主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 前期

第26話

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「ひとまず治まったみたいだな……」

「えぇ……」

 大量の巨大モグラたちも数に限界が来たのか、伸に一掃することができたようだ。
 魔物が穴から出て来なくなり、伸と綾愛は一息つくことができた。

「これからどうするの?」

「まずは出口に向かおう。外に出られれば君を保護してもらえる」

「そうね……」

 伸でも全部の魔物を倒したわけではない。
 中には出口に向かっていった者もいた。
 その魔物に遭遇する可能性があるが、まずは綾愛の安全を確保したい。
 何の役にたっていないことが分かっているため、綾愛は表情を曇らせながらその提案を受け入れた。

「いやっ! 出口も駄目そうだ……」

「えっ?」

 念のため、出口へ向けて探知をしてみる。
 しかし、それをしたことで伸は出口へ向かうことをやめることにした。

「探知してみたら、出口も魔物がぞろぞろいる。他の坑道からも魔物が出ているみたいだ。外に残っていた人たちで大丈夫かな?」

「そんな! ……でも大丈夫。邸から援軍が来ているはずだから」

「そうか……」

 伸は難なく倒していたが、巨大モグラはなかなか手強い魔物だ。
 それが大量に外へと向かっているとなると、外にいた柊家の者たちでもきついかもしれない。
 伸の言葉に驚く綾愛だが、すぐに落ち着きを取り戻す。
 この発見された洞窟は柊家からそんなに離れていないため、邸からの援軍を呼んでいるはず。
 なので、外に関してはひとまず気にしなくてもいいだろう。

「出口が無理ならどうするの?」

「あの魔物はまだまだいるみたいだ。だから数を減らしておきたい。このまま放置すると援軍が来ているといっても抑えきるのは無理かもしれないからな」

「そう……」

 出口だけでなく、その周辺の坑道にも魔物がいるのが探知できる。
 しかも、相手はモグラの魔物。
 掘ってしまえば出口はどこにでも作れるため、そのうち一気に噴出するかもしれない。
 少しでも洞窟内で仕留めれば、それだけ外の者たちが楽になるはず。
 外の人間で抑えきれなくなれば、町にも被害が及ぶ。
 それを阻止するという考えの伸に、綾愛はありがたいと思う。
 それと同時に、何もできない自分が心苦しくなっていた。

「そうなると、転移で魔力を消費したくない。できればもう少し外に出るのは我慢してくれ」

「もちろん! 何もできないのだから、せめてそれくらいなんともないわ!」

 転移の魔術はかなりの魔力を使うため、使用したら伸でも疲労を感じる。
 まだまだ魔物と戦うのに、魔力を消費して疲れた状態で戦うのは、伸でも危険になるかもしれない。
 そのため、綾愛には少しの間我慢してもらうことにしたのだが、綾愛も現状を理解しているため、当然のように頷いた。

「とりあえず、ここの洞窟の探知範囲を広げてみる。もしかしたら、他に出口があるかもしれない」

「分かったわ」

 出口方面は無理なので、どこか他から出ることができないか探るため、探知を広げて洞窟内の様子をみることにした。

「でも、すごいわね地面の探知ってそんなに広げられないって話よね?」

「あぁ、普通に探知するよりも抵抗力があるからな」

 探知の魔術は、魔力を広げてその魔力に触れたものを判断する魔術だ。
 得意不得意により人によって範囲は変わるが、地面の内部に魔力を通して探知するのは難しいことだ。
 土が魔力を吸収しようとするため、その分抵抗を受けるからだ。
 学園に出た巨大モグラの魔物が見逃されていたのも、地上から深い位置にいたために魔術師たち探知をかいくぐったのだろう。

「っ!! 誰かいる! ついてきてくれ!」

「えっ? う、うん!」

 探知によって何かを発見したらしく、伸は慌てたように声をあげた。
 そして、すぐに移動を開始しようと、綾愛の手を握った。
 不意に手を握られたため、綾愛は驚きの声をあげて頬を赤らめながら、伸の後をついて行くことになった。





「くそっ! いくら何でも数が多すぎる!」

 洞窟内に入った柊家の班の内、逃げきれていない者たちが4人いた。
 彼らは、最初に魔物の大群を発見した班だ。
 伸たちは入り口付近で魔物と戦うことになっていたため渡されていなかったが、洞窟内の魔物を殲滅するために入っていたそれぞれの班には、洞窟内でも通信できるように通信機が渡されていた。
 彼らの発見と報告によって他の班は脱出できたが、彼らは逃げ切ることができなかったのだ。
 それでもさすがに名門の柊家の魔術師たち。
 多少の怪我を負いつつも、何とか襲い来る魔物を退けている。
 しかし、倒しても倒しても湧き出るように向かって来る魔物に、彼らはうんざりしていた。

「愚痴ってる暇はないぞ! 山下!」

「分かってるって! 井上!」

 思わず愚痴った山下という男性に、井上という男性が注意を入れる。
 愚痴りたくなる気持ちはわかるが、相手にしているのは集中していないと危険な魔物だ。
 注意を受けた者も、それが分かっているためすぐに答えを返した。

「っ!! 泉! 下だ!!」

 先程愚痴っていた1人が、異変に気付く。
 彼はメンバーの1人である泉という男性に向かって、下を指差しつつ大きな声を出した。

「がっ!?」

 その指示通り、地面から魔物が飛び出してきた。
 飛び出してきてそのまま爪で攻撃してきた巨大モグラの攻撃に、泉は反応しきれず両足に大怪我を負ってしまった。

「くそっ! 大丈夫か!? 泉!」

「ぐっ……すまん安井。やられちまった」

 側にいたもう1人の仲間である安井が、すぐに泉に怪我をさせた魔物を刀で斬り倒す。
 そして、すぐさま泉の怪我の様子を見る。
 しかし、痛みで立てないことが分かり、泉はすぐさま仲間に謝った。

「……深いな」

 出血の具合から、戦うのは不可能だと全員が分かる。
 魔術を使って回復させたいが、まだ出口まで距離がある。
 そんな状況で結構な魔力を消費する魔術を使用したら、今度は残りの仲間までもが危険に晒されることになるかもしれない。
 どうするべきか悩ましいところだ。

「……俺はみんなの邪魔になる。置いて行ってくれ……」

 自分を背負ってこの魔物の数を突破するのは3人にとっても危険だ。
 そのため、泉は自分を見捨てることを提案した。

「バカ言うな!」

「そんなことできるわけないだろ!」

「諦めるのが速すぎだ!」

 彼らの中で置いて行くという判断は考えていない。
 そのため、他の3人はすぐさま泉の提案を否定した。

「しかし……、っ!!」

「チッ! ちっとは考える時間を寄越せっての!」

 話している最中にまたも魔物が現れたため、山下は思わず舌打した。

「マジか……」

 これまで以上の魔物の数に、井上は思わず声を漏らした。
 怪我した泉を守りながら戦うには、かなり危険な数だからだ。

「くそっ! このままじゃ……」

 怪我した泉を背にして囲み、襲い来る魔物を退けようとする3人。
 泉も何とか3人を援護しようと、魔術を敵に放つ。
 しかし、数があまりにも多すぎる。
 このままでは全滅しかねない状況に、山下が切羽詰まったように呟いた。

「「「「っ!!」」」」

「大丈夫っすか?」

 全滅の二文字が浮かんでいた4人だったが、いきなり囲んでいた魔物たちが崩れ落ちた。
 そのことに驚いていると、自分たちに声をかけてくる少年がいた。
 その少年に目を向けると、そこにいたのは背後に綾愛を連れた伸だった。

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