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1学年 後期
第84話
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【これより2回戦 第1試合を開始します!】
昨日の1回戦に続き、試合に挑む了。
会場内にアナウンスがされて、試合をおこなう部隊へと伸と共に歩みを進める。
「伸。さっきのお前の策に乗るよ」
「……そうか」
舞台の上に上がって待っている対戦相手を見つめながら、了は伸へと話しかける。
その意味を理解している伸は、短い返事をした。
「失敗したら骨は拾ってくれよ?」
「大袈裟だ。別に負けても死ぬわけじゃないんだから……」
「それもそうだな……」
決意の目をして告げる了に、伸がツッコミを入れる。
伸が提案した策は、別に失敗したからって死ぬような作戦ではない。
覚悟を決めたという意味での言葉なのだろうが、そのツッコミで少しは肩の力が向けたようだ。
「じゃあ、行って来る」
「あぁ」
表情も少し和らいだ了は、伸と軽くグータッチを交わして舞台へと上がっていった。
「それでは……」
ボクシングなどと同じように、試合前の簡単なルール説明がされる。
内容は知っているので、はっきり言って選手の2人は聞き流しているような状態だ。
それが終わって短い握手を交わした後、選手たちは距離を取り合う。
ある程度の距離ができた所で向かい合い、両者が戦闘態勢に入ると、審判が開始の合図のタイミングを計った。
この瞬間、選手の2人だけでなく、会場中が静かになる。
「始め!!」
「ハーーッ!!」
「っっっ!!」
試合開始の合図と共に足へと込めた魔力を利用し、了は一瞬にして最高速度へと上げる。
その爆発的な速度によって、了は対戦相手との距離を縮める。
予想外の奇襲に、対戦相手の反応が遅れた。
「ハッ!!」
「ぐはっ!!」
相手との距離を詰めた了は、そのまま胴へと木刀を振る。
反応の遅れた相手選手は持っている木刀で防ぐことができず、了の攻撃の直撃を受けた。
了の強力な一撃により、対戦相手は舞台外まで飛んで行った。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
攻撃を当てた了は、息を切らして対戦相手のことを見つめる。
まだ場外によるカウントが取られているからだ。
20秒以内に舞台に戻れば、まだ試合は再開される。
そうなった時のために息を整えて、まだ戦えることをアピールするためだ。
本当の所、了はもう一歩も動けない状態だ。
それだけの魔力を、さっきの一撃で使い切ってしまったのだ。
「ぐっ、ぐぅ……」
場外へと飛ばされた対戦相手は、這うようにして舞台へと向かう。
脇腹を抑えて呻き声を上げている所を見ると、アバラが折れているのかもしれない。
審判は、場外カウントをしながら大会委員のいる方へと視線を送る。
これ以上戦闘をさせていいものか判断が難しいためだ。
どうやら大会委員は様子を見ることを選んだらしく、審判はそのままカウントを続けた。
「マ、マジか……」
対戦相手は、20秒ギリギリ手前で舞台に上がった。
立っているだけで精いっぱいなのだから、試合再開されたらはっきり言って疲労困憊の自分では勝ち目がない。
そのため、了は敗北も覚悟した。
「ぐふっ……」
「…………えっ?」
どうやら自分だけでなく、相手選手も限界だったようだ。
舞台に上がった迄は良かったが、審判の再開の合図を待たずその場へ倒れ込んだ。
負けを覚悟していたというのに、まさかの事態に了は目を白黒させた。
「勝者! 金井!」
「……えっ?」
相手選手が倒れたことにより、審判の宣言がされる。
しかし、勝者である了は状況が呑み込めず、呆けるしかなかった。
「やったな!? 了!!」
「あ、あぁ……」
試合が終了し、セコンドの伸は舞台へ上がって了の下へと駆け寄る。
テンション高く話しかける伸に反し、了はまだ確信していないらしく返事に力がない。
「……俺が勝ったんだよな?」
「そうだ!」
「……やった。……やった!!」
伸に確認することで自分が勝利できたことを確信した了は、ようやく両手を上げてガッツポーズをした。
相手は3年生。
1回戦の勝利だけでも充分だったのに、まさか2回戦まで自分が勝てるとは思っていなかった。
あまりの嬉しさに、体の疲労も飛んで行ってしまいそうだ。
「嬉しいのは分かるが、控室に帰るぞ」
「……あぁ、じゃあ、肩貸してくれ。魔力切れで気を失いそうだ」
「しょうがねえな」
ほとんど一瞬の攻防で試合が終了してしまったため、了の圧勝のように思った観客たちもいるだろう。
しかし、本当の所は辛勝だった。
気を抜いたら気を失いそうなため、了は伸に肩を貸すように頼んだ。
こうなることは予想していた伸は、口では面倒そうに言いながらも素直に肩を貸して控室へと歩き出した。
「ハハッ、伸の言う通りやって正解だったな?」
「ほとんど賭けだったがな……」
控室に戻ると、了はすぐにベンチに腰掛けて魔力を回復するためにサンドウィッチを食べ始めた。
そして、とりあえず一息付けた了は、試合のことを伸と話し始めた。
「朝にあの策を言われた時はどうしようかと思ったぜ」
2回戦で勝利した策。
それは伸が提示したものだった。
昨日、了の対戦相手の1回戦の戦いを収録した映像を手に入れた伸は、何度か見て対戦相手の攻略法を考えていたのだが、分かったことは、「……こりゃ、まともにやったら了の負けだな」ということだった。
しかし、セコンドの立場からそれを言うのは憚れるため、なんとかして勝利できる方法を考え出そうとした。
そして思いついたのが、今回の策だった。
「前回失敗しているから、提案するか悩んだけどな」
伸が了に提案したのは、校内戦の時に了がおこなった作戦だ。
試合開始と共に、全魔力を使って全速力で敵に接近して攻撃を与えるというものだ。
校内戦の時は決勝で綾愛と対戦し、作戦を実行したが躱されてしまって敗北した。
しかし、あれは躱した綾愛がすごいのであって、初見で躱せるような者はそういないはずだ。
今回、対戦相手は3年生のため、もしかしたら躱すなり防御するなりする可能性があったが、提案した伸としても成功して一安心だ。
「そろそろ大丈夫か?」
「あぁ、少し回復したみたいだ」
食事をして少しの間安静にしていたため、とりあえずホテルに帰るまでの回復はできただろう。
そう思って伸が問いかけると、了は頷きで返答した。
「明日もあるし、ホテルで休もう」
「了解」
2勝したことで、了はベスト16に入ったということだ。
無名の1年生としては、上出来もいいところだ。
明日も試合があることだし、ホテルに戻って体力・魔力の回復に努めるべき。
そのため、2人は他の試合を見ることなくホテルへと戻ることにしたのだった。
昨日の1回戦に続き、試合に挑む了。
会場内にアナウンスがされて、試合をおこなう部隊へと伸と共に歩みを進める。
「伸。さっきのお前の策に乗るよ」
「……そうか」
舞台の上に上がって待っている対戦相手を見つめながら、了は伸へと話しかける。
その意味を理解している伸は、短い返事をした。
「失敗したら骨は拾ってくれよ?」
「大袈裟だ。別に負けても死ぬわけじゃないんだから……」
「それもそうだな……」
決意の目をして告げる了に、伸がツッコミを入れる。
伸が提案した策は、別に失敗したからって死ぬような作戦ではない。
覚悟を決めたという意味での言葉なのだろうが、そのツッコミで少しは肩の力が向けたようだ。
「じゃあ、行って来る」
「あぁ」
表情も少し和らいだ了は、伸と軽くグータッチを交わして舞台へと上がっていった。
「それでは……」
ボクシングなどと同じように、試合前の簡単なルール説明がされる。
内容は知っているので、はっきり言って選手の2人は聞き流しているような状態だ。
それが終わって短い握手を交わした後、選手たちは距離を取り合う。
ある程度の距離ができた所で向かい合い、両者が戦闘態勢に入ると、審判が開始の合図のタイミングを計った。
この瞬間、選手の2人だけでなく、会場中が静かになる。
「始め!!」
「ハーーッ!!」
「っっっ!!」
試合開始の合図と共に足へと込めた魔力を利用し、了は一瞬にして最高速度へと上げる。
その爆発的な速度によって、了は対戦相手との距離を縮める。
予想外の奇襲に、対戦相手の反応が遅れた。
「ハッ!!」
「ぐはっ!!」
相手との距離を詰めた了は、そのまま胴へと木刀を振る。
反応の遅れた相手選手は持っている木刀で防ぐことができず、了の攻撃の直撃を受けた。
了の強力な一撃により、対戦相手は舞台外まで飛んで行った。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
攻撃を当てた了は、息を切らして対戦相手のことを見つめる。
まだ場外によるカウントが取られているからだ。
20秒以内に舞台に戻れば、まだ試合は再開される。
そうなった時のために息を整えて、まだ戦えることをアピールするためだ。
本当の所、了はもう一歩も動けない状態だ。
それだけの魔力を、さっきの一撃で使い切ってしまったのだ。
「ぐっ、ぐぅ……」
場外へと飛ばされた対戦相手は、這うようにして舞台へと向かう。
脇腹を抑えて呻き声を上げている所を見ると、アバラが折れているのかもしれない。
審判は、場外カウントをしながら大会委員のいる方へと視線を送る。
これ以上戦闘をさせていいものか判断が難しいためだ。
どうやら大会委員は様子を見ることを選んだらしく、審判はそのままカウントを続けた。
「マ、マジか……」
対戦相手は、20秒ギリギリ手前で舞台に上がった。
立っているだけで精いっぱいなのだから、試合再開されたらはっきり言って疲労困憊の自分では勝ち目がない。
そのため、了は敗北も覚悟した。
「ぐふっ……」
「…………えっ?」
どうやら自分だけでなく、相手選手も限界だったようだ。
舞台に上がった迄は良かったが、審判の再開の合図を待たずその場へ倒れ込んだ。
負けを覚悟していたというのに、まさかの事態に了は目を白黒させた。
「勝者! 金井!」
「……えっ?」
相手選手が倒れたことにより、審判の宣言がされる。
しかし、勝者である了は状況が呑み込めず、呆けるしかなかった。
「やったな!? 了!!」
「あ、あぁ……」
試合が終了し、セコンドの伸は舞台へ上がって了の下へと駆け寄る。
テンション高く話しかける伸に反し、了はまだ確信していないらしく返事に力がない。
「……俺が勝ったんだよな?」
「そうだ!」
「……やった。……やった!!」
伸に確認することで自分が勝利できたことを確信した了は、ようやく両手を上げてガッツポーズをした。
相手は3年生。
1回戦の勝利だけでも充分だったのに、まさか2回戦まで自分が勝てるとは思っていなかった。
あまりの嬉しさに、体の疲労も飛んで行ってしまいそうだ。
「嬉しいのは分かるが、控室に帰るぞ」
「……あぁ、じゃあ、肩貸してくれ。魔力切れで気を失いそうだ」
「しょうがねえな」
ほとんど一瞬の攻防で試合が終了してしまったため、了の圧勝のように思った観客たちもいるだろう。
しかし、本当の所は辛勝だった。
気を抜いたら気を失いそうなため、了は伸に肩を貸すように頼んだ。
こうなることは予想していた伸は、口では面倒そうに言いながらも素直に肩を貸して控室へと歩き出した。
「ハハッ、伸の言う通りやって正解だったな?」
「ほとんど賭けだったがな……」
控室に戻ると、了はすぐにベンチに腰掛けて魔力を回復するためにサンドウィッチを食べ始めた。
そして、とりあえず一息付けた了は、試合のことを伸と話し始めた。
「朝にあの策を言われた時はどうしようかと思ったぜ」
2回戦で勝利した策。
それは伸が提示したものだった。
昨日、了の対戦相手の1回戦の戦いを収録した映像を手に入れた伸は、何度か見て対戦相手の攻略法を考えていたのだが、分かったことは、「……こりゃ、まともにやったら了の負けだな」ということだった。
しかし、セコンドの立場からそれを言うのは憚れるため、なんとかして勝利できる方法を考え出そうとした。
そして思いついたのが、今回の策だった。
「前回失敗しているから、提案するか悩んだけどな」
伸が了に提案したのは、校内戦の時に了がおこなった作戦だ。
試合開始と共に、全魔力を使って全速力で敵に接近して攻撃を与えるというものだ。
校内戦の時は決勝で綾愛と対戦し、作戦を実行したが躱されてしまって敗北した。
しかし、あれは躱した綾愛がすごいのであって、初見で躱せるような者はそういないはずだ。
今回、対戦相手は3年生のため、もしかしたら躱すなり防御するなりする可能性があったが、提案した伸としても成功して一安心だ。
「そろそろ大丈夫か?」
「あぁ、少し回復したみたいだ」
食事をして少しの間安静にしていたため、とりあえずホテルに帰るまでの回復はできただろう。
そう思って伸が問いかけると、了は頷きで返答した。
「明日もあるし、ホテルで休もう」
「了解」
2勝したことで、了はベスト16に入ったということだ。
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