にこんな島があるとは知らなかった。
 流れ着いてからは住みやすく、熱中できることもできたので良かったのだが、他の獣人がわざわざ来るようなメリットはそれ程ないように思える。 

「獣人の国っていくつあるんだっけ?」

 思えば、ケイは美花とアンヘルの知識で人族側のことはある程度知っているが、獣人大陸側のことは深く聞いてこなかった。
 前世では溺れ死んだケイとしては、船を使ったとしても海に出て行くのはちょっと控えたい。
 出て行かないのだから、どこかの国と関わるようなことはないと思っていた。
 向こうからくるのであれば、相手の出方次第で考えるつもりでいたが、問答無用で攻め込んでくる可能性もある。
 人族の貴族などならそうしてきそうだが、獣人族はエルフのような種族のことなど普通の人族との違いなどないだろう。
 まだ交渉する余地はあるはずだ。
 とはいっても、獣人族でも国によっては違うかもしれない。
 まずは獣人の国のことを聞くことにした。

「大小ありますが、昔と変わってなければ5つですかね……」

 問いかけられたルイスは、紙に獣人の大陸を描いて、大雑把に5分割した。

「結構少ないんだな……」

 獣人大陸はかなりでかい。
 それなのにもかかわらず5つだけというのを聞いて、ケイは意外に思った。

「硬い岩盤の山が多く、開拓するのが難しいので……」

 そう言って、ルイスは5つの国の間に山の絵を追加した。
 ケイもここの島を魔法で作り変えたりしているので分かるが、かなりの労力を必要としている。
 獣人のほとんどの種族は魔力が少ないため、魔法で山を削ったりなんかはできない。
 しかし、腕力などの身体能力を使って、人海戦術でするしか方法がなくなる。
 そこまでのことをして領土を広げるほど、どの国も切迫していないという所もあり、どの国も関係性は平穏な状況らしい。

「侵略とかして来ないかな?」

 ケイたちが一番懸念しているのはこれだ。
 同じ獣人もいるので可能性としては低いが、この十数年でどこかの国がそういった戦略に出たのかもしれない。
 そうなるとかなり厄介だ。

「あれだけでかいと、まあまあの人数が乗ってそうだしな……」

 船が来るとしたら、西の海岸になるはず。
 そう予想して西の海岸にきて近付いてくる船を眺めると、結構な大きさなことに気付く。
 戦闘になる可能性もあるため、ここには大人の男しか連れてこなかった。
 美花も来たがったが、他のみんなのことを任せることにした。
 船が大きいということは、相当な数の人間が乗っているだろう。
 ケイたちも腕っぷしには自信があるが、数の力には負けるかもしれない。
 そう思うとかなり緊張してきた。

「獣人は基本強い者に従うという所があります。一番可能性が高いのは、トップとの1対1の勝負ですかね」

「そう言えばルイスともそんなことあったな」

 言われてみて昔のことを思いだした。
 ルイスがケイに勝負に勝ったら出て行くと言って戦いを挑まれた時のことだ。
 あの時ケイが勝って、ルイスたちがここの島の住人になってくれたことは今でもありがたい。
 孫の顔も見ることができたのだから。

「とりあえず、話してみるか」

 腕っぷしに自信があると言っても世界は広い。
 絶対勝てるとは言い切れない。
 できれば会話で済んでほしいと思い、海岸付近で停船した船を見るケイだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...