主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 後期

第83話

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「金井! 一回戦突破おめでとう!」

「おめでとう!」

「あざーす! 先輩たちもさすがっすね!」

 ホテルに戻って1回戦の体調確認をした了は、夕食会場で先輩たちと話をしていた。
 相手は3年の田名崎と2年の渡辺で、2人とも了と同じ剣道部員だ。
 田名崎は剣道部の部長で、八郷学園の選手の中で一番上位に食い込めるのではないかと言われている。
 柊家の綾愛も上位に行けるのではないかと期待されているが、やはり1年だからという思いがあるため、彼女は田名崎に次いでの期待といったところだ。
 お互いに褒め合っているように、選手に選ばれた剣道部の3人は初戦を突破することができた。

「やっぱり対人戦は近接戦大事だよな」

「そうですね」

 選手に選ばれた剣道部3人とも、今日の試合は接近戦が勝敗を決めたといったような戦いだった。
 部長の田名崎の相手は、距離を取って魔術攻撃で相手を仕留めるガチガチの遠距離戦闘タイプで、距離を取った相手が魔法を連射してくるのを躱して、懐に飛び込んだ時点で田名崎の勝ちはほぼ確定。
 接近戦になったら相手は防御に専念するしかなくなり、田名崎の木刀が首に添えられた時点で審判が止めた。
 2年の渡辺の試合も似たようなもので、魔術で距離を取る相手に渡辺が距離を詰めて勝負あり。
 去年は相手が3年で、しかも緊張で何もできないで負けてしまったが、今回の相手は自分と同じ2年ということもあり、リラックスして試合に挑めたため、実力を発揮できて勝利を収められた。
 剣道部員3人とも同じような試合になり、同じく勝利を収めたことから、田名崎と渡辺はお互い接近戦の大事さを感じていた。

「明日には2回戦だが、出来れば明日も剣道部全員勝利したいところだな」

「いや、部長と先輩はともかく、俺はちょっと無茶でしょ?」

「そういや、金井の相手は3年だったっけ?」

「はい……」

 同じ剣道部員ということもあり、3人とも勝利できたことはとてもめでたい。
 八郷学園の選手は3年が2人、2年が1人、1年が2人、1回戦を突破している。
 例年よりも残っている方だ。
 他の選手にも勝ち残って欲しいという思いはあるが、やはり剣道部仲間ということもあり、田名崎からすると明日の2回戦も3人が勝利出来れば一番嬉しい。
 たしかにそうなったら了としても嬉しいことだが、如何せん明日の相手が相手なだけに、了としては自信がない。
 戦う前から自信のない様子を見て、渡辺は了の対戦相手のことを思いだした。
 1回戦は1年同士ということもあり、勝機はあると思っていた。
 しかし、次の対戦相手は3年で、遠距離でも近距離でも戦えるバランス型の印象の選手だった。
 了が懸命に距離を詰めても、剣術で力押しできるようには思えないため、自信が持てないのも仕方がない。

「相手も対策してくるだろうしな……」

「まぁ、絶対勝てとは言わないが、全力は尽くせよ」

「うっス!」

 入学当時は魔術が飛ばせないでいた了だが、夏休みを過ぎてからそれも克服している。
 とはいえ、接近戦重視なのは変わっていない。
 そのことを、きっと今日の了の試合映像を手に入れ対策を練れば気付かれてしまうだろう。
 そうなると、相手が3年だとか言う前に勝利がきつくなる。
 3人共勝利を期待したが、さすがに難しいかもしれない。
 しかし、勝負はやってみないと分からないため、田名崎は了に悔いなく戦ってほしいと思い全力を期待した。

「そう言っている俺らも、もしかしたら負けるかもしれないんだがな」

「ハハッ、実はそうですよね」

 了にエールを送る田名崎だが、自分が絶対勝てるという自信がある訳ではない。
 勝負はやってみなければ分からないのは、自分の試合に関してもそうなのだから。
 後輩に偉そうに言って、自分が負けてしまえば結構恥ずかしい。
 そうなる可能性もあることを冗談交じりに言った田名崎の言葉に、渡辺も笑いながら同意した。

「あれ? 新田は?」

「あぁ、伸なら俺の対戦相手の弱点を探すっていって、ずっと取り寄せた試合映像を見てます」

 会話が弾んだので後回しになっていたが、渡辺が伸がいないことに触れた。
 その質問に、了は返答する。
 対戦相手の映像を手に入れた伸は、夕食の時間になってもその映像を見ていた。
 一緒に夕食へ行こうと誘ったのだが、先に行って食べてきてくれと言われたので、了は1人で夕食会場に来たのだ。

「……新田は誘ったら剣道部に入らないのか?」

「えっ?」

 伸の話になり、田名崎は急に了へ話を振ってきた。
 突然の話に、了は戸惑う。

「先輩もそう思ってたんですか? あいつの防御上手いですもんね」

「あぁ、あれで攻撃面を鍛えれば、来年にはもしかしたら対抗戦に出れるくらいになるんじゃないか?」

 田名崎の問いに、渡辺が反応する。
 対抗戦の選手選びの時も、了のセコンドとして剣道部の道場で訓練相手をしていたのを、渡辺だけでなく田名崎も見ていた。
 その時の印象から、伸に目を付けていた。
 渡辺も同じように伸に目を付けていたので、剣道部勧誘に共感した。

「俺も誘おうかと思ったんですけど、あいつなんか色々あるみたいで、バイトしないといけないみたいなんで……」

 先輩2人の問いに対し、了は真面目な顔をして返答する。
 伸は両親を亡くしていて、生活面や今後のことを考えるとバイトをしないといけない。
 そのことが分かっているので、了も伸を剣道部へ勧誘をする事をやめたのだ。

「そうか……」

「残念だな……」

 了のその表情から何かを察したのか、田名崎と渡辺もそれ以上勧誘することを躊躇った。





◆◆◆◆◆

「……フフッ」

 誰もが寝静まる時間。
 対抗戦がおこなわれている皇都。
 1回戦が終わり、夜が明ければ2回戦が始まる。
 あるビルの屋上から、夜の町を見下ろし笑みを浮かべている者の姿があった。

「ここに鷹藤家の倅がいるのか……」

 どうやら目的は鷹藤家の人間らしい。

「たしか、何かの大会に出ているって話だな……」

 その呟きから察するに、目的は文康のようだ。

「……そう言えば、たしか柊家の娘もいるんだったか……」

 目的の文康が対抗戦に出場していることを考えていると、この者は綾愛も出場していることを思いだした。

「ついでに始末しておくか……」

 文康だけでなく綾愛も始末することを目的に変えたこの者は、独り言のような呟きをやめて、大会会場へ密かに進入するための工作を開始することにし、その者は屋上から姿を消したのだった。

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