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第7章
第154話
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「ケイ殿、何か楽しそうなことをしているみたいだな」
「でしょう?」
虫に変化した男を見たケイは、その日のうちにカンタルボス王国のリカルドに会いに飛んだ。
リシケサ王国の地下にあった魔法陣の封印を解いてやったこと伝えに来たのだが、リカルドはケイが思っていた通りの反応を示した。
最近思うのだが、リカルドと仲が良くなってから、ケイもどこか好戦的な部分が見え隠れしている気がする。
リシケサ王国の前王のベルトランの処刑だけでは、2人ともどこか消化不良な気がしていた。
それが、地下の封印を解くだけで王都崩壊に追い込むことができたのだから、なんとも愉快な話である。
「私も見に行きたいところだが、いかんせん遠いからな……」
ケイが思い付きでおこなったことだったが、リシケサの王都が壊されていく様はリカルドも一緒に見てみたかったようだ。
だが、リカルドは王としての仕事が忙しく、気分で出かけるなんてことができない状況にある。
それに、連れて行くにもカンタルボスからリシケサまでは遠いうえに、ケイたちの魔力をかなり消費することになる。
ケイの息子のレイナルドとカルロスに協力を得れば、アンヘル島経由で連れていけるが、連れ出してこの国に迷惑をかける訳にはいかない。
なので、リカルドには報告だけで我慢してもらうしかない。
「ところで、あの封印されていた男は何者なのか分かりますか? 封印から出てきた時は人間の姿をしていたにもかかわらず、急に魔物のような姿へと変化したのですが……」
ケイがリカルドの所に来たのは、リシケサを混乱に陥れたことと、封印を解いて現れた男のことだ。
見た目は普通の人族のようだが、突然虫の姿に変化した。
しかも、その変化をした後は戦闘力などが上がったように思える。
そのようなことができる種族が、この世界にいるのだろうか。
ケイにはアンヘルの知識があるが、所詮は5歳までの知識でしかなく、この世界のことに関したはかなり疎い。
それと比べて、リカルドは一国の王として世界のことを知っているはず。
もしかしたら、あの男のような生物のことも分かるかもしれない。
「恐らく魔族と呼ばれる人種だろう」
「魔族……?」
何ともゲームチックな響きだとケイは思った。
前世のファンタジー物で見たような言葉だったのだから仕方がない。
しかし、魔族がいまいちどのような者か分からない。
そのため、ケイは首を傾げた。
「この世界には人族、獣人族、魔人族などがいるが、それらは動物が進化して今に至っているという風に言われている」
そこは地球の説と同じなようだ。
人族と魔人族は元々同じ種族で、サルから進化したという話だ。
そして、獣人族はサル以外の動物が進化したと言われている。
そのため、獣人族からすれば動物から進化したという意味では同じなのだから、人族も魔人族も獣人の一種でしかないというスタンスに立っている。
獣人でも色々な種族がいるが、サルの姿が残った獣人がいないのが証拠だと考えている。
「ケイ殿のエルフ族、ドワーフ族は解明されてはいないが、人族が進化途中で分かれた種族という説と、サルはサルでも人族とは違う種類のサルから進化したという説がある」
「なるほど……」
それを聞くと、この世界の人間は大きな括りで言うと獣人だというのは正しいようにも思える。
前世の知識のあるケイからしたら、別に人間は人間なのだから関係ないとは思っているが、それぞれの種族はそうは思っていないのかもしれない。
その考えがあるから、それぞれの仲が良くない原因なのだろう。
「そして、魔族とは魔物から進化したから種族だと言われている」
「魔物が進化?」
魔物の進化と聞くと、スライムがポイズンスライムに変わると言うようなことをイメージしたが、これまでの説明から考えると、魔物が人に変化するようなことのようだ。
「魔族の特性として、魔物の使役が得意らしい」
「魔物の使役……」
その特性から言って、ケイが解き放ったのは魔族で間違いないようだ。
「ただ、魔族にも量派と、質派に分かれると言う所がある。ケイ殿が解放したのは量派だな」
魔族になったからと言って、全てが強い戦闘力を有している訳ではない。
戦闘力が低ければ、魔物を使役する能力に長けていても、素直に従うとも限らない。
そうなれば、自分の身を守れないくなるので、弱い魔物でも数を揃えるという考えになるらしい。
「私としては質派の方が面倒かもな……」
リカルドの言うことは納得できる。
もしもドラゴンを使役する者など現れようものなら、国によってはあっという間に潰されるかもしれないからだ。
「しかし、量派でもその男は危険だな。スタンピード並の数で迫られたら、こちらも相応の数を揃えないとならないからな」
封印から解かれたのは虫系の魔族だったが、飛行能力を有している様には見えなかった。
なので、他の大陸に移ってくるとは思わないが、もしも相手にすることになった時のことを考えると少々厄介だ。
特に獣人族は魔法が得意ではないため、肉弾戦になりがちだ。
そうなると、魔物の数に合わせるくらいの数の兵がいないと、町や市民を守り切るのは難しくなる。
「人と違って魔物は魔法には弱い傾向にありますから、広範囲の魔法で一気に、というのが効果的かもしれないですね」
リカルドたち獣人だと、魔法をあまり使わない分、多くの魔物の退治は大変らしい。
魔物は人間と違い、魔法攻撃に対して魔力障壁で防ぐということはしない。
属性によっては効かない魔法もあるが、全属性が得意なエルフにとってそれは大した問題ではない。
なので、魔物よりも魔法を防御する人間の方が面倒かもしれない。
「その時はケイ殿たちに協力を頼んでも良いだろうか?」
「当然構いませんよ。我々も島を攻め込まれた時に助けられたのですから」
エルフと獣人は、お互いの短所を埋め合う関係にあるのかもしれない。
リカルドに協力を求められたが、ケイはすぐに受け入れた。
人族に攻められた時に、ケイたちが助かったのはリカルドの参戦というのが大きかった。
それがなかったら、もしかしたらケイたちの命はなくなっていたかもしれない。
その恩を考えると、断るという選択肢はなかった。
「でしょう?」
虫に変化した男を見たケイは、その日のうちにカンタルボス王国のリカルドに会いに飛んだ。
リシケサ王国の地下にあった魔法陣の封印を解いてやったこと伝えに来たのだが、リカルドはケイが思っていた通りの反応を示した。
最近思うのだが、リカルドと仲が良くなってから、ケイもどこか好戦的な部分が見え隠れしている気がする。
リシケサ王国の前王のベルトランの処刑だけでは、2人ともどこか消化不良な気がしていた。
それが、地下の封印を解くだけで王都崩壊に追い込むことができたのだから、なんとも愉快な話である。
「私も見に行きたいところだが、いかんせん遠いからな……」
ケイが思い付きでおこなったことだったが、リシケサの王都が壊されていく様はリカルドも一緒に見てみたかったようだ。
だが、リカルドは王としての仕事が忙しく、気分で出かけるなんてことができない状況にある。
それに、連れて行くにもカンタルボスからリシケサまでは遠いうえに、ケイたちの魔力をかなり消費することになる。
ケイの息子のレイナルドとカルロスに協力を得れば、アンヘル島経由で連れていけるが、連れ出してこの国に迷惑をかける訳にはいかない。
なので、リカルドには報告だけで我慢してもらうしかない。
「ところで、あの封印されていた男は何者なのか分かりますか? 封印から出てきた時は人間の姿をしていたにもかかわらず、急に魔物のような姿へと変化したのですが……」
ケイがリカルドの所に来たのは、リシケサを混乱に陥れたことと、封印を解いて現れた男のことだ。
見た目は普通の人族のようだが、突然虫の姿に変化した。
しかも、その変化をした後は戦闘力などが上がったように思える。
そのようなことができる種族が、この世界にいるのだろうか。
ケイにはアンヘルの知識があるが、所詮は5歳までの知識でしかなく、この世界のことに関したはかなり疎い。
それと比べて、リカルドは一国の王として世界のことを知っているはず。
もしかしたら、あの男のような生物のことも分かるかもしれない。
「恐らく魔族と呼ばれる人種だろう」
「魔族……?」
何ともゲームチックな響きだとケイは思った。
前世のファンタジー物で見たような言葉だったのだから仕方がない。
しかし、魔族がいまいちどのような者か分からない。
そのため、ケイは首を傾げた。
「この世界には人族、獣人族、魔人族などがいるが、それらは動物が進化して今に至っているという風に言われている」
そこは地球の説と同じなようだ。
人族と魔人族は元々同じ種族で、サルから進化したという話だ。
そして、獣人族はサル以外の動物が進化したと言われている。
そのため、獣人族からすれば動物から進化したという意味では同じなのだから、人族も魔人族も獣人の一種でしかないというスタンスに立っている。
獣人でも色々な種族がいるが、サルの姿が残った獣人がいないのが証拠だと考えている。
「ケイ殿のエルフ族、ドワーフ族は解明されてはいないが、人族が進化途中で分かれた種族という説と、サルはサルでも人族とは違う種類のサルから進化したという説がある」
「なるほど……」
それを聞くと、この世界の人間は大きな括りで言うと獣人だというのは正しいようにも思える。
前世の知識のあるケイからしたら、別に人間は人間なのだから関係ないとは思っているが、それぞれの種族はそうは思っていないのかもしれない。
その考えがあるから、それぞれの仲が良くない原因なのだろう。
「そして、魔族とは魔物から進化したから種族だと言われている」
「魔物が進化?」
魔物の進化と聞くと、スライムがポイズンスライムに変わると言うようなことをイメージしたが、これまでの説明から考えると、魔物が人に変化するようなことのようだ。
「魔族の特性として、魔物の使役が得意らしい」
「魔物の使役……」
その特性から言って、ケイが解き放ったのは魔族で間違いないようだ。
「ただ、魔族にも量派と、質派に分かれると言う所がある。ケイ殿が解放したのは量派だな」
魔族になったからと言って、全てが強い戦闘力を有している訳ではない。
戦闘力が低ければ、魔物を使役する能力に長けていても、素直に従うとも限らない。
そうなれば、自分の身を守れないくなるので、弱い魔物でも数を揃えるという考えになるらしい。
「私としては質派の方が面倒かもな……」
リカルドの言うことは納得できる。
もしもドラゴンを使役する者など現れようものなら、国によってはあっという間に潰されるかもしれないからだ。
「しかし、量派でもその男は危険だな。スタンピード並の数で迫られたら、こちらも相応の数を揃えないとならないからな」
封印から解かれたのは虫系の魔族だったが、飛行能力を有している様には見えなかった。
なので、他の大陸に移ってくるとは思わないが、もしも相手にすることになった時のことを考えると少々厄介だ。
特に獣人族は魔法が得意ではないため、肉弾戦になりがちだ。
そうなると、魔物の数に合わせるくらいの数の兵がいないと、町や市民を守り切るのは難しくなる。
「人と違って魔物は魔法には弱い傾向にありますから、広範囲の魔法で一気に、というのが効果的かもしれないですね」
リカルドたち獣人だと、魔法をあまり使わない分、多くの魔物の退治は大変らしい。
魔物は人間と違い、魔法攻撃に対して魔力障壁で防ぐということはしない。
属性によっては効かない魔法もあるが、全属性が得意なエルフにとってそれは大した問題ではない。
なので、魔物よりも魔法を防御する人間の方が面倒かもしれない。
「その時はケイ殿たちに協力を頼んでも良いだろうか?」
「当然構いませんよ。我々も島を攻め込まれた時に助けられたのですから」
エルフと獣人は、お互いの短所を埋め合う関係にあるのかもしれない。
リカルドに協力を求められたが、ケイはすぐに受け入れた。
人族に攻められた時に、ケイたちが助かったのはリカルドの参戦というのが大きかった。
それがなかったら、もしかしたらケイたちの命はなくなっていたかもしれない。
その恩を考えると、断るという選択肢はなかった。
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