主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 後期

第94話

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「メインは私が、2人は援護を頼む!」

「了解しました!」「分かった!」

 大会の出場選手である豊川が、人間から魔物に変化し大暴れしたのを抑えたばかりだというのに、今度は魔物中でも知能を持つ魔族が出現した。
 柊家当主の俊夫、鷹藤家当主の康義、鷹藤家次期当主の康則の3人は、カルミネと名乗るこの魔族と対峙していた。
 この中で魔族との戦闘経験があるのは俊夫と康義だ。
 しかし、俊夫が倒したのは、名前も持たない魔族だった。
 康義の説明によると、名前持ちとそうでないのとでは実力が違うという話だ。
 そのため、この中で名前持ちとの戦闘経験のある康義を軸として戦うことに、俊夫と康則は賛成した。

「フッ! こうも上手くいくとはな……」

「……どういうことだ?」

 俊夫・康義・康則の3人を見て、カルミネは笑みを浮かべる。
 まるで、こうなることを望んでいたかのような発言だ。
 そう感じた俊夫は、その言葉の意味を問いかけた。

「この国の始末対象は鷹藤家と柊家。その跡取りと言われているガキに何かあれば動きがあると思っていたが、思った通りだったということだ」

「……ということは、まさか……」

 俊夫の問いに対しカルミネが返答する。
 その答えを聞いて、俊夫だけでなく康義と康則の2人も眉間に皺を寄せた。

「貴様!! そのためにあの少年を魔物に変えたということか!?」

「その通りさ」

 カルミネが意図を理解し、康義は怒りの表情で問いかける。
 その問いに、カルミネは笑みを浮かべて頷いた。

「鷹藤のガキがこの大会に出ているってことを聞き、対戦相手を利用することにしたのさ」

 鷹藤家の文康、柊家の綾愛。
 カルミネのいう始末対象の家の子供たちがこの大会に出場している。
 その両家の子供を狙うことで、親たちをおびき寄せるつもりだったようだ。
 そのために、カルミネはあの豊川という選手に目を付けたということだ。

「そんな事のために……」

 わざわざ自分たちをおびき寄せるためだけに、1人の優秀な少年の命が失われた。
 そのことが許せない康則は、怒りで拳を強く握りしめた。

「おいおい! 人間の1匹や2匹殺したところで腹を立てるなよ」

「何だと!!」

 腹を立てている康則を見たカルメラは、バカにしたような態度で人間を虫でも数えるように言う。
 その態度が火に油を注ぎ、康則は更に顔を赤くした。

「康則、落ち着け!」

「……悪い」

 カルミネの狙いは、康則を怒らせることで独断専行させることだ。
 そのことを読み取った康義と俊夫は、怒りを何とか内に収めていた。
 しかし、康則はそのことに気付いていないのか、今にも襲い掛かりそうになっている。
 そのため、康義は康則に対して注意を促す。
 父の忠告によってカルミネの考えに気付いたのか、康則は何とか怒りを抑えた。

「残念……」

 やはり康則の独断専行を待っていたのか、カルミネは残念がる。
 しかし、その言葉とは違い、あまり残念そうではない。
 そうなったらそれで良いくらいの気持ちで、康則を煽ったのかもしれない。

「人間も魔物を殺しているだろ? それと同じようなものだ」

「一緒にするな! 魔物は無意味に人間へ被害を加える存在だ。駆除するのは当然だ」

 カルミネの言うように、人間は魔物を殺している。
 しかし、それは魔物が人間に襲い掛かってくるからだ。
 魔物は人間だけでなく動植物にとっても迷惑な存在だから駆除をしているのであって、決して無意味に殺しているのではない。
 自分たちと同じ扱いをされるのは不愉快に思い、俊夫がカルミネへ言い返した。

「まぁ、どっちにしてもどうでもいいことだ。俺たち魔族にとって人間は食料。お前たちはそれを阻止したいんだろ?」

「……だったら?」

 命に関する問答をするのに飽きたのか、カルミネは話を切り替えて3人に問いかける。
 分かり切っていることを聞いてきたカルミネに対し、俊夫が問いで返した。

「グダグダ言っていないでかかって来いよ!」

「「「っっっ!!」」」

 話の終わりと共に、カルミネは真面目な表情へと変わる。
 そして、それと同時に体内から魔力を放出した。
 禍々しいその魔力に驚きつつ、俊夫たち3人はすぐに身構えた。

「行くぞ……」

「はい」「あぁ」

 いつまでも話している訳にはいかない。
 魔族が出現したのなら、始末しないことには国民は安心て暮らせない。
 この3人で何としても止めるべく、康義の言葉と共に行動を開始した。

「ハッ!!」

「っと!」

 まずは様子見とばかりに、俊夫が火球の魔術を放つ。
 威力と速度共に、かなり強力な攻撃だ。
 その攻撃を、カルミネはサイドステップして回避する。
 反応速度からいって、かなりのものだ。

「シッ!!」

「っ!?」

 俊夫の魔術を躱すことをあらかじめ分かっていたように、康義が腰に差した刀による抜刀術でカルミネに斬りかかった。
 回避する方向を読まれていたカルミネは、驚きつつ康義の攻撃を躱した。

「フンッ!」

「くっ!」

 康義の攻撃を躱すことには成功したが、体勢が崩れている。
 そのカルミネに対し、康則が魔力弾を速射した。
 速さを重視した攻撃が顔面へ迫り、カルミネは左腕を上げて防御した。

「いてて……」

 更なる攻撃を回避するように、カルミネは3人から距離を取る。
 そして、軽い口調で康則の攻撃を受け止めた左腕を振る。
 速度重視の攻撃だったためか、たいしてダメージを受けていない様子だ。

「流石にこの国の上位3人相手は思ったよりもきついかもな……」

 一息ついたカルミネは、僅かな戦闘による感想を述べる。
 3人の連携に手を焼いているように思えたが、まだ余裕の態度が変わらない。
 口ではきついと言っておきながら、それほどでもない様子に見える。

「武器でも使うか」

 俊夫たちは3人共刀を武器としている。
 それを相手に素手で戦うのはさすがにきついと感じたのか、カルミネは土魔術を使用して短刀を2本作り出した。

「あんまり簡単に死なないでくれよ。少しは楽しみたいんでな」

「フンッ! 随分な自信だな」

 武器を手にしただけだというのにあまりにも自信満々のカルミネに、康則は鼻で笑う。
 先程の戦闘で、こちらの連携に付いてこれていなかった。
 その余裕の態度も、ただの強がりにしか見えなかったのかもしれない。

「「…………」」

 康則とは違い、俊夫と康義は無言でいる。
 まだ様子見の段階でしかないため、カルミネの実力の底を見ていないからだ。
 すぐに康則のように楽観視しないのは、魔族と戦た経験による差なのかもしれない。
 作り出した短刀を構えたカルミネに対し、3人も武器を構え、少しの間睨み合うのだった。

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